この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の中のひとつです。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。
由志園がある大根島は、日本一の牡丹栽培地
大根島(だいこんしま)は、島根半島の東部の「中海」に浮かぶ島で、「ベタ踏み坂」で一躍有名になった「江島」と、道路を兼ねた堤防でつながっている。
境港から「江島大橋」を渡り、大根島を通って松江市内に入る道は、両都市を結ぶ最短ルートで、普段は地元の生活道路としてよく利用されている。
その生活道路が、観光客のクルマで渋滞するほど混み合う季節が春だ。
写真は4月下旬〜5月頃に見頃のピークを迎える牡丹。
原産国の中国では「花神」「花王」という別名で呼ばれ、バラのように美しく大きな花を咲かせることから人気がある。
大根島はその牡丹の苗木栽培が盛んで、年間約200万本が生産され、日本の総生産量の8割以上がこの島で生産されるというから驚く。
「島根県の花」に制定されているのも頷ける話だ。
一説によれば、牡丹は弘法大師が持ち帰ったと云われているが、その理由は根の皮に「鎮痛、消炎、浄血」などの薬効があるからだ。
平安時代以降は観賞用にも使われるが、本格的に広まったのは品種改良が進んだ江戸時代で、大根島における栽培の歴史もその頃から始まる。
さて。大根島の牡丹が有名になったのは昭和になってから。
例年ゴールデンウィークには、島内各地の牡丹園に活気が宿るが、中でも際立って美しいのが由志園(ゆしえん)の日本庭園だろう。
写真は園内中央部の池泉に、5万輪ともいわれる牡丹の花を浮かべるイベント「池泉牡丹」。
あの「足立美術館」にも勝る艶やかさだ。
由志園は大根島の観光開発を目的に1975年(昭和50年)に開園。
園の名前の由来は、初代園主の門脇栄が「決して利己を目的とするものにあらず、観光産業の推進こそ天恵に応える郷民の務めなり。その布石となればと願うなり。」という志に由来する。
ボタンを筆頭に、四季折々の花と緑に彩られた1万坪の敷地面積を誇る由志園の池泉回遊式日本庭園。園内にはこの「出雲の国の箱庭」を眺めながら会席料理が味わえる食事処もある。
なお、大根島は高麗人参の生産地としても有名で、由志園には雲州人参ミュージアムが併設されている。
由志園 オフィシャルサイト
☎0852-76-2255
9時~17時(年中無休)
入園料:おとな800円(牡丹の館 特別展を含む)