【2023年2月更新】
車中泊旅行歴25年のクルマ旅専門家がまとめた、和歌山県にある南部梅林の、本当の楽しみ方と駐車場&車中泊事情に関する記述です。
この記事は車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、現地取材を元に「車中泊ならではの旅」という観点から作成しています。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。
南高梅のふるさと「南部(みなべ)梅林」の面白さは、ありのままの農地が開放されていること
「南部梅林」の筆者の歴訪記録
※記録が残る2008年以降の取材日と訪問回数をご紹介。
2020.02.23
2023.02.17
※「南部梅林」での現地調査は2023年2月が最新です。
南部梅林【目次】
南部梅林の概要
阪和自動車道の「みなべインター」から約3キロ、クルマで5分ほどのところにある南部梅林は、約8 万本の梅が栽培される日本最大級の梅林だ。
「一目百万、香り十里」と称されるその景観は、いわゆる観賞用に作られた梅林とは異なる、「農地」ならではの力強さを感じさせてくれる。
「南部梅林」と同じ感動を与えてくれるのが、北海道の人気観光スポットで知られる「美瑛のパッチワークの丘」だ。
スケールは違うが、どちらも農家が大地に描き出したファーマーズ・アート。
背景に「人の営み」があるからこそ、力強さが伝わってくる。
梅の花の香りや美しさを愉しみたい人には、大阪城公園がお勧めだ。
観賞用に作られた梅林は平坦で歩きやすく、スマホがひとつあれば、こういう絵になる写真も撮ることができる(笑)。
同じ梅林でも、両者は似て非なるもの。
そこを履き違えると、「南部梅林」の面白さを見落として帰ることになる。
というのは…
みなべ町一帯の梅林は、江戸時代に田辺城主として入封してきた紀州藩附家老の安藤帯刀が、 領地の大半を占めていた米の実りにくい痩せ地や山の斜面に、生命力のある「やぶ梅」を植えさせ、年貢の軽減と農作物の育成に努めた経緯を持つ。
以降幾度にも及ぶ品種改良が重ねられ、今では最高級のブランド梅と称されるまでに成長した、「南高梅」の産地である南部梅林も例外ではない。
南部梅林の梅は、今でも大半が果実採取のための産業用農林で、その生物多様性を活かした生産サイクルは、「みなべ・田辺の梅システム」として世界農業遺産に認定されている。
梅林の山を下った里には、梅を干すビニールハウスが立ち並ぶ。
これもまた「日本の原風景」…
こういうものにも目が向くようになると、旅は本当に楽しくなる。
さて。
梅林の散策は、入園門から急勾配を登った先にある料金所を過ぎてからが本番だ。
南部梅林の開園は例年1月下旬から2月下旬で、営業時間は8時から17時、入園料は大人300円。
梅の鑑賞には、展望台と梅林公園が適しているが、前述したように「南部梅林」では、山全体を一周するのがお勧めだ。
上で見せた「海と梅と菜の花」が見える景色は、Aコースの途中にある。
なお梅林は坂が多く、スニーカーのような歩きやすい靴で行くほうがいい。
また梅林にはペットも一緒に入園できる。
「南高梅」は登録商標
「南高梅」はみなべ町発祥の品種で、2006年に紀州農業協同組合により、「紀州みなべの南高梅」として商標登録されている。
現在みなべ町で生産される南高梅は、日本全国の7割以上。
皮が薄くて果肉が柔らかいうえに、種が小さいことから梅の最高級ブランド品として扱われ、おもに梅干しや梅酒に加工されている。
世界農業遺産「みなべ・田辺の梅システム」
南高梅のおいしさばかりに目が奪われがちだが、実は南部梅林には秘密がある。
冒頭で少し触れたが、この地域では昔から稲作に適さなかった里山の斜面を利用した暮らしを営んできた。
具体的には高級木炭の原料で知られる「ウバメガシ」の林を残すことで、「薪炭産業」を継続しつつ、林が持つ水源涵養や崩落防止等の機能を維持。
さらに「ウバメガシ」の林に住むニホンミツバチを、受粉に利用する梅の栽培を行っている。
実に400年にわたり、高品質な梅を持続的に生産してきたこの「農業システム」は、国際連合食糧農業機関から次世代に受け継がれるべき重要な伝統的農業のひとつとして、「世界農業遺産」に認定されている。
南部梅林の駐車場とアクセスマップ
南部梅林の正規の駐車場は、入口門のすぐ手前にある。
ゆえにここに駐められると、全体が見渡せる「梅林公園」には一番近い。
駐車料金(1日)
普通車:500円
マイクロバス:1,000円
大型バス:2,000円
平日はここか、みやげもの店の駐車場に駐められると思うが、見頃の土日・祝日は早い時間帯に満車になるので、マップの一番左端にある、梅林まで歩いて5分ほど離れた「グラウンド駐車場」に誘導されることが多い。
なお「グラウンド駐車場」の近くには、筆者が絶賛する「ダイヤモンド梅」の製造販売元の「ぷらむ工房」がある。
そちらにクルマを駐めるなら、帰りにでも立ち寄ってみるといい。
南部梅林の観光時に利用できる一番の車中泊スポットは、わずか2キロしか離れていない「道の駅 みなべうめ振興館」であることに間違いはない。
ただし駐車場は2層になっているため、車高2.3メートル以上の車両は10台ほどしか駐められず、特にキャンピングカーは遅く到着するとあぶれてしまう可能性がある。
それを考えると、最盛期を迎える2月中旬の週末は、京阪神方面からの前泊地は、阪和自動車道の「印南(いなみ)サービスエリア」のほうが確実かもしれない。
またみなべ観光の後に白浜方面に向かう場合は、紀勢自動車道の無料区間に「道の駅 くちくまの」がある。
和歌山・紀中 車中泊旅行ガイド
白浜温泉 車中泊旅行ガイド
※みなべ町は地理上では紀中エリアに含まれるが、観光の視点から見ると紀南の特に白浜町との関連性が高い。
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