嵯峨野にある天龍寺と周辺の見どころを合わせてまとめた、マイカーで京都をめぐりたい旅行者に向けてのガイドです。
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この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の紹介です。
~ここから本編が始まります。~
嵯峨野にある世界遺産「天龍寺」は、桜も紅葉も美しい京都五山一位の名刹。
天龍寺 DATA
天龍寺
〒616-8385
京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町68
☎075-881-1235
拝観時間
8時30分~17時
(受付終了16時50分)
拝観料
●庭園(曹源池・百花苑)
おとな500円
●諸堂(大方丈・書院・多宝殿)
庭園参拝料に300円追加
※8時30分~16時45分
(受付終了16時30分)
※行事等による諸堂参拝休止日あり
●法堂「雲龍図」特別公開
おとな500円(上記通常参拝料とは別)
※9時~16時30分
(受付終了16時20分)
※土曜日・日曜日・祝日のみ公開
(春夏秋は毎日公開期間あり)
駐車場
乗用車:1回1000円
バス:1時間 1000円
(以後30分毎500円)
8時30分 ~ 17時(17時に閉門)
自家用車100台
天龍寺の筆者の歴訪記録
※記録が残る2008年以降の取材日と訪問回数をご紹介。
2011.11.26
2018.03.27
※「天龍寺」での現地調査は2018年3月が最新で、この記事は友人知人から得た情報及び、ネット上で確認できた情報を加筆し、2024年6月に更新しています。
天龍寺 目次

天龍寺創建の経緯

出典:綾部市
京都でも指折りの紅葉スポットとして知られる「天龍寺」は、1339年に室町幕府を開いた「足利尊氏」が、かつて仕えた「後醍醐天皇」の菩提を弔うために創建した、臨済宗天龍寺派の大本山だ。
別格に位置づけられた「南禅寺」に次ぐ京都五山第一位の格式を誇り、「古都京都の文化財」のひとつとして、世界遺産にも登録されている。
京都五山とは…
五山はもともと、鎌倉幕府が禅宗寺院を重用することで、古い寺社勢力に対抗させようと用いた戦略的な寺格制度のことで、「鎌倉五山」に端を発する。
京都では室町時代に、三代将軍「足利義満」によって、「南禅寺」「天龍寺」「建仁寺」「東福寺」「万寿寺」が京都五山に指定された。
ただその後、「足利義満」は自ら創建した「相国寺」を五山に列するため、「南禅寺」を別格に格上げしている。
ここで、「足利尊氏」と「後醍醐天皇」の関係も少し補足しておこう。

出典:Wikipedia
「後醍醐天皇」は、鎌倉幕府を倒して朝廷に政権を奪回した天皇で、それに加勢した有名な武将が「楠正成」と「新田義貞」、そして鎌倉幕府から寝返って味方についた「足利尊氏」だ。
その「後醍醐天皇」が行った政治が、1333年の「建武の新政」になる。
しかし、公家を重用する「建武の新政」は武士に不評で、二年余りで「足利尊氏」は反旗を翻す。
一時は九州まで追い払われるものの、そこで勢力を立て直した「尊氏」は、再び京へと攻め上り、かつての盟友だった「楠木正成」と「新田義貞」を打ち破り、京都に「室町幕府」を開いた。
やむなく「後醍醐天皇」は吉野に逃れ、「足利尊氏」が擁立した「北朝」に対抗すべく「南朝」を立ち上げる。
それがいわゆる「南北朝時代」の始まりだが、3年後、夢破れた「後醍醐天皇」は遠い吉野の地で崩御した。
冒頭で書いた通り、「足利尊氏」は亡くなった「後醍醐天皇」の菩提を弔うために「天龍寺」を建立するわけだが、もともと好んで「後醍醐天皇」と対立したわけではなく、亡くなるまでに和解できなかったことを悔やんでいたとも云われている。
「天龍寺」の場所には、「後醍醐天皇」の祖父にあたる「亀山天皇」の離宮があり、「後醍醐天皇」が幼少期をここで過ごしたことから、「尊氏」はそこに菩提寺を造営する旨を北朝の「光厳上皇」に奏請し、その建立を強く勧めた禅僧の「夢窓疎石」を開山(初代住職)に迎え、寺院に改めた。
当時の室町幕府は戦費がかさんで財政が苦しく、造営資金調達のために、「天龍寺船」という日元貿易船が仕立てられたことは有名だ。
そして「天龍寺」は、1345年に無事落慶を迎えている。
天龍寺の見どころ

出典:天龍寺
「天竜寺」の見どころは、拝観料に現れている。
●庭園(曹源池・百花苑)
おとな500円
●諸堂(大方丈・書院・多宝殿)
庭園参拝料に300円追加
●法堂「雲龍図」特別公開
おとな500円(上記通常参拝料とは別)
これはこれで単純明快(笑)。素直にそれに従うほうがいい。
順路から云うと、最初に有名な「雲龍図」が天井に描かれた「法堂」が現れるが、このサイトでは最後に紹介する。
まずは「庫裡」まで進み、ここで「庭園」と「本堂」の両方が見学できる、800円のチケットを買おう。
お寺の台所だった「庫裡(くり)」と並ぶ「方丈(ほうじょう)」は、もともとは住職が住む場所のこと。
「天龍寺」には大方丈と小方丈があり、小方丈は書院として利用されている他、来客の接待や法要・行事などに使われている。
1899年(明治32年)に建立された大方丈は、西側が「曹源池庭園」に面しており、特に秋は縁側からの眺めが美しい。
襖にはみごとな「雲龍図」が描かれており、それを知らずに800円支払った人を喜ばせている(笑)。
そしてこちらが、禅僧で「天竜寺」の創建を推し進め、初代住職も勤めた「夢石疎石」が作庭した「曹源池庭園」だ。
「夢石疎石」は文化人としても一流で、造園技術においても才能を発揮したことで知られており、「曹源池庭園」は「天竜寺」創建当時の面影を、伽藍内で唯一留めていることから、日本で最初の史跡・特別名勝に指定されている。
確かに色づく秋の、嵐山と亀山を借景にした「曹源池庭園」の景観は、京都の名刹の中でも際立って美しく、さすがは「世界遺産」と思わせてくれる。
いっぽうこちらは春の光景。これだけを見ると秋のほうがずっといい…
と思うかもしれないが、今は違う。
「曹源池庭園」の散策コースを多宝殿のほうに進んでいくと、1983年に整備された、枝垂れ桜の美しい「百花苑」に出る。
さらに奥に進むと、桜だけでなく、数多くの花を咲かせる木々が植えられた庭もあり、ちょっとした植物園のようだ。
さらに、高台からは境内とともに嵯峨野の町が見渡せる。
このように「天龍寺」は、秋もいいが、春もまた気持ちが安らぐ場所だ。
確かに拝観料はちょっと高いが、2つのお寺を周ったと思えばいい。
そして最後が、禅宗七堂伽藍のひとつとされる「法堂(はっとう)」だ。
法堂とは「説法堂」を意味し、住職が仏に代わって民衆に説法をする場所のこと。
ただ「天龍寺」の「法堂」は、1864年の兵火で焼失したため、明治になって江戸後期建立の「雲居庵禅堂(選佛場)」を移築しており、仏殿も兼ねている。

出典:天龍寺
”八方睨みの龍”と呼ばれる「天竜寺」の「雲龍図」は、1997年(平成9年)に日本画家の「加山又造」画伯(1927~2004)によって描かれた新しいものだ。
移築当時は、明治期に活躍された「鈴木松年」画伯の「雲龍図」が描かれていたが、損傷が激しく、現在ではその一部だけが保存されており、毎年2月に大方丈にて一般公開されている。
ちなみに「雲龍図」は、僧侶たちの修行を見守る仏法の守護神で、法の雨(仏教の教え)を降らせるとの謂れから、天井に描かれていることが多い。
また「雲龍図」のある禅寺は多く、京都では「建仁寺」や「相国寺」「東福寺」でも観ることはできる。
もちろんどこも有料だけどね(笑)!
天龍寺の駐車場
「天龍寺」の境内には駐車場が3ヶ所あり、全部で自家用車は100台停められる。
乗用車:1回1000円
バス:1時間 1000円
(以後30分毎500円)
8時30分 ~ 17時(17時に閉門)
利用が「天竜寺」の参拝者に限られるのは当然だが、特に時間の制限はなく、立地上、食事や休憩で周辺の店に足を運ぶくらいなら許されるようだ。
とはいえ、ここから嵐山・嵯峨野の散策に出かけるというのは、常識的に許される行為ではなく、そうしたい人には、近くにほぼ同じ料金で利用できる「京都市嵐山観光駐車場」がある。
ただしこちらは、「天竜寺」にさらに輪をかけたような人気ぶりだ(笑)。
いずれにしても、問題は入庫できるかどうかと、拝観を終えてからだろう。
早朝に出向けば入庫はできるかもしれないが、ハイシーズンの「渡月橋」から嵯峨野に通じる道は人で溢れ、平日でも午前10時にはこうなってしまうし、午後からは歩行者天国になる日もある。
ということは、
「天龍寺」というより、嵯峨野から離れた場所にクルマを置いて行くほうが賢明だ。
周辺の見どころと、上手な嵐山・嵯峨野のめぐり方
嵐山・嵯峨野は平安時代の貴族が別荘を構えた「隠れ里」で、日本史に名を残す著名人ゆかりの古刹が、数多く残っている。
この地が「紫式部」の書いた源氏物語の舞台であることは有名な話だが、それ以外にも、「西行」や「芭蕉」などの文人が訪れては、その美しい風景を和歌や俳句にしたためてきた。
つまり嵐山・嵯峨野観光の「本筋」は、古刹をめぐることよりも、むしろ景色を愛でることにある。
それに中身の濃い「天竜寺」をひとつ観れば、お寺はもう十分満足だろう(笑)。
そこで以上のことに、最大の難問といえる”駐車場の選びの解決法”を加えて用意したのが、こちらのオリジナル観光ルートだ。
これは車中泊旅行者ならではの視点から書かれているが、マイカーでもレンタカーでも、クルマで京都を旅する人には使える、画期的な作戦だと思う。
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