この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の紹介です。

観光客にお勧めしたい熊野古道が歩ける場所は、那智山の「大門坂」
熊野古道【目次】
熊野古道の実態
正確に云うと、「熊野古道」は世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」に記された「参詣道」の別称で、聖地「熊野本宮大社」を目指す道であることは確かだが、ご覧の通り1本ではない。
ゆえに「道」というより、「ルート」と捉えるほうが分かりやすい。
だがマップで分かる通り、ここを歩き通すというのは、プロアドベンチャーレーサーの田中陽希君くらいにしかできそうにない(笑)。
ゆえに現代人は「クルマで通れれば」と思うわけだが、そうなるとご覧のように味気ない(笑)。
それにそもそも「古道」という車両では通れなさそうな言葉が先行しているため、現地を知らない車中泊の旅人にすれば、「熊野古道」は今ひとつ関心が薄く、ピンと来るものではないようにも感じる(笑)。
また実際に和歌山県南部を走ってみると、いたるところに「熊野古道」と書かれた表示がでてくるため、「通れるのか?」と勘違いしてイライラもする(笑)。
実はこれが「熊野古道」を、必要以上につかみどころがないように感じさせている要因であり、車中泊の旅人を「食わず嫌い」にさせているのだ。
熊野古道は、霊場を巡礼するための道だったとは限らない
そもそも世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」では、「点」=霊場と「線」=参詣道を分けて考える必要がある。
霊場だけを見ても、北から「吉野」「高野山」と来て、「熊野三山」につながるわけだが、「熊野詣」をこよなく愛した平安時代の上皇たちでさえ、実はこの世界遺産のすべての霊場を巡り歩いたわけではない。
分かりやすいのは、大峯奥駈道(おおみねおくがけみち)。
この道は「吉野」と「熊野」を結ぶ「大峯山」を縦走する修験道の修行道で、筆者も歩いて見たが、修行をする気はなく100メートルほどで引き返してきた(笑)。
また高野山と熊野本宮を最短距離で結ぶ「小辺路」は、もともと紀伊山地の住人の生活道路で、「参詣道」として扱われるようになったのは近世からと云われている。
そもそも仏様を拝む「高野山」と「神様」を奉る熊野に、昔から接点があったかどうかも怪しいわけで、このあたりは以下の記事と照らし合わせながら、あまり「深入り」しないほうがいいと思う(笑)。
熊野古道が気軽に歩ける「道の駅 熊野古道中辺路」
さて。
行者以外が実際に利用していた「参詣道」が、「中辺路」と「伊勢路」であることはマップからも容易に推測できる。
時代が進めば、船という選択肢も使えたはずだ。
まず「中辺路」には「道の駅 熊野古道中辺路」があり、そこにクルマを置いて近くから「熊野古道」を垣間見ることが可能だ。
とりあえず、鬱蒼とした林の中を通る苔むした石段の「熊野古道」が見てみたいと云う人には、ここが一番分かりやすく、安心で歩かなくていい場所になる。
熊野古道のハイキングにお勧めしたい「松本峠」
また「霊場」よりも、「熊野古道」そのもののハイキングが楽しみたいという人には、「伊勢路」の途中にある三重県の「松本峠道」がお勧めだ。
伊勢神宮と熊野三山を結ぶ「伊勢路」は、江戸時代以降、多くの旅人がお伊勢参りの後に熊野詣に向かう際に利用してきた。
「松本峠」に通じる「熊野古道」には、石畳や竹林とともに、熊野灘を一望できるところがあり、江戸時代の人々が目にしたものとほぼ同じ光景を、現代人の我々も眺めることができる。
なお、ここは電車を使って駐車場の近くまで戻ってこられるので、クルマが足かせにならないのもいい。
ちなみに「松本峠」には、熊野市の海辺にある景勝「鬼ヶ城」からもハイキングコースが設けられている。
歩く距離は約4キロで、前述したルートとほとんどかわらない。
熊野古道を通って霊場まで行けるのは、那智山の「大門坂」
最後に「とっておきの熊野古道」を紹介しよう。
無料でクルマが駐めれて、風情があって、ほどほどの距離を歩いて霊場までの往復ができる。
しかも近くには、車中泊旅行者に人気の温泉地まである。
そんなところが本当にあるのか… 答えは以下の記事を見てのお楽しみ(笑)。
熊野古道 車中泊旅行ガイド
紀伊半島全域に及ぶ、日本を代表する広大なる世界遺産の愉しみ方をご紹介。この世界遺産なくして、紀伊半島は語れない。
※記事はすべて外部リンクではなく、オリジナルの書き下ろしです。


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