【2023年1月更新】
【2023年1月更新】車中泊旅行歴25年の歴史に精通するクルマ旅専門家がまとめた、国宝「霧島神宮」の由緒と車中泊に関する記述です。
この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の中のひとつです。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。

「西の日光」と呼ばれる霧島神宮の本殿は、2022年に国宝に指定された新名所。
「霧島神宮」の筆者の歴訪記録
※記録が残る2008年以降の取材日と訪問回数をご紹介。
2010.05.02
2011.12.26
2013.10.28
2016.12.29
2022.12.31
※「霧島神宮」での現地調査は2022年12月が最新になります。
霧島神宮【目次】
霧島神宮の歴史
6世紀創建と伝わる「霧島神宮」は、日本有数の歴史を誇る古い社と云われ、もともとは、高千穂峰の山頂近くにあった。
その一番最初に建てられたと伝わる場所には、「本宮(げんぐう)」と呼ばれる祠が残されているが、「霧島神宮」は高千穂峰が噴火するたびに焼失を繰り返したため、平安時代中期の天暦年間に、麓の高千穂河原に移された。
しかしここも、鎌倉時代の1235年の噴火で焼失したことから「古宮址(ふるみやあと)」となり、室町時代の1484年に現在の場所に遷宮された経緯を持つ。
その歴史から考えられるのは、「霧島神宮」のルーツは「天孫降臨」ではなく、怒り狂ったような激しい噴火を繰り返す、高千穂峰に対する古代の人々の山岳信仰にあったということ。
大和政権は歴史を塗り替え、人々の祈りの対象を「天孫降臨神話」の主人公であるニニギノミコトに、ちゃっかり「すり替えた」わけだ(笑)。
余談になるが、
「天孫降臨」の舞台には、鹿児島県の霧島にある「高千穂峰」と、宮崎県の高千穂にある「槵觸(くしふる)の峰」2つの説があり、どちらにも近くにニニギノミコトを祀る社がある。
霧島は「霧島神宮」、高千穂では「高千穂神社」がその社だが、かたやは「神宮」、もうひとつは「神社」になっている。
神宮と神社の違い
大雑把に云うと、「神社」は神様を祀っている場所の総称で、そのうち皇室に関係があるとされる全国24の社を「神宮」と呼ぶらしい。
だとしたら、宮崎の「高千穂神社」はその話と矛盾していることになるわけだが、
正直なところ、全部が作り話なので、つじつまが合わないのは当たり前(笑)。
深く考えることも、捉われることない話だと思う。
霧島が「神宮」なのは、天皇家の子孫であるニニギノミコトを祀っているからと云うより、古代からこの地域の人々に信仰されてきた聖地であったことに起因していると筆者は思う。
その聖地を当時の日本政府である「大和政権」が持ち上げてくれれば、誰だって悪い気はしない(笑)。
全国各地にある神社の祭神を、見事なまでに「天津神(天孫族)」にすり替えていった大和政権のしたたかなところは、この巧妙な手口にある。
それに加えて、財力と由緒ある家柄に裏付けられた島津家が、江戸時代に威信をかけて豪奢な本殿を建てたことで、押しも押されぬ「霧島神宮」が誕生した。
現在の社殿は、江戸時代の1715年に島津氏宗家第21代当主、薩摩藩では第4代藩主にあたる・島津吉貴が寄進したもの。
朱塗りの華麗な本殿は、内部にまで細かな装飾が施され、「西の日光」とも呼ばれている。
これが事実と物証に基づく「考古学的見地」から見た「霧島神宮」の実像で、支配者の庇護がそこまでではなかった、宮崎の高千穂との一番の差だ。
ただ高千穂には、庶民の信仰が舞踊というかたちで受け継がれてきた、「夜神楽」という無形の文化財がある。
こう考えると、両者の違いは明快だ。
現代人はそもそも、「天孫降臨」など信じていない(笑)。
ゆえに霧島と高千穂は、「なかったことをあったことにする」、いわば既成事実を後付けすべく争ってきた歴史を有しているわけだが、「神話」の中には、なにがしかの歴史的事実を暗示しているものもある。
