車中泊旅行歴25年のクルマ旅専門家がまとめた、弘法大師廟と20万基を超える諸大名の墓石・慰霊碑が並ぶ、高野山「奥之院」の、2023年9月現在の駐車場とお勧めの参拝法です。
「正真正銘のプロ」がお届けする、リアル車中泊歴史旅行ガイド
この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」がまとめた、「一度は訪ねてみたい日本の歴史舞台」を車中泊で旅するためのガイドです。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。
~ここから本編が始まります。~
奥之院の参拝には、「生身供」が見れて、幻想的な雰囲気が漂う早朝がお勧め。
奥之院 DATA
奥之院
〒648-0294
和歌山県伊都郡高野町高野山550
☎0736-56-2002
拝観料 :無料
拝観時間
5月~10月 8時~17時
11月~4月 8時30分~16時30分
※院内の参拝は自由。
※「生身供」は毎日6時からと10時30分からの2回(読経含めて約1時間)。ただし御廟橋から先の撮影は不可。
奥之院の筆者の歴訪記録
※記録が残る2008年以降の取材日と訪問回数をご紹介。
2012.12.23
2014.08.05
2014.11.03
2020.02.24
2023.08.20
※奥之院での現地調査は、2023年8月が最新です。
奥之院【目次】
奥之院とは
壇上伽藍(だんじょうがらん)とともに、高野山信仰の中心とされる「奥之院」は、高野山の東端に位置する、入定(にゅうじょう)して即身仏となった弘法大師を祀る聖地だ。
入口にあたる「一の橋」から最深部に建つ「大師御廟」まで、約2キロにわたって続く石畳の参道脇には、樹齢千年ともいわれる杉の大木と、20万基を超える武将や著名人の墓石・供養塔が延々と並んでいる。
とりわけ早朝の「奥之院」は、木立の間から神々しい朝日が差し込み、昼間よりも神秘に満ちた空間となる。
「大師御廟」と「生身供」
「禅定(ぜんじょう)に入る」という意味を持つ「入定(にゅうじょう)」は、生死の境を超えて永遠の瞑想に入る、真言密教の究極的な修行のひとつ。
こちらの「大師御廟」では、今でも毎日欠かさず、人々のために祈り続けているとされる空海のために、1日2回の御膳を届ける「生身供(しょうじんく)」が、毎朝6時と10時30分に行われている。
「生身供」は「大師御廟」へと続く「御廟橋」の手前に建てられた、弘法大師の世話を日々行う「御供所」からスタートするが、最初に「御供所」の前で「嘗試地蔵(あじみじぞう)」に祈りを捧げる。
毎日お供えされる御膳は、基本的に一汁三菜の精進料理とのこと。
それから御膳を籠の中に入れて前後2人で担ぎ、先導役として1名がその先を歩く。
「御廟橋」前で一礼した後、3人の使者は橋を渡ってその先にある「大師御廟」の中に入っていくが、見学者もその後に続いて「大師御廟」に入場することが許されている。しかも無料!だ。
驚いたのは、筆者が見学した日の8割は外国人だった。インバウンド恐るべし(笑)。
御膳をお供えするとともに読経が始まる。
ちなみに、高野山で唱えられるお経で分かりやすかったのは、「はんにゃーはーらーみーたー」でお馴染みの「般若心経」。
「南無阿弥陀仏」と唱えるのは、最澄を開祖とする比叡山・延暦寺の天台宗系統の宗派になる。
1時間ほどで読経が終わると、使者は再び「御供所」に戻り、一連の「生身供」は終了。葬儀や法事以外でお経を聴く機会は滅多にないだけに、ちょっと厳かな気分になれたし、何より空海を実感できたのが良かった。
ただこの「御廟橋」から先は撮影禁止なので、「生身供」の様子をお見せできないのは残念だ。
とはいえ…
奥之院の「生身供」は、まさに今流行の「体験型観光」で、これをきっかけに日本人にも、「空海」にもっと興味を抱いてもらえれば幸いだ。
表参道と武将の墓石・供養塔
「奥之院」の表参道沿いに立ち並ぶ墓石や供養塔をよく見れば、次々に有名な武将の名前を目にすることができる。
1ヵ所にこれほど多くの戦国大名や歴史上の人物の墓石・供養塔がある場所は、日本広しと云えどもここしかない。
しかも織田信長と明智光秀、そして豊臣秀吉のように、因縁深い武将の墓石や供養塔が共存しているからおもしろい。
歴史好き・大河ドラマ好きは、ここでは退屈することはないだろう(笑)。
それにしても…
この「朝日の道」はどうよ。まるで太閤殿下が、おいらを招いてくれているような気がしたね。
大阪城でちゃんと秀頼と淀君の墓前に、お参りをしてきたからかな(笑)。
ちなみに、「奥之院」に墓所が集結している理由には多説諸々あるようだ。
古来より高野山は「天下の総菩提所」、つまり死者の魂を高野山で弔えば、大師・空海の偉大な力によって、極楽浄土へ行くことができると信じられていた。
しかも真言宗には誰もが平等であるという教えがあり、ここを浄土と信じた人々を、宗派を超えて受け入れてきたというのが、一番もっともらしいかな。
いっぽう高野山側には、平安時代以降維持されてきた、荘園などによる安定した経済基盤が、戦国時代になると、大名や豪族による荘園侵略が横行して崩壊し、経済的な危機に晒されている事情があった。
そのため高野山の各寺院は、各地の有力な戦国大名や武将などと師檀関係を結び、寺領の保全を図ることを望んでいた…
この寺院の思惑と、武士側の高野山に対する信仰心がWinWinとなり、「奥之院」に多数の戦国武将の墓が設けられたという現実的な説もあるようだ。
案外これが、正解なのかも(笑)。
お勧めの駐車場と、くたびれない歩き方
筆者のように歴史が好きな人は、「奥之院」表参道の正面入口にあたる「一の橋」からスタートするのがいいと思うが、ここから「大師御廟」まで往復すると約4キロ、「生身供」の見学時間を含めると3時間は見ておく必要がある。
さらに問題は駐車場だ。
表参道に一番近いのは、案内所に隣接する「一の橋駐車場」だが、ここは高野山内の他の駐車場と違って有料で、駐車台数も8台分しかない。
駐車料金:最初の1時間400円、それ以降30毎に150円
であれば、無料で186台を収容できる「中の橋駐車場(マップでは奥之院駐車場)」にクルマを停めて、途中から「奥之院」の参道に入るほうがお勧めだ。
墓石めぐりがしたい人は、先に「一の橋」方面に進み、そこから今度は「大師御廟」に向けて折り返せばいいし、先ほどの織田信長や豊臣秀吉の墓所は、「中の橋」から「大師御廟」に向かう途中にある。
なお「中の橋駐車場」にはきれいなトイレもあるので、車中泊ができる。

筆者はここで停まって、早朝に「奥之院」を歩いた後、「高野龍神スカイライン」で龍神温泉へと向かった。
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