【2023年2月更新】
車中泊旅行歴25年のクルマ旅専門家がまとめた、大分県の中津と宇佐のご当地グルメ「からあげ」を、最高においしく食べる方法に関する記述です。
「クルマ旅専門家」・稲垣朝則が、20年以上かけて味わってきた全国のソウルフード&ドリンクを、そのレシピと老舗・行列店を交えてご紹介。
答えは単純に「揚げたて」を食べること。だが、その方法は2つある。
中津と宇佐のご当地グルメ「からあげ」を、最高においしく食べる方法
イントロ ~灯台下暗しになっていないか?~
戦後の食糧難がきっかけで生まれた、日本独特の鶏料理が「からあげ」だ。
その「からあげ」を、自他ともに”ご当地グルメ”と認める大分県には、その双璧とも呼べる中津と宇佐の町がある。
たたいずれにしても、「からあげ」を最高においしく食べる方法は、”揚げたて”を食べることに尽きる。
それには、専門店で買って食べること。
そして中津と宇佐の行くべき店はここだ!
なんてありふれた話を、いまさらプロの旅行家が書くはずはない(笑)。
多少なりとも「グルメ」という言葉を使うのなら、そこには名店のタレを使って自ら揚げるという、もうひとつの方法が記されているのが当然だと筆者は思っている。
どんな料理でも、自分でやってこそ難しさが解り、作り手へのリスペクトが生まれるものだ。
「からあげ」の歴史
そもそも「からあげ」は、漢字で「唐揚げ」または「空揚げ」と書く。
「唐」という字で分かるように、名前の由来は中国の普茶料理(ふちゃりょうり)にあるとされる。
ただ普茶料理の「唐揚げ」は、現在の「唐揚げ」とは違い、材料は鶏ではなく、豆腐を小さく切り、油で揚げ、さらに醤油と酒で煮たものとされており、いわゆる”鶏から”は、日本のオリジナル料理らしい。
現代の「唐揚げ」が登場するのは昭和7年頃で、大正14年に東京の京橋木挽町で創業した現在の三笠会館の前身・「食堂・三笠」が元祖のようだ。
「食堂・三笠」は、昭和7年に銀座一丁目に鶏料理専門の支店を開業するが、支店は営業不振で、当時の料理長がそれを打開しようと知恵を絞り、考案したメニューが「若鶏の唐揚げ」だったという。
背景には、戦後の食料難に備えて全国各地に養鶏場を増やす国の政策があった。
正しい「からあげ」の聖地は、大分県北部
その政策を受け、中津市と宇佐市がある大分県北部では、多くの養鶏場が開業した。
それが功を奏し、この地域には「からあげ」専門店が多く芽生え、それが羽を広げて、大分県は一人あたりの鶏肉消費量で全国トップクラスを誇るまでに至った。
その理由には、鶏肉が容易に入手できたこと以外に、旧満州から引き揚げてきた人が中国の鶏料理を再現したことや、惣菜店が揚げたての「からあげ」をおかずとして提供したことなどが挙げられている。
現在中津市では「からあげ」専門店が30店以上あり、隣接する宇佐市や福岡県豊前市と合わせると60店以上になるという。
加えてこの地域の「からあげ」は、醤油やにんにく、しょうがなどをベースにしたタレに漬け込んで、下味をしっかりとつけてから揚げるものが多く、各店はそれぞれ異なる秘伝のタレを持つ。
そういったことから日本唐揚げ協会は、中核にあたる中津市を「からあげの聖地」と呼んでいる。
だが旅人は、中津だ宇佐だと行政の区割りに囚われず、共通の食文化を持つ「大分県北部」全体を、「からあげのメッカ」と捉えたほうがいい。
もし北海道級のでっかい区割りなら、全部「中津市」になるのだから(笑)。
中津の元祖「からあげ」専門店、中津からあげ総本家 もり山
一般的に中津市に初めてオープンした「からあげ」専門店は、1970年(昭和45年)7月開業の「森山からあげ店(現・中津からあげ総本家 もり山)」と云われている。
「中津からあげ総本家 もり山」の「からあげ」の特徴は、化学調味料を一切使用していないニンニクの塩だれと、この分厚い衣にある。
筆者は鶏肉をタレに漬け込むところを偶然目にしたのだが、タレのとろみがすごく、それが流れ落ちずにカリカリに揚がった皮がまたウマい。
写真の「中津からあげ総本家 もり山」三光本店は、筆者が訪ねた後の2019年に火災に遭っているが、鉄骨が入った店舗だったこともあり、以前の店舗の面影を残してリニューアルされている。
また公式サイトには、茨城県つくば市と、筆者が住む大阪府吹田市にある支店も紹介されている。
なお紛らわしいが、これまで紹介してきた「中津からあげ総本家 もり山」と、『元祖中津からあげ「もり山」』は違う店だ。
親戚同士らしいが、「総本家」から「元祖」に暖簾分けされているわけではないとのこと。
ちなみに全国に支店が多いのは、『元祖中津からあげ「もり山」』のほうになる。
大手の製粉会社と提携してインスタントの「から揚げ粉」を出すなど、商売はこっちのほうが上手なようだ。そのせいかどうかは分からないが、仲はそんなに良さそうには見えないね(笑)。
宇佐は「からあげ」専門店発祥の地?
