「クルマ旅専門家」・稲垣朝則が、10年以上かけてめぐってきた全国の温泉地を、「車中泊旅行者の目線」から再評価。車中泊事情や温泉情緒、さらに観光・グルメにいたる「各温泉地の魅力」を、主観を交えてご紹介します。

後楽館は、元祖スノーモンキーの露天風呂がある、地獄谷温泉の一軒宿

長野県の地獄谷温泉は湯田中渋温泉郷のはずれにあるが、その名は志賀高原の竜王山に端を発する横湯川脇の噴泉が、まるで地獄の底から噴き出しているような音を発することに由来するという。
天然記念物にも指定されているこの大噴泉は、間欠泉と違って中断することがなく、3500万年前から今日まで約98度の温泉を湧出し続けている。
今日はその地獄谷温泉にある孤高の温泉宿を紹介しよう。
地獄谷温泉の秘湯を守る一軒宿「後楽館」【目次】
1.後楽館へのアクセス

後楽館は「日本秘湯を守る会」に名を連ねているが、その中でも「秘湯の度合い」が際立って高い。

上林温泉や渋温泉の人里から2キロほど離れた渓流沿いに建ち、クルマで玄関まで行くことはできない。
歩いて物を運び、自家発電で灯をともして、秘湯を守る先代からのスタイルを、7代目となった今も踏襲している。
とはいえ、夏(4月14日から11月30日まで)は近くの地獄谷駐車場(有料)まで車で行けるため、山道を歩くのは10分程度で済む。

しかし冬(12月1日から3月31日まで)は、上林温泉にある野猿公苑駐車場(無料)に車を置いて、約2キロの雪道を30分以上かけて歩かなければならない。
物好きなことに、筆者は冬と秋に両方の道からアクセスしているのだが、目的は宿泊でも温泉でもなかった。
そもそも「秘湯」には様々な意味があると思うが、後楽館は人里離れた場所に建つだけの温泉宿ではない。

ここには、なんと野生のニホンザルと「混浴」ができる露天風呂がある。
2.後楽館とスノーモンキー

貴方は「スノーモンキー」という言葉をご存知だろうか。
後楽館から約5分ほど先にある「地獄谷野猿公苑」で餌付けされたニホンザルは、寒い時期になると温泉に浸かって冷えたカラダを温める。
その様子が国内外のメディアに取り上げられ、海外のフォトコンテストで入賞したり、アメリカの雑誌「LIFE」の表紙を飾ったことから、いつしかそう呼ばれるようになった。

「猿の惑星」ではないが、スノーモンキーにも「温泉の気持ち良さ」を最初に覚えた祖先がいる。
後楽館によれば、初めて猿が温泉に入ったのは1963年頃で、湯治のため長期滞在していた一人の船員が、露天風呂の近くまで来た猿を呼び寄せ、温泉に入らせようと試みたのがきっかけだそうだ。
残念ながら船員の滞在中に猿が温泉に入ることはなかったようだが、その後一匹の小猿が温泉に浸かり、それが群れ全体に広まったという。

地獄谷野猿公苑の中に猿専用の湯船が作られたのは、それから後のことだが、今ではすっかりそちらのほうが有名になってしまった(笑)。
そう聞くと… 「元祖・お猿の温泉」に入ってみたい。しかもあわよくばスノーモンキーちゃんと。なんてことを考えるオバカが必ず出てくる(笑)。
もちろん筆者もそのひとりで、2013年11月に後楽館を訪ねてきた。
3.後楽館の温泉

その日は混浴こそできなかったが、「見物猿」がやってきた。
地獄谷野猿公苑と全く逆のロケーションは、まさに「猿の惑星」だった(笑)。

こちらは男性用の内湯。「延命の湯」と名づけられており、ほのかな木の香りに癒やされる。湯船は小さめで定員は4人といったところだろうか。
露天風呂は温めだったが、こちらは源泉だけでは熱すぎて入浴できないらしく、写真の通り「水を止めないでください」という張り紙がされていた。
地獄谷温泉後楽館 公式サイト
所在地 :〒381-0400下高井郡山ノ内町地獄谷温泉
電話 :0269-33-4376
入浴料: 600円
営業期間 :通年
営業時間 :12:00~15:00(閉館)
休館日: 不定休
給湯方法 :源泉かけ流し
泉温 :70.5度
泉質 :含硫黄-ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物泉(混浴露天風呂)
効能: 胃腸病・神経痛・リューマチなど
pH :7.2

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