この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、原稿作成のためのメモ代わりに書き残してきた「忘備録」を、後日リライトしたものです。
太平洋の龍野から、日本海の香住まで
龍野は関西人なら誰もがよく知る「薄口醤油」発祥の地であり、そうめんやっぱり「揖保乃糸」の故郷でもある(笑)。
筆者は中国・九州方面にでかける際は、山陽道の龍野西SAで前泊車中泊をすることが多いのだが、いつも素通りばかりで、なかなかここに足を運ぶ機会には恵まれなかった。
こちらは「うすくち龍野醤油記念館」。
かつてのヒガシマルの醤油工場をミュージアムにしているのだが、入場料はわずか10円。昔ながらの醤油づくりの話や道具がわかるコスパの高い施設である。中ではこんなファンタジックな光と遭遇…
ちなみにここでは、「のれん味」といううどんスープのミュージアム限定アイテムを販売している。
播磨といえば、記憶に新しいのが大河ドラマ「軍師官兵衛」。
この龍野城はドラマに何度か登場し、土器山(かわらけやま)の戦いで、官兵衛を窮地に追い込んだ赤松政秀の居城だった。ちなみにその子供である赤松広秀は、あの天空の城「竹田城」の石垣を築いた武将として知られている。
さて。ようやく時間も3時をまわり、姫路城へと駒を進めることにする。
今回は紅葉が絡んだライトアップの撮影が目的なので、あえて遅い時間にやってきた。
姫路城ではスマホユーザーを対象に「姫路城大発見アプリ」なるものを作り、CGを駆使して若者を和ませているらしいのだが、実際に現場でこんなことをやっていたのは筆者だけだった(笑)。
実は世界遺産である現在の天守は、官兵衛や秀吉当時のものではなく、関ヶ原の戦い後に、家康の娘婿であった池田輝政が築城したもので、実際の見どころはその時代以降に多く残されている。
中でも特筆すべきは、西の丸にある千姫ゆかりの化粧櫓だろう。
記念切手にもなっている千姫は、徳川家康の子・秀忠と織田信長のめい・お江の間に生まれた長女で、三代将軍・徳川家光の実の姉にあたる。そして御存知の通り、政略結婚により豊臣秀頼に嫁いでいた。
だが、慶長20年(1615年)5月に起きた「大坂夏の陣」の際に、燃え盛る大坂城からただひとり救出される。そして秀頼自害から一年後、千姫は姫路城の主となっていた本多忠政の嫡男、忠刻と再婚した。
姫路城は夕方5時に閉門されるため、場内からライトアップされた勇姿を見ることはできないが、隣の好古園からチラッと紅葉絡みの天守が見える。ただし好古園が夜間開放されるのは紅葉時期のごく僅かな期間だけだ。
ちなみに好古園は、京都のお寺と違って夜間も別料金にはならない。
姫路城だけの見学が1000円で共通券が1040円。姫路城に隠れているが、ここの庭はぜひ一緒に見ておきたいお勧めのスポットだ。
この日は6時過ぎに播但道で但馬まで移動し、予定通り道の駅・但馬楽座で車中泊をした。ここまでは計画通りだったのだが、翌朝は見事にアテが外れた。
筆者が見たかったのは、こういう竹田城ではなかった。
3度目にして初めて雲海のない竹田城にあたったのだが、立雲峡にできた無料駐車場は「満車」とのことで、手前で停止させられ、そのガードマンから有料駐車場に案内されそうになった。
そこで「今日は雲海が見れるのですか」とわざとらしく聞いたら、初めて見られませんとの回答… そりゃ説明する順番が逆だろう! 嘆かわしいことだが、これでは何人もがその犠牲になっているに違いない。
そんなわけで、朝から時間が余ってしまった。
このあとは湯村温泉に出るつもりだったので、共同温泉の薬師湯の営業時間を調べてみると、朝の6時から開いている。ならば問題はない。
到着後、時間があるのでゆで卵を作ることにした。お店のおばちゃんは10分と言ったが、湯村温泉の源泉温度は94度と高温のため、それでは黄身まで固くなる。半熟で仕上げるには8分ほどでよさそうだ。
ちなみに「温泉卵」とは、黄身より白味が柔らかい状態の卵のこと。卵黄の凝固温度(約70℃)が卵白の凝固温度(約80℃)より低い性質を利用して作られるのだが、湯村温泉では両方固まるので、正確に云えばできるのは「ゆで卵」だ。
城崎温泉、道後温泉、たしか下呂温泉もそうだったと思うが、「そういえば温泉発見の影には、傷ついた白鷺がつきものだったな…」
そんなことを思いながら見ていると、
奴はガッ!と水中に首を伸ばしたと思ったら
一瞬にして獲物を捉えていた。
なんと素晴らしい! もちろんその瞬間を予見して、カメラを構えていた筆者のこと(大笑)。
もっともカワセミを追いかける「鳥屋」であれば、サギくらいならたぶんみんな喋りながらでも撮れると思う。
湯村温泉の薬師湯は400円で、駐車場料金も2時間まで無料になる。
またこの駐車場は夜間最大600円で、敷地の中に24時間利用できるトイレがあるので車中泊も可能だ。
当たり前だが、車外で調理などのキャンプ行為はできない。ただし、すぐ近くに草太園地という安いキャンプサイトがある。
その後、浜坂を取材して香住へと向かった。
ここには道の駅・あまるべがあるのだが、久しぶりに行って驚いた!
そこには新しく「空の駅」なるものができていた。去年はまったくそういう工事もしていなかったのだが… こういうことがあるので、もう写真があるから大丈夫とはいかない。
香住の目的地はココ。観光バスがやってくるカニの直売店だが、ここには他にないお勧めの一画がある。
こんな感じで、松葉ガニの焼きガニを手ぶらでリーズナブルに味わえるのだ。
他にもイカやエビ、ご飯、味噌汁などがあるので、ちゃんと食事にしたければそうすることも可能だが、ちょっとオヤツ程度に食べるには、セットよりもこういう単品のほうがいい。
筆者は松葉ガニは焼いて食べるのが1番好きだ。もちろん生を買って自前で焼く機材を車には積んでいるが、それをやるにはシェルターを持参するか昼間でないとさすがに寒い。となると大掛かりになる。
これでコンロ代金500円を加えて、夫婦で3300円。この店はドリンク持込OKで、道の向かいはトイレ付きの無料駐車場になっている。ただしキャンピングカーでのキャンプ禁止と書かれているので、車中泊がしたい時は、お店に相談をするといいだろう。