25年のキャリアを誇る車中泊旅行家がまとめた、岡山県の「美作三湯」のひとつに数えられる「湯郷温泉」を車中泊で訪ねたい人に向けた旅行ガイドです。
「クルマ旅のプロ」がお届けする、車中泊で訪ねた名湯レポート
この記事は、1999年から車中泊に関連する書籍を既に10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「車中泊旅行家・稲垣朝則」が、独自の取材に基づき、全国の温泉地の車中泊事情や温泉情緒、観光、グルメにいたる魅力を再評価し、「車中泊旅行者の目線」から紹介しています。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。

~ここから本編が始まります。~
美作にある「湯郷温泉」は、クルマで立ち寄りやすい町の中の温泉地

湯郷温泉の筆者の歴訪記録
※記録が残る2008年以降の取材日と訪問回数をご紹介。
2015.10.11
2026.01.16
「湯郷温泉」での現地調査は2026年1月が最新です。
湯郷温泉

湯郷温泉のロケーション

「湯郷温泉」は兵庫県との県境に近い、中国自動車道「美作(みまさか)インター」から、約4キロ・10分ほどのところにある、古くからの湯処だ。

山々に囲まれてはいるものの、大きなホテルも目立つ開けた温泉地で、規模的には「温泉町」より「温泉タウン」に近い。
湯郷温泉の歴史と概要

「白鷺伝説」が残る「湯郷温泉」は、「美作三湯(湯郷温泉・奥津温泉・湯原温泉)」のひとつで、開湯は約1200年前の平安時代初期とされ、「慈覚大師・円仁」が修行の途中で、傷ついた白鷺(しらさぎ)が湯溜まりで傷を癒しているのを見て発見したと伝えられている。

「慈覚大師・円仁」は平安時代初期の高僧で、「最澄」の弟子として唐に留学し、密教を取り入れて天台宗の発展に尽くした人物だ。
帰国後は比叡山の第3代天台座主となり、多くの寺院を開創・再興し、東北・関東の寺院にも深く関わったと伝わる。

その関係で「湯郷温泉」の他にも、近隣では奥津温泉(岡山)・湯村温泉(兵庫県)、さらに遠方では別所温泉(長野県)・赤倉温泉(山形県)・大師温泉(宮城県)・浅虫温泉(青森県)などに開湯伝説が残されている。
その理由には、「慈覚大師・円仁」に源泉の在り処を見抜く力があったというより、布教のため全国を徒歩でめぐっていたことから、情報が自然に集まる立場だったこと、温泉を治療・修行に不可欠と理解していたこと、そして何より得た情報を記録に残していたことが挙げられており、そのあたりは宗派は違うものの、やはり遣唐使だった「弘法大師・空海」と共通している。
「湯郷温泉」は、戦国時代に周辺の武将や旅人の湯治場として利用され、江戸時代には宿場町としても発展。明治以降に観光地としての基盤が整えられた。
さて、ここからは現在の話だ。

「湯原温泉」のイメージを端的に云うと、『運動部の合宿の好適地』(笑)。
もはや「奥津温泉」のような静けさはなく、温泉街のある「湯原温泉」よりも道は広くて町並みもきれいだが、歴史ある温泉地としての風情は感じられない。
個人では、平成世代のグループやファミリー層に受け入れられる旅先なのだろう。

その象徴的な場所が、2025年11月にリニュアルオープンを果たした「湯郷だがし館」だ。

元はボーリング場だった広いスペースに駄菓子、アミューズメント、カラオケコーナー、さらにフードコート、キッズスペースなどを備えた複合施設になっている。

ちなみに筆者は、家内と『孫と一緒なら喜びそうやな』と云って出てきた(笑)。
湯郷温泉の日帰り温泉館

温泉街の中心地に建つシンボルとも呼べる存在が、「湯郷温泉」の元湯にあたる「湯郷 鷺温泉館」だ。
入浴料は800円と共同温泉にしては高めだが、「奥津温泉」の日帰り入浴施設「花美人の里」と同じく、ゴージャスな”スーパー温泉銭湯”になっている。

