車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、20年以上の歳月をかけて培ってきた、オリジナルの車中泊&クルマ旅のスタイルをご紹介しています。
ハイエース・キャンピングカー Wizの魅力
<目次>
ふたり旅を考え尽くした、コンパクトで高性能なバンコン
実使用による感想は「まさにその通り」だった。
キャンピングカー・ショーに出向けば分かるが、大半のハイエースベースのキャンピングカーは4人という数字をどこかに意識している。
たとえシニア層をターゲットにしているモデルでも、いつかは孫と一緒に乗るかもしれない… そんな思いが、きっとユーザーもビルダーも払拭し切れないでいるのだろう。
だがWizの魅力は、その迷いをみごとに断ち切っているところにある。
内装と装備に触れる前に、Wizのベースであるハイエース・バンDX-GLパッケージの車両サイズは、長さ4695×幅1695×高さ2240(ミリ)。高さを除けばボンゴフレンディーと全く同じ大きさだ。
事実、驚くほど車両感覚は変わらなかった…
にもかわらず、圧迫感どころかゆとりをも感じさせる室内空間は、乘る人間の誰もを驚かせてしまう。
アネックス社が創るハイエースキャンパーの中でも「最上級」を誇るこのクルマは、単なる「ふたり仕様」だけが魅力ではない。
室内の隅々に至るまで綿密・緻密なアイデアが散りばめられ、それが相乗効果となって、広さと使いやすさ、そして上質感を奏でている。まさにプロモデルとしての資質に満ちた、筆者が望むベースキャンパーなのだ。
このページでは、まずダイジェストでそんなWizの「カラクリ」を紹介していこう。
Wizのカラクリ1 L字型のダイネット
最初にWizの室内を見た人が発する言葉は、「わぁ~、広い」。
L字型のダイネットと大きなテーブルが、頭の中にあったハイエースキャンピングカーの潜在イメージを凌駕する。
ちなみに左のボトルケースは筆者の「お手製」。Wizを初めて見た時、これはちょっとイケてるBarになると閃いた(笑)。
この日のゲストは幼児を連れた若い夫婦。この大胆なテーブルレイアウトが、大人4人に子供がいても、車内でゆっくり食事ができるだけのスペースを生み出してくれる。
取材はひとりで行うこともある。そんな時はテーブルレイアウトのまま寝ることが可能。自宅でもここまで効率的には過ごせない(笑)。まさにフィールド・オフィスそのものだ。
ちなみに、テーブルは下げるとベッドの土台になる。この上にシートの背もたれを並べると、幅1400ミリのセミダブルベッドに早変わり。
さすがにテーブルは自動では下がらないが、油圧式なので上げ下げに力は要らない。シーツを敷いてこの状態にするまで、慣れれば5分もかからず、これまで面倒と思ったことは一度もない(笑)。
Wizのカラクリ2 理想的な収納機能
ひとことで言うと、Wizは「着痩せ美人」。
見た目はスリムだが、要所はボリューム感に満ちており、スッキリ感と使い勝手を両立している。
特にスライドドア側にレイアウトされたハンモック式の収納スペースは、軽いがかさばるマルチシェードやパークゴルフのクラブ、また夜間に着替えを一時保管するには最適で、筆者のお気に入りのひとつだ。
また冷蔵庫を含めて、調理に必要なほとんどのモノが、室内にあがらずとも外から取り出せる配置になっている点は絶賛に値する。
夜釣りで波止場に来て、こんなことができるのはそのおかげ。Wizの設計者はオートキャンプを熟知しているのだろう。
Wizのカラクリ3 立って調理や着替えができる「拡張ハイルーフ」
8ナンバー車は、キッチン前の車内高が160センチ以上確保されていなければならない。だが、ハイエースのハイルーフ車は、そのままだと車内高が少し足らず、多くのモデルは床を掘り下げてその要件を満たしている。
しかしWizは、屋根を上げるという驚くべき発想で、その難問をクリアしている。
Wizには開閉式のサンルーフが搭載されており、上背の高いユーザーでも立てる工夫が施されている。
換気にも役立つこのサンルーフは、さらに夏用に網戸まで用意されている。
おかげでサイドのドアと天井から外気が入れられるため、多少は涼しく寝ることができる。
なお、Wizのグレードや価格等の詳細については、アネックス社の公式サイトをご参考に。
クルマ旅をする万人に合うとは云わないが、オートパッカースタイルによく合致するキャンピングカーであることは保証する(笑)。
※マイナーチェンジを受けた現行のWizは、テーブルが筆者のモデルとは変わっています。
さて。ざっとここまで「ノーマルのままのWiz」を紹介してきた。云ってみれば「買ったままのマンションの室内」を観ていただいたわけだ。
だが、このクルマを筆者がプロモデルと呼ぶからには、それなりの改造プラスアルファが上乗せされている。

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