日本の創生期に興味があるなら、ぜひ霧島とあわせて宮崎の高千穂にも足を運んで見ていただきたい。さすれば、九州の旅が持つ真のおもしろさにも出会えると思う。
霧島神宮の見どころ
自然豊かな霧島の山中にありながら、年間約150万人が参拝に訪れるという「霧島神宮」の人気ぶりには驚かされるが、この並んでいる若者たちが、本来の由緒に畏敬の念を抱いているかどうかは疑問だ(笑)。
「霧島神宮」は、ニニギノミコトが新しい国づくりのために「天孫降臨」したことにちなみ、起業や転職といった「事始め」にご利益があるといわれてきた。
また、お后と子孫も祀られているため、子孫繁栄、家庭円満などの祈願にも良いとされている。
さらに「縁結び」のご利益は、坂本龍馬が湯治を兼ねた新婚旅行で、妻のおりょうを伴い、この地を訪れたことに由来しているというから、バカバカしい(笑)。
筆者はこの手の、天下泰平の世となった江戸時代以降に「こじつけられた」話を、真に受けるほどお人好しじゃない。
だが行けば、ちゃんとお賽銭を投げて、好き勝手なお願いもする(笑)。
理由は前述したように、神社・神宮の多くには、祭神が「天津神」にすり替えられるまでは固有の「氏神様」が祀られており、その地の人々の心の支えとなっていた。
ゆえに、いわゆる「八百万の神」に祈りを捧げるのは、やぶさかじゃない。
全国各地に点在する有名な神社を訪ねる意味は、どこにでもいらっしゃる「天津神」に向かって、むやみやたらと手を合わせることではないだろう。
ちなみに天照大神を祀る神社は「神明神社」と呼ばれているが、その数は全国に5400ヶ所もある。
国宝指定で変わる「霧島神宮」の見どころ
2022年2月、由緒ある「霧島神社」に「国宝指定」という勲章が加わった。
これにより、それまでやれ「縁結び」だ「パワースポット」だと、若い娘をそそのかし続けてきた世俗的な「誘い文句」が色褪せ、その本質にスポットライトが向けられるようになれば幸いだ。
だが国宝に指定された、本殿(ほんでん)・幣殿(へいでん)・拝殿(はいでん)のうち、常時誰もが見られるのは本殿の外観のみで、後は特別拝観時にしか目にすることはできない。
ただそのすべてを、NHKの『国宝へようこそ(12)「霧島神宮」』という45分番組では見ることができる。
運良く筆者はその番組を録画しており、何度か見返しているが、国宝指定にいたるまでの歴史まで事細かく取材編集されており、さすがはNHKと感動を覚えた。
ということで、ここではその触りだけをお見せしよう。
また例年元旦には、「天孫降臨霧島九面太鼓」の奉納が社務所前で行われる。
2023年の「行く年来る年」で放送されたため、記憶にある人も多いと思うが、実は筆者はこの日の夕方に「年末詣」で現地を訪れており、偶然にもリハーサルに遭遇し、目の前でその様子を見ている。
本番では白の衣装を身にまとい、九面を被って、高天原から降りて来た神々に扮するのだが、衣装がなくても太鼓を一心不乱に打つ姿は勇ましく、見ているだけでも力が漲ってくる気がした。
霧島神宮の駐車場と車中泊事情
というわけで最後は、「霧島神宮」へ初詣にでかけたい人に向けて、その車中泊事情を解説しよう。
結論から云うと、「霧島神宮」の無料駐車場で車中泊はできる。
その際にお勧めなのは、2つある「参拝者用駐車場」のうち、マップに青い星印をつけた狭い方の駐車場だ。路面もフラットで申し分ない。
ウォシュレットが完備しているトイレは、参拝者休憩所の隣りにあるが、別棟になっているので、確認したわけではないが、おそらく24時間利用できるだろう。
また大きい方の駐車場にも、仮設トイレが用意されている。
霧島神宮の近くには道の駅と、観光案内所に無料の駐車場があるが、いずれもトイレはウォシュレットではなく、それを希望する人は、ここがベスト車中泊スポットになるだろう。
ただしここでも可燃ゴミは捨てられない。
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