この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の中のひとつです。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。

外輪山・カルデラ・阿蘇五岳。阿蘇をうまく攻略する秘訣は、その特異な地形を掌握することと、類似の情報を整理すること。

阿蘇の地形
「阿蘇」という表現は曖昧で、場合によっては「阿蘇くじゅう国立公園」全域を指す場合もあるようだが、ここでは上の航空写真の中央にそびえる「阿蘇五岳(高岳・中岳・根子岳・烏帽子岳・杵島岳)」の山麓と、それを取り巻くカルデラ及び外輪山までの範囲を「阿蘇」としている。

さて。「やまなみハイウェイ」を湯布院から南下してくると、途中で幾度か「景色の分岐点」を通過するが、こういう景色が現れたら、そこが「阿蘇」の始まりだ。
冒頭の航空写真と見比べればわかりやすいが、この写真はマップの上部にある濃いグリーン地帯にあたる「北外輪山」のひとつ、「大観峰」の展望所から撮ったもの。
手前の平坦な田園地帯が「カルデラ」、そして奥に見えている山が「草千里」と「中岳」のある「阿蘇五岳」、いわゆる「阿蘇山」になる。

出典:阿蘇ジオパーク
世界ジオパークに認定されている「阿蘇」は、過去の火山活動により「すり鉢状」の地形になっている。
つまり周りの高台には、同じような景観が見える場所があちこちにあり、極端な言い方をすれば「どこの景色もたいした違いはない」(笑)。

細かいことを云えば、南阿蘇からは「阿蘇五岳」のかたちが違って見えるが、初めて訪れる旅人の目には、おそらく「同じ景色」にしか映らない。
にもかかわらず「阿蘇」を紹介しているサイトの中には、「絶対見たい!阿蘇の絶景スポット○○選」といった派手なタイトルをつけ、似たりよったりの展望所を羅列している。
それでは、見た人間が迷惑するだけだ。
マイカーの旅人は、同じ「阿蘇」でも「ここが一番」あるいは「ここにしかない」という場所を、無駄に時間と燃料を使わず、できるだけ要領よく訪ねたいと思っている。

そのためには、「阿蘇」を「北」「中央」「南」に分け、バラエティーに富んだ個性のある見どころを紡いで走る必要がある。
さて。ここから先は長いので、インデックスを用意した。もちろん、このまま読み進んでいただいてもかまわないが、リピートする時があれば役立てていただきたい。
阿蘇・北部の見どころ

大観峰&山田パーキング
小国郷から阿蘇市内に通じる国道212号の途中にある「大観峰」と「山田パーキング」は、「阿蘇の涅槃像」と呼ばれる「阿蘇五岳」の眺めが素晴らしい展望所だ。しかも「山田パーキング」は、空いてるうえに駐車場から景色が見える。
ちなみに「阿蘇」には幾筋もの絶景ルートがあるが、外輪山北東部の尾根を辿る、通称「ミルクロード」がもっとも広大な景観を堪能できる道だ。
「ミルクロード」は1本の道の名称ではなく、県道を中心に走りつなぐルートの愛称で、周辺に牧場が多く点在していることからその名がつけられた。

「ラピュタの道」は、その中の有名なドライブスポットだったが、2016年の熊本地震で道が崩れ、2020年現在も復旧の目処は立っていない。
阿蘇内牧温泉


阿蘇神社

2016年の熊本地震で被災した楼門は2022年再建の予定で、今はまだ見られないが、楼門前には「横参道」と呼ばれる珍しい通りがあり、その途中にある「神の泉」では、昔から変わらぬ名水を自由に汲むことができる。
道の駅 阿蘇

阿蘇北部にある人気の車中泊スポット。JR阿蘇駅と隣接しており、運が良ければ停車しているクルーズトレイン「ななつ星in九州」が見られるかも。
阿蘇・中央部の見どころ

このエリアは「中央火口丘群」とも呼ばれる、まさに「阿蘇」の「本丸」だ。
北側にある「道の駅 阿蘇」を朝出発し、県道111号の途中にある牧場や米塚を撮りながら、「草千里」と「中岳火口」を目指していこう。
米塚

約3300年前の噴火で形成されたという、高さ約80メートルの均整の取れた山。というより小高い丘、あるいは古墳と呼ぶほうがふさわしい感じだ。

斜面は草に覆われており、グリーンシーズンは緑一色に染まるが、ぬくもりが感じられる冬枯れの光景は、またひと味違う美しさだ。なお、登山によって踏み荒らされた斜面が修復された現在は、登山禁止になっている。
草千里

烏帽子岳の北麓に広がる大草原で、噴煙を上げる中岳をバックに、放牧された馬が草を食む牧歌的な風景が広がる。

緑鮮やかな夏は多くの観光客で賑わうが、誰もいない曙の時間帯や、凛とした冬の幻想的な風景も美しい。
中岳火口

阿蘇五岳の中で、もっとも活発な火山活動を続けているのが中岳だ。
日によっては近づけないこともあるが、コンディションの良い時に当たれば、直径600メートル、深さ130メートルの巨大な噴火口から、白い噴煙の奥に潜む「湯だまり」を間近で見ることができる。
山頂部でダイナミックな自然の営みを存分に体感したら、今度は南側の斜面を下って「道の駅 道の駅あそ望の郷くぎの」へ向かおう。ここは多少早めに到着しても退屈することはない。
また温泉が好きなら、その前に2019年に営業再開にこぎつけた阿蘇の秘湯、「地獄温泉すずめの湯」に立ち寄ってみるもいいだろう。
阿蘇・南部の見どころ

道の駅 道の駅あそ望の郷くぎの
2015 年にオープンした南阿蘇の大規模リゾート施設で、車中泊にも適している。阿蘇山が見えるドッグランは圧巻の広さで、九州では珍しいパークゴルフ場もある。
白川水源

水神を祀る白川吉見神社の境内にある水源。毎分60トンの勢いで湧出する水温14度の水は、日本名水百選に選ばれている。
南阿蘇村震災遺構 数鹿流崩れ跡

南阿蘇から熊本市内方面に向かう人には、熊本地震による阿蘇地域の被害を象徴する震災遺構、「数鹿流崩れ(すがるくずれ)」に立ち寄ってみていただきたい。

対岸の崖には、熊本地震によって崩落した、長さ200メートルの阿蘇大橋の一部が引っかかる形で残存している。

また振り返って見上げると、北外輪山の大規模な山腹崩壊跡が生々しい姿をとどめている。
熊本地震以来、熊本市と阿蘇地域を結ぶ道路は、北外輪山の二重(ふたえ)峠の迂回路となり、人々の暮らしや観光産業に大きな影響を与えてきたが、2020年8月に鉄道、10月に国道57号がようやく復旧。

そして2021年の春に、新しい阿蘇大橋が元の場所から約600メートル下流に架け替えられる予定になっている。

当事者の気持ちを思えば傷ましいが、阪神・淡路大震災や東日本大震災と同じように、その壮絶さと復旧の歩みを未来に伝える震災遺構は、いつまでも風化しないよう、あえて多くの人の目に留まる場所に残す意義があると感じた。
さて。以上で「阿蘇」のガイドは終了だが、別府温泉から始まる「やまなみハイウェイ」の話はまだ終わらない(笑)。
最後は再び大分県に戻り、花公園や長湯温泉のある「くじゅう東地区」の見どころを詳しく紹介する。
阿蘇 車中泊旅行ガイド

