また「湯郷鷺温泉館」の前には無料駐車場が点在しており、収容台数は十分なので、クルマで行っても心配はないと思うし、仮に満車でも市営駐車場から歩いて行ける。
注目のお湯は、肌にやさしく「美肌の湯」として知られているアルカリ性単純温泉だが、「湯郷鷺温泉館」本館は加温・加水・循環・塩素消毒のフルコース(笑)。
ただそれは、この規模ではやむを得まい。
しかし、がっかりするのはまだ早い。

こちらは、明治以来湯治場として親しまれ、遠方からも通う人が絶えないという、源泉かけ流しの日帰り温泉施設「療養湯」で、「湯郷 鷺温泉館」に隣接している。
温泉好きには、断然こちらがお勧めだ。
療養湯
☎0868-72-0279(湯郷鷺温泉館)
おとな800円
大浴場:9時~20時(受付最終19時30分)
水曜 定休
なお、
この動画を見れば、「湯郷 鷺温泉館」のみならず、「湯郷温泉」の目指している方向性がよく分かる。
ここは「美作三湯」の中でも、明らかに若者世代を強く意識している。
湯郷温泉街の楽しみ方

「湯郷温泉」は”おもちゃのまち”としても知られ、昭和レトロな玩具や鉄道模型を展示する施設があり、温泉街散策の楽しみとなっている。
というので、1回300円の市営駐車場にクルマを停め、観光案内所でマップをもらって、温泉街を一通り歩いてめぐってみた。

あとで気づいたが、湯郷温泉の場合、わざわざ有料で不便な市営駐車場を利用する必要はなさそうだ。
もっとも終日300円なので、”安心を買う”と思えば安いものかもしれない。

さて。
「現代玩具博物館(オルゴール夢館)」「湯郷だがし館」「てつどう模型館(レトロおもちゃ館)」「三歩太郎のからくり時計」は、観光案内所の前を通る「ふれあい通り」沿いにあるのですぐに分かる。

ただし「あの日のおもちゃ箱 昭和館」だけはポツンと離れているので、スマホナビかマップがないと、まず分からないと思う。

また「昭和館」の近くに、「円仁法師」像が建つ「薬師寺(湯神社)」がある。
実際に周ってみた感想は、

”おもちゃ”にそれほど興味のない筆者に、個々のミュージアムで個別に入場料を支払ってまで、中を見てみようと思わせてくれるほどのものではなかった。
”おもちゃのまち”と呼ぶのであれば、「湯原だがし館」のリニューアル時に、館内に町中の玩具ミュージアム集約し、有料のテーマパークしたほうがよかったと思う。
もっとも当事者にすれば、『そんなことは分かっている話』で、簡単にできるものなら、とっくにやっていると云いたいに違いない(笑)。
しかし、そもそも、なにゆえに「湯郷温泉」は”おもちゃのまち”なのか…

例えば『バンダイ(BANDAI)の創業者が湯郷温泉の出身』みたいな、恒久的で地に根を張った根拠があるのかと思いきや、実態は昭和後期(1970〜80年代)に観光客の増加を図るため、「子どもと大人が一緒に楽しめる温泉地」を目指して、”おもちゃ”をネタにしたことが始まりらしい。
元々の動機がその程度なので(笑)、結論を云うと、おもちゃが好きな人は、筆者がやったように「観光案内所」でマップをもらい、町がお勧めしている観光スポットを歩いて周ればいい。

それ以外の人は、平日であれば観光案内所までクルマで来て、前の無料駐車場に置いておき、その周辺の無料スポットだけを見れば十分だと思う。
時間は30分もかからないのでは…
もし「湯郷 鷺温泉館」にも行くなら、クルマはそちらに停めて同様にすればいい。
その場合でも所要時間は、普通なら入浴込みで3時間も見ておけば足りると思うので、もし「道の駅 彩菜茶屋」で車中泊をするつもりなら、施設の営業時間に間に合うよう行動しよう。
周辺にあるお勧めの観光地

