車中泊旅行歴25年のクルマ旅専門家が、「日本一周」と「日本縦断」の違いを明快に説明しています。
「正真正銘のプロ」がお届けする、リアル車中泊旅行ガイド
この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の紹介です。
~ここから本編が始まります。~
「一筆書き」してこそ、本当の日本一周。
全国を旅していると、時折クルマやバイクに「日本一周」と書いた旅人を見かける。
世界を見渡せば箱庭のように狭い国とはいえ、確かにそれはシニアか学生のように、時間にかなりの余裕を持てる人間にしかできない「夢の旅路」だ。
だが旅行者のブログやSNSをよく見てみると、かれらの「日本一周」には少し誤解があるように思える。
杓子定規かもしれないが、「日本一周」というのは、文字通り一筆書きで描くように、日本の海岸線に沿って旅することだと筆者は思う。
つまり基本的には、北海道の富良野や帯広、東北なら八幡平や裏磐梯、さらに富士山、北アルプス、白川郷、琵琶湖、果ては阿蘇山にいたる名所には足を運ぶことない旅路である。
裏返せばそれは、明けても暮れても景色は海、飯は魚介…
まともに実行すれば、1周間で飽きてくるものでしかないだろう(笑)。
すなわち、日本の内陸部と沿岸部を行き来しながら、北海道から九州までのロードトリップを楽しむというのは、「日本縦断」と呼ぶほうが適切だ。
確かに「日本一周」という言葉の響きは、本人には「達成感」、また旅をさほどしない人には「感銘」を与えるかもしれない。
しかしそれは富士登山と同じく、経験値の高い人に意志の強さは伝わっても、さほど素晴らしい実績には映らない。
旅の目的やスタイルが「十人十色」であることを承知した上で…
これから「日本一周・日本縦断の旅」に出ようという人々に伝えたいのは、でかける前に優先順位をよく考えることだ。
人生がいくら長くても、誰も永遠の命や無限の旅費は得られない。
妙なこだわりや妄想に囚われるよりも、まずは「実」を取ることを優先してはどうだろう。
結論は、宴会料理と同じく、好きなものから順番に食べることだ。
特に「完食」に自信が持てないシニアにほど、その話は当てはまる。
「日本一周」よりは「日本縦断」。
しかも一気にではなく、土地土地の「旬」に合わせて断片的に旅するほうが、間違いなくコスパはいい。
変化の少ない長旅は、数多くの「旅を楽しむ引き出し」を持ってなければ、なかなか満喫できるものではない。
中高年にとっての「日本一周」は、ひととおりの旅をやり尽くした後の「余興」的なものだと筆者は思う。