「クルマ旅専門家」・稲垣朝則が、10年以上かけてめぐってきた全国の温泉地を、「車中泊旅行者の目線」から再評価。車中泊事情や温泉情緒、さらに観光・グルメにいたる「各温泉地の魅力」を、主観を交えてご紹介します。
白浜温泉のランドマークスポットは、早朝の散歩が気持ちいい。
南紀白浜の代名詞ともいえる白良浜(しららはま)は、総延長620メートルの遠浅のビーチで、ハワイにある写真のワイキキビーチの友好姉妹浜だ。
白良浜では例年5月3日に海開きが行われるが、これは本州でもっとも早いといわれている。
といっても、夏がいちばん早く来るというわけじゃない(笑)。
こちらは冬の白良浜で見られる、光のオブジェが幻想的な「白砂のプロムナード」。
近年は冬のイベントにも注力しており、今は年間を通して100万人近くが白浜町にやってくるそうだ。
思い起こせば昭和の白浜は、宮崎の日南海岸と肩を並べる新婚旅行のメッカだった。
しかし今は、それを近隣諸国のカップルが受け継いでくれているらしい。
さて。
単調に見える白良浜の唯一の見どころというか、一味違う景観がこの写真。
白良浜の端にある石が並んだ「岬」まで行くと、まるで船の上から見るような「海超え」の白良浜を目にすることができる。
いっぽう、マニアックな見どころといえば、このモニュメント。
遊歩像沿いには、かつてガッツ石松や井岡弘樹をボクシングの世界チャンピオンに育て上げた名トレーナー、エディー・タウンゼント氏の顕彰碑がある。
なお、ビーチの一角にある無料の露天風呂「しらすな」は、冬期は足湯として使われるため入湯はできない。
そんなわけで、目の前にある「白良浜駐車場」で泊まる車中泊の旅人にお勧めなのは、朝の散歩だ。
ただし条例により、ペットは「砂浜に入れない」。
同伴者はそのことを知らずに行くと、恥ずかしい思いをするかもしれないので、くれぐれもご注意を。
とはいえ、白良浜の外周には舗装された遊歩道が用意されており、砂浜を歩かなくても散歩はできる。
ところで貴方は、白良浜を埋め尽くすこの美しい砂が「輸入品」であることをご存知だろうか?
明治から大正時代にかけて、白良浜の砂はガラスの原料として採掘され、大阪に運ばれていた。
その後ガラス製造方法の変化や景観保護のために採掘は終了したが、白良浜周辺の開発により、背後の陸地から砂の供給が途絶えたことから、昭和の後半になると、目立って砂浜が痩せるようになっていった。
砂浜を回復させるため、和歌山県は1989年からオーストラリアのパースの砂を投入する養浜事業に着手する。
2005年までに約7万4500立方メートルの砂が投入された結果、現在の美しい白良浜が蘇り、以降は景観が保たれている。
砂を入れてまで…とも思うが、やめればビーチはたちまち磯に変わってしまう。
その意味からすると、白良浜は自然環境破壊に対する「止むことのない償い」を負わされているともいえるのだろう。
白浜温泉 車中泊旅行ガイド
車中泊ならではといえる、南紀白浜温泉の愉しみ方をご紹介。