宇佐市では2006年(平成18年)に、宇佐市職員有志4名で立ち上げた「宇佐市からあげ探検隊(現:USA★宇佐からあげ合衆国)」が、「からあげ」専門店の調査を行い、「からあげ」専門店発祥の起源は、宇佐市四日市の中華料理店「来々軒」にあったと公表している。
現在は中津市と良きライバル関係を築き、競い合うことでお互いを高め、地域の「からあげ」文化を支えているそうだが、なにかどこか腑に落ちない。
前述したように、中津だ宇佐だと行政の区割りに囚われず、共通の食文化を持つ「大分県北部」全体を「からあげのメッカ」と捉えた場合、競うのは分かったような分からぬような歴史ではなく、前を向いた「味」や「食し方」であって欲しいものだ。
その意味では、この店のように鶏の部位にこだわるのもひとつの選択肢で、買う側にも分かりやすくてよかった。
骨付きは食べにくいものの、しゃぶりつく醍醐味が楽しめる。
結論としては…
旅人の場合、中津城に行くなら中津で、宇佐神宮に行くなら宇佐で、もっと云えば別府温泉に行くなら別府市街で、クルマを停めやすい「からあげ」専門店に行き、揚げたてを買うのが一番いい。
食べログに惑わされ、クルマも駐められないような小さな店に行っても、その苦労が報われるだけの成果が得られるような気はしない。
地元がウマいと太鼓判を押す「からあげ」のタレ
さて、ここからは自ら中津のからあげを作る話になる。
まず現地で買うなら、地元で好評の「フンドーキン からあげの素」がいいと思う。
うすくちしょうゆに、にんにく・しょうが・唐辛子などの風味をきかせた本場大分風の味付けになっており、スーパーマーケットや道の駅でも手に入るので、お土産にも最適だ。
アマゾンや楽天の通販でも扱っているので、よければ一度お試しを。
近所のスーパーでも手に入る、「宇佐」と「中津」の名店のタレ
もっとも入手しやすいのは、この日清製粉が発売している「からあげグランプリ®」最高金賞店監修のから揚げ粉だ。
シリーズは3アイテムあるようだが、筆者の近所のスーパーでは「からあげ太閤」のガーリック風味しか入手できなかった。
「からあげ太閤」は大分県宇佐市に店を構える、人気のから揚げ専門店だ。
以前は、塩ダレ部門で最高金賞を受賞している『元祖中津からあげ もり山」』監修のから揚げ粉が店頭に並んでいたのだが、近頃は見かけない。
筆者に限らず、大阪人は「からあげ」には醤油独特のコクと、何より黄金色がないと物足りなく感じるのかも。
日清の「からあげグランプリ®」最高金賞店監修シリーズの詳細は、こちらの公式サイトでどうぞ。
まあ、どっちにしても飲むのはこれかな。
「からあげに合う!」って、天海さんも沢村くんも叫んでたし(大笑)。
冷めた「からあげ」を、おいしく温め直すベストな作戦
最後はスーパーや道の駅の店頭でパックで売られている「からあげ」や、自宅で余った「からあげ」を、再び加熱して揚げたてのようなアツアツの美味しさにする方法をご紹介しよう。
といってもやり方は、ウェブを開けばどのレシピサイトにも出ている、いたってオーソドックスな方法だ。
まず冷めた「からあげ」を、電子レンジでラップをかけずに30秒ほど温める。
目的は肉の中を温めることにあるが、ラップしたり電子レンジ専用のフタを使って温めると、水蒸気が「からあげ」の表面についてしまい、しっとりした食感になってしまうのでご注意を。
続いて、温めた「からあげ」をオーブントースターで3.4分焼き上げたら完成。
なお事前にオーブントースターをプレヒートしておき、アルミホイルで受け皿を作ってトレーに入れると、間髪入れずに表面に熱が入り、油でオーブントースターが汚れずに済む。
ただ電子レンジとオーブントースターを使うこの方法は、さすがのキャンピングカーでも難しく、旅先だとオーブントースターの代わりにフライパンを使うことになる。
その際は先にフライパンをよく温め、中火よりも小さめくらいで、根気よく焼き上げる必要があるだろう。
ただ、筆者もそこまではしない(笑)。
旅先ではアツアツを買って、冷めないうちに胃袋へ送ってしまうに限る。