「クルマ旅専門家」・稲垣朝則が、10年以上かけてめぐってきた全国の温泉地を、「車中泊旅行者の目線」から再評価。車中泊事情や温泉情緒、さらに観光・グルメにいたる「各温泉地の魅力」を、主観を交えてご紹介します。
塩原温泉郷の魅力は、豊かな自然と素朴な施設。
那須高原に比べると「塩原温泉郷」は昔ながらの温泉地で、垢抜けたレストランや観光施設はほとんど見かけない。
代わりにあるのは、豊かな自然と素朴な施設だ。
塩原温泉郷いちばんの見どころは、「吊り橋」と「渓谷美」
塩原温泉郷の中心を流れる箒川には15を超える吊り橋が架けられ、数々の滝とあいまって渓谷美を演出している。
その筆頭格といえるのが、この「回顧の吊橋」と「回顧の滝」だ。
回顧の吊橋と回顧の滝
高さ30メートル・全長100メートルに及ぶ「回顧の吊橋」は、国道400号沿いにある「がま石園地」と「猿岩駐車場」間を遊歩道で結ぶ、「塩原渓谷歩道・回顧(みかえり)コース」の起点にあたる。
「回顧の滝」は、その「回顧の吊橋」を渡った先にある観瀑台から眺めることができる。
12台収容のがま石園地駐車場。ただし平日でも満車になることが多いので、早朝を狙うといい。近くには尾崎紅葉の石碑がある。
もみじ谷大吊橋

ガイドブックによく紹介されているのは、塩原ダム湖に架かる全長320メートルの「もみじ谷大吊橋」だが、駐車場が有料なのと、橋の上からの景観が平凡なので、筆者的には今ひとつ。
ここの見学は、団体様にまかしておけばいいと思う(笑)。
森林(もり)の駅
☎0287-34-1037
大人300円
8時30分~18時(11月1日から翌年3月31日までは8時30分~16時)・無休
中高年にお勧めの施設
