車中泊旅行歴25年のクルマ旅専門家がまとめた、2023年9月現在の高野山の概要とアクセス、そして無料駐車場及び車中泊のガイドです。
「正真正銘のプロ」がお届けする、リアル車中泊歴史旅行ガイド
この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」がまとめた、「一度は訪ねてみたい日本の歴史舞台」を車中泊で旅するためのガイドです。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。
~ここから本編が始まります。~
高野山観光の真髄は、”修行体験”にあり。

高野山の筆者の歴訪記録
※記録が残る2005年以降の取材日と訪問回数をご紹介。
2005.11.20
2010.02.28
2012.12.23
2014.08.05
2014.11.03
2020.02.24
2023.08.20
※高野山での現地調査は、2023年8月が最新です。
高野山【目次】
高野山へのマイカーアクセスルートと、道中にある車中泊スポット
高野山観光の真髄は”修行体験”にあり
まず「高野山」は、北海道の「大雪山」や九州の「阿蘇山」と同じく、その名を持つ地理学上の山は存在しない。

出典:テレビ東京
「高野山」は1000メートル級の峰々に囲まれた、標高約800メートルの山上に広がる盆地状の平坦地を指す言葉で、その一帯は約1200年前に空海によって開山された、真言密教の聖地とされている。
ゆえに全域が「一山(いっさん)境内地」と呼ばれる、総本山金剛峯寺の境内だ。
つまり現在の高野町は、総本山金剛峯寺の境内の中に発展した町ということになる。
「伊勢神宮」や「善光寺」などに残る「門前町」ではなく、「宗教都市」としての色彩を色濃く放つ「高野山」が、違った佇まいを見せているのはそのせいだ。
現在の高野山には117もの寺院があり、そのうちの52が宿坊になっていて、信者ではない一般の参拝者も宿泊できる。
宿坊では精進料理が味わえるほか、「写経」以外にも、朝から読経や礼拝のお勤めをする「朝勤行体験(あさごんぎょう)」や、護摩木を焚いて祈願する「護摩祈祷」などの”修業体験”ができるという。
2004年7月に、「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成要素として世界文化遺産に登録されたことで、他の霊場とゴッチャになり、その特異性が薄れてしまった感はあるが、本来はそれこそが「高野山」観光のメインコンテンツなのだと思う。
そしてくしくもそれは、今欧米から日本にインバウンドしてくる人々のニーズと、ジャストフィットしている。
ゆえに”修業体験”をせずして、「高野山」の理解を深めるのは難しいと思うのだが、宿坊に泊まらず、車中泊で”修業体験”をすることができないわけではない…
それが「奥之院」で1400年以上に渡って続けられてきた「生身供」だ。
「奥之院」の「生身供」については別立ての記事を用意しているので、後ほど詳しく詳ご覧いただけるが、その前に真言宗の開祖「空海」のことを、少し深掘りしておく必要があると思う。
空海のプロフィールと足跡
どんなに優れた文才でも、さすがに空海抜きに高野山は語れない(笑)。
だが、ここで空海について語りだしたら、延々とスクロールが続いてしまうことになるので、筆者は別ページを用意している。
そしてこの記事の中では、プロフィールとともに、空海が辿った国内の足跡についても触れている。
筆者が残したいのは、詳しい空海の教えよりも、「空海ゆかりの地」をテーマとする車中泊の旅行ガイドだ。
その旅からは、神格化された弘法大師ではなく、人間として悩み苦しんだ空海の人物像が見えてくる。
ちなみに「空海」がらみで、「高野山」以外の世界文化遺産に登録されているもうひとつの史跡が、京都の「東寺」だ。
建造物や空海の精神性を高く評価しているのは、むしろこちらの方だと思うが、それも「空海ゆかりの地」をあちこち訪ねたことで見えてきた。
「空海=高野山」という狭い視野で語られるほど、彼の功績はスケールの小さなものではないと思う。
高野山が世界遺産に認定された理由
2004年に世界文化遺産に登録された「高野山」は、単独で認定されたわけではない。
世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」では、「高野山」は修験道の拠点である「吉野・大峯」及び、熊野信仰の中心地である「熊野三山」と合わせた”三霊場”と、それらを結ぶ和歌山・奈良・三重の3県にまたがる壮大な”参詣道”で形成された、「紀伊山地の霊場と参詣道」の一構成要素に過ぎない。
つまり、空海が大陸から持ち帰った山岳密教も、役小角(えんの おづぬ)が吉野で悟りを開いた山岳信仰も、仏教と道教の融合から生まれた日本固有の熊野信仰も、すべてが「同格」として扱われ、それらの霊場と参詣道を含む紀伊半島内陸部の山岳全体が、ひとつの「世界遺産」として評価されたところが肝なのだ。
ゆえに高野山だけ見ていたのでは、この世界遺産としての価値が見えてこないのは当たり前の話。
逆に世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」に囚われると、「高野山」の本当の魅力には気がつかない。
話が道だけに、それではちょっと「筋違い」ってことだろう(笑)。
高野山の見どころ
筆者が紹介する高野山の見どころは、他のサイトが挙げている場所と変わらないが、視点はかなり違うと思う(笑)。
そしてこの中で、車中泊旅行者でも”修行体験”ができるのが「奥之院」だ。
さて、この記事で一番オリジナリティーが高いのはこのコーナーだと思う。
「高野山」の記事を書いている人の大半は、電車やバスで現地に行っているらしく、マイカーでのアクセスに関する記事はネット上にはほとんどないに等しい。
筆者が初めて「高野山」を訪ねた時に、一番知りたかったのはこの情報だった。
なにしろ「高野山」は修行の舞台。
1400年近く経っているとはいえ、スイスイとクルマで登れるものなのか?
特に車重のあるキャンピングカーに乗っていれば、疑ってかかるのが普通だ。
麓から「高野山」に通じる車道は、大きく分けて4つある。
ただしどのルートもまさに”九十九折”で、キャンピングカーには厳しい道と思っておくほうがいい。
とりわけ❹の国道371号は、地元の人間が避けるほどの酷道だ(笑)。
そのうえ「高野山」は温暖な和歌山県としては異例で、冬の寒さが厳しく、1月の平均気温は−0.5℃と氷点下になる。
そのため凍結と積雪の恐れがあるので、冬季はスタッドレスタイヤが不可欠だ。
大阪方面からのお勧めは、❷の国道370号ルート
橋本から「九度山」経由で「高野山」に登り、途中の「はなさかドライブイン」で国道480号に合流する。
大阪方面からアプローチする場合は、このルートが近道になる。
また「九度山」には、豊臣家とゆかりの深い真田昌幸・幸村親子が暮らした「真田庵」があるので、云大河ドラマ「真田丸」を見ていた人は、云われなくてもこのルートを選ぶに違いない(笑)。
「真田庵」の近くには「道の駅 柿の郷くどやま」があるので、車中泊も可能だ。
和歌山市街からの最短ルートは、❶の国道480号ルート
国道24号と交差している国道480号は、昔から「高野山」に通じるもっとも広くて分かりやすい道だ。
加えて現在は京奈和自動車道の「かつらぎ西インター」からアクセスできるようになり、さらに利便性が高まっている。
ただし走りやすいのは「はなさかドライブイン」までで、そこから「高野山」まではワインディングのレベルが一段上がる。
なお、かつらぎには昔からある「道の駅 紀の川万葉の里」のほかに、「道の駅 かつらぎ西」「道の駅 くしがきの里」の2つの道の駅が加わり、九度山よりも車中泊環境は整っている。
ただ、車中泊に一番適しているのは「道の駅 紀の川万葉の里」だと思う。
熊野や白浜からなら、❸の「高野龍神スカイライン」が便利
2003年に無料化された「高野龍神スカイライン」は、奈良県と和歌山県にまたがって連なる紀伊山地の尾根を通る観光道路。
全長約43キロにわたって2車線が確保され、緩やかなカーブと傾斜が続く、もっとも走りやすい道と云える。
途中には「道の駅 ごまさんスカイタワー」があるが、ここでの車中泊は推奨しない。
なお「高野龍神スカイライン」は、高野山を超えて橋本まで通じているが、前述したように、高野山から先は途中に車線のない狭いところがあるので、スカイライン以外の区間は利用しないほうが賢明だ。
高野山の無料駐車場と、その車中泊事情
高野山には多くの駐車場があるのだが、場所が分かりやすくて規模の大きな❶の「中の橋駐車場」と、❷の「金剛峯寺前第二駐車場」が、無料でトイレがあって車中泊には適している。
特に前述している「奥之院」で行われる、朝6時からの「生身供」を見学したい人には、❶の「中の橋駐車場」での車中泊がベストチョイスになるだろう。

また朝の空いているうちに、金剛峯寺と壇上伽藍が見たい人には、「金剛峯寺駐車場」のほうがお勧めだ。
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※記事はすべて外部リンクではなく、オリジナルの書き下ろしです。


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