「湯郷温泉」から約4キロ・10分ほどのところに、町並みが一望できる「大山展望台」がある。

出典:岡山観光WEB
10月から2月にかけてのよく冷えて晴れた日の早朝(6時半頃から8時頃)には、雲海が見られることでも有名だが、厳冬期は道が凍結する恐れがあるので、ノーマルタイヤで行く人には11月の下旬がお勧めだ。

道はどこでも対向できるほどではないものの、山道にしてはそこそこ広く、展望台のすぐ近くに広い駐車場が用意されている。
とはいえ、観光客が「湯郷温泉」で時間が潰せるのは、頑張っても半日だろう。

そこで、歴史が嫌いではないマイカーの旅人にお勧めしたいのが、同じ美作市内の約30キロ・40分ほど離れたところにある、「武蔵の里」だ。

「武蔵の里」には、剣豪「宮本武蔵」の生家だけでなく「宮本武蔵」ゆかりの地がいくつかあるので、ちょっとした散策が楽しめる。
午前中に「武蔵の里」を訪ね、午後から「湯郷温泉」に向かうくらいでちょうどいいんじゃないかな。

しかし、ここに「宮本武蔵駅」まであるとは知らんかった!(笑)。

湯郷温泉の車中泊スポット

ここまでの話でお分かりにように、「湯郷温泉」では車中泊が必要なほどの長い時間は、間が持たないと思う。
しかし幸いなことに、4キロほど離れた美作市街地に「道の駅 菜彩茶屋」がある。
国道179号にも中国自動車道の「美作インター」にも近い「道の駅 菜彩茶屋」は、買物などの利便性にも優れており、”旅の宿”にするにはこのうえなく適したロケーションにあると云える。
なお、どうしても湯郷温泉街で車中泊がしたいという場合は、観光案内所の並びにある「現代玩具博物館(オルゴール夢館)」の隣に、ウォシュレット付きの公衆トイレと、無料の駐車スペースがあるにはある。

車中泊禁止の表示は見当たらなかったので、おそらく可能だとは思うが、あえてお勧めはしない。
まあ、よほど夜に訪ねてみたい店があるという人は、覚えておくといいだろう。
最後は余談になるが、
筆者が間違いなく「湯郷温泉」の活性化に通じると思ったのは、道の駅の誘致だ。

しかもそれは新たに作るのではなく、今紹介した「道の駅 彩菜茶屋」の移転リニューアルでかまわない。
現在の「道の駅 彩菜茶屋」は、スーパーマーケットの「A-coopみまさか」と隣接しており、物販内容が被っているため、”お客の食い合い”になっている。
国道と県道の交差点付近にあり、好立地なので空いたスペースには、出店を希望する量販店や飲食店がすぐに見つかるはずだ。
しかも近くなので、従業員は希望すれば、そのまま新しい道の駅で雇用される。
いっぽう「湯郷温泉」には、「湯郷 鷺温泉館」以外に単独で集客できる施設はなく、それこそ『おもちゃのテーマパークを併設する、子どもと大人と地域が交流できる道の駅』を作れば、日帰り客が倍増するのは目に見えている。
それにここなら、道の駅の一画にRVパークを設けても違和感はあるまい。
評論家は裏の事情などお構いなしに、好きなことを云うだけだが(笑)、昭和生まれが高齢化し、観光客の中心が平成世代になっていくこれからを考えると、「湯郷温泉」が最後の転換期を迎えているのは確かであって、このくらいのことをやらないと、町が潤う姿は想像できない。
お客が来ないことには、民間は投資のしようがない。「湯郷温泉」が活況になれば、その余波は「津山」から「奥津温泉」「湯原温泉」にも及んでいくはずだ。
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