「クルマ旅専門家」・稲垣朝則が、10年以上かけてめぐってきた全国の温泉地を、「車中泊旅行者の目線」から再評価。車中泊事情や温泉情緒、さらに観光・グルメにいたる「各温泉地の魅力」を、主観を交えてご紹介します。
世界遺産の膝元にある、生マグロがおいしい南紀勝浦温泉の概要と車中泊事情をまとめて公開!
南紀勝浦温泉【目次】
南紀勝浦温泉の概要
「温泉の宝庫」と呼ばれる日本には、各地に有名な温泉地がたくさんあるが、観光・グルメ・温泉の3大要素に加えて、居心地のよい車中泊スポットがあることを踏まえると、南紀勝浦温泉が「車中泊・温泉旅のメッカ」と呼ばれる所以が見えてくる。
そのうえ、気候も人も暖かい町とくれば、その評判が四国・中国・東海、さらには関東を越えて北海道の旅人にまで届いているのも頷ける。
中には南紀勝浦温泉で一冬を過ごす近畿圏外の旅人もおり、ここでは車中泊でのロングステイが事実上容認されている。
北海道を「避暑地」とするなら、さしずめ南紀勝浦温泉は「避寒地」ということになるのだろう。
その南紀勝浦温泉と肩を並べる紀伊半島の人気温泉地が、南紀白浜温泉だ。
両者の一番の違いは温泉の形態。
白浜では日本最古の露天風呂と云われる「崎の湯」を筆頭に、町営の共同浴場が数多く揃っており、いわゆる「外湯めぐり」が楽しめる。
いっぽう、南紀勝浦温泉には資料を見る限り、温泉組合が管理する「共同浴場」というものはなく、公衆浴場として「はまゆ」が一軒存在するだけだ。
車中泊の旅人たちはここの常連になるか、後述する「湯めぐり手形」を使って、ホテルや旅館の温泉で湯浴みを楽しんでいる。
また、白浜に比べて南紀勝浦温泉は京阪神からでも日帰りしづらい場所にあるため、若者や家族向けの大型レジャー施設は存在しない。
ゆえにここを訪れるのは純粋な温泉客と、世界遺産となった熊野那智大社への参拝、もしくは名物の生マグロを目当てに訪れる人々が大半だ。
それゆえ雑踏とも縁遠い。
南紀勝浦温泉の湯めぐり手形
かつてはここに、誰もが値打ちを感じる「湯めぐり手形」があった。
それは1300円で、太地町と那智勝浦町にある11軒の契約温泉の中の3軒に入湯でき、日帰り入浴料が1000円もする人気の忘帰洞と紀州潮聞之湯でも使えた。
それだけで十分に元が取れるという太っ腹さに加え、使い切れなければ6ヶ月間の有効期限があるので次回にとっておける。
おまけに手形には、購入日の日付が記されていなかった(笑)。
風向きが変わったのは2017年。
この年の12月に、ホテル中之島(紀州潮聞之湯)は「湯めぐり手形」から脱退し、日帰り入浴料も2000円に値上げした。
そしてその翌年、好評だった「湯めぐり手形」はついに廃止され、かわりに1000円で2軒の温泉施設が利用できる「湯めぐりチケット」が導入された。
それでも忘帰洞が残っているので、お得感は他の温泉地よりも遥かにいい。
なお、南紀勝浦温泉きっての名湯「紀州潮聞之湯」は、ホテル中の島の全面リニューアルにより、現在は日帰り客を受け付けていない。
ちなみに温泉レポのない、これまでに入湯した南紀勝浦温泉は以下の通り。
かつうら御苑/きよもん温泉/さくら湯/サンライズかつうら/夏山温泉もみじや/丹敷の湯
南紀勝浦温泉のグルメ
生マグロとは、「一度も冷凍していない」マグロのことを云う。
長期保存ができないマグロは冷凍が普通で、「生」は簡単には口に入りにくい食材なのだが、生マグロの水揚げが豊富な那智勝浦では、1年中宿泊施設や食事処・鮮魚店に、刺身や希少部位が並ぶという。
南紀勝浦温泉周辺の観光地
大型ホテルと温泉旅館が並ぶ那智勝浦温泉には、いわゆる温泉街は存在しないが、その代わりを果たしているのが、足湯のある勝浦漁港周辺だ。
勝浦漁港は観光施設ではないが、平日の朝7時から行われるマグロのセリを、漁協の2Fデッキから無料で自由に見学できる。ただし土曜、祝前日は定休。
また休日には、漁港でまぐろの即売や郷土料理の試食が楽しめる朝市が開かれており、例年1月の最終土曜日に「まぐろ祭り」が開催される。
いっぽう、南紀勝浦温泉から世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成要素である那智山まではわずか11キロ、クルマなら30分ほどで行くことができる。
那智山は、写真の熊野古道の「大門坂」を登って、「那智の滝」を眺め、「熊野那智大社」に参拝できるお勧めの観光スポットだ。
また、くじらの町「太地」へも10分ほどで行ける。
なお那智山と太地の観光は、あわせて1日で足りるだろう。
南紀勝浦温泉の車中泊事情
どれをとっても一級品と云える温泉・観光地・グルメに加え、冒頭でも記した通り、南紀勝浦温泉には漁港の一画に、居心地のよい無料の車中泊スポットが存在する。
那智勝浦町という単独の市町村内に、これだけの環境が揃う温泉地は、他にはちょっと見当たらず、確かに「車中泊温泉旅の聖地」と呼ぶにふさわしい。
ただしここが、いつまで今のように使えるかはわからない。
「この記事を見て期待して出かけたのに、入口に車中泊禁止の張り紙がしてあった」ということも、ありえない話ではないことを加えておこう。
なお連休やお祭りでここが利用できない場合は、少し離れたところに「道の駅なち」と「道の駅たいじ」がある。
南紀勝浦温泉周辺のスーパー・マーケット
勝浦漁港から比較的近くて大きなスーパーは「Aコープなち」だが、総じて食材は割高なようだ。
ただ季節によるが、ここには太地産のクジラが店頭に並ぶ。
時にはイルカの切り身も!
筆者がよく利用するのは、ユニクロやオートバックスなどの専門店が一緒になった、スーパーセンターのオオクワ南紀店だ。
品揃えが豊富で食材も安い。
ただしバイパスではなく、国道42号の旧道沿いにあるので、道を間違えないようにしよう。
スーパーセンターオークワ 南紀店
〒647-0071和歌山県新宮市佐野3丁目11-19
TEL:0735-31-3500
営業時間:9:00~23:00
南紀勝浦温泉 車中泊旅行ガイド
世界文化遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」 車中泊旅行ガイド
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※記事はすべて外部リンクではなく、オリジナルの書き下ろしです。