「クルマ旅専門家」・稲垣朝則が、10年以上かけてめぐってきた全国の温泉地を、「車中泊旅行者の目線」から再評価。車中泊事情や温泉情緒、さらに観光・グルメにいたる「各温泉地の魅力」を、主観を交えてご紹介します。
塩原温泉郷の福渡温泉に涌く、2つの混浴野天風呂の「現在」をレポート
昔から塩原温泉郷を知る中高年の旅人にとって、福渡温泉にあるこの2つの野天風呂が、今も昔も塩原温泉の「名物湯」であることに変わりはない。
筆者が初めて塩原温泉郷を取材したのは、まだ「閉鎖」という言葉なんてカケラもなかった時代だが、近年はなんと「それが普通」になってしまった。
しかしネットをみると、「閉鎖」と「再開」に関するページが交錯し、ニュース的に云うなら、情報は錯綜している。
そこで閉鎖になった「コトの顛末」から、いま現在の状況を整理してみることにした。本来こういうのは、観光協会のやる仕事だろ!(笑)。
「岩の湯」と「不動の湯」の概要とアクセス
以下は2014年5月に発売された、筆者の著書のひとつ「温泉車中泊コースガイド」に記した紹介文だが、現在もほとんど内容は変わらない。
「岩の湯」は福渡温泉地区を流れる、箒川の河原に湧く開放感溢れる露天風呂で、「不動の湯」は、そこから川沿いに渓谷歩道を5分ほど歩いた箒川の支流、不動沢の脇にある。
いずれも緑がかった濁り湯で、土と鉄分が混ざったような独特の臭いがするが、入湯しやすいのは、森の中にある「不動の湯」だろう。
ただし、両湯とも女性には不向きだ。
国道400号から、2つの温泉に通じる「不動吊橋」への通路は、ホテル「松屋」が目印。ただし周辺には駐車場はなく、路上駐車は通行する人だけでなく、貴方の運転免許も危なくなる。
無料でクルマが置いておけるのは、15分ほど離れた「塩原温泉ビジターセンター」の駐車場だ。そこから来ると通りすぎてスグ右に、上の写真の「渓谷歩道入口」が現れる。
「塩原温泉ビジターセンター」から「回顧の吊橋」まで続く「塩原渓谷歩道」。この途中に「不動の湯」がある。
ただし明かりはまったくなく、夜間の独り歩きは危険だ。
なお、一番便利なのは塩原グリーンビレッジに泊まること。
「ここまで詳しくガイドしているにもかかわらず、「閉鎖」とは何事だ!」と云いたくなる筆者の気持ちが伝わっただろうか(笑)。
この後は、いよいよそれぞれが「閉鎖」に至った経緯と、現在の状況についての話になる。
不動の湯 閉鎖の経緯と現在
「不動の湯」が閉鎖になったのは、2015年6月。
理由は「風紀を乱す行為が繰り返された」ことにあるようだ。
だが、いっぽうでは「再開」の情報もある。
テストにせよ、実施したからには本格的な「再開」に向けた動きがあっても良さそうに思うが、2020年9月現在の塩原温泉郷の公式サイトには「現在、休業期間となっております。」とのみ記されている。
岩の湯 閉鎖の経緯と現在
実は「岩の湯」についても、2020年9月現在の塩原温泉郷の公式サイトには「現在、休業期間となっております。」と記されている。
ネットで探ってみると
平成29年12月1日~平成30年3月1日まで、塩原温泉福渡地区にある「岩の湯」は、落石の恐れがあるため上記期間は閉鎖となります。
と書かれた記事が見つかり、さらに
安全面の観点から再開延期となり、再開時期については未定。
しかしそれから2年半近くが経過しているにもかかわらず、未だ「再開」されないというのは、さすがに引っ掛かる。もしかすると背景には、「新型コロナウイルス」の影響があるのかもしれない。
そこで「塩原温泉観光協会」に直接電話で確認することに。
結果はコロナうんぬんに関係なく、いずれも「安全上の問題」から「再開」の予定は今のところないとの返答だった。
本当は、もうこの2つの温泉ことは忘れてほしい、と云いたかったのかもしれない(笑)。