「クルマ旅専門家」・稲垣朝則が、10年以上かけてめぐってきた全国の温泉地を、「車中泊旅行者の目線」から再評価。車中泊事情や温泉情緒、さらに観光・グルメにいたる「各温泉地の魅力」を、主観を交えてご紹介します。
「しんとろの湯」は、肌を包み込む美肌の湯の極み
「しんとろの湯」は宮城県の鳴子温泉郷・中山平温泉にある共同浴場で、山形県の酒田と宮城県の石巻を結ぶ国道47号沿いにあり、筆者がちょくちょく利用する「東北横断ルート」の途中にある。
そのためこれまで4度入湯しているのだが、「何度でも来たくなる温泉」とは、まさにここのことだろう。
ただ…蕎麦屋のような外観は全くもって名湯らしくなく(笑)、その湯の素晴らしさを事前に知っていなければ、たぶんこのレポートを書くことはできなかったと思う。
「車中泊の旅」を生業にしているおかげで、日本全国津々浦々の温泉地を周る機会に恵まれてきた筆者は、還暦を待たずに「日本三美人の湯」と呼ばれる、和歌山県の「龍神温泉」・島根県の「湯の川温泉」・群馬県の「川中温泉」、さらに「日本三大美肌の湯」とされる佐賀県の「嬉野温泉」・島根県の「斐乃上温泉」・栃木県の「喜連川温泉」の全てに足を運び、日帰り入浴ができない川中温泉・かど半旅館以外は入湯済み…
そのどこと比較しても、体感できる美人・美肌系の泉質では、この「しんとろの湯」に勝るところはないように思っている。
浴室はひとつで露天風呂はないが、入った途端に手のひらがヌルヌルしてくるので、並のお湯でないことはきっと誰にでもすぐにわかる。
それは数値を見ても明らかで、pH9.4のアルカリ性に加え、美肌成分のメタケイ酸を、温泉1キログラム中におよそ500ミリグラムも含むお湯は希少中の希少。
それを源泉かけ流しにしているのだから、湧出量の少ない温泉地にしてみれば有り得ないような贅沢だ(笑)。
ちなみにアルカリ泉は、古い角質を除去し、肌をすべすべにしてくれる。お湯は柔らかく、無色澄明・無味無臭であることが多い。
またメタケイ酸は、50ミリグラム含んでいれば温泉と公式に認められる成分で、体をコーティングして保温・保湿する効果があることがわかっている。
なお、「しんとろの湯」ではパック入りの「蒸したまご」と「温泉たまご」を売っている。
特別にうまい!とまでは思わないが(笑)、旅行中の栄養補給に良さそうということで、筆者は毎回買っている。
鳴子温泉郷にはここだけでなく、逆にpH2.4という強酸性の「滝の湯」など、様々な泉質の名湯が数多くある。
「温泉地」として紹介するだけの魅力は十分にあると思っているのだが、残念ながら今はまだそこまで手が回らない。
しんとろの湯
☎0229-87-1126
入浴料:大人420円
営業時間:9時~21時30分(年中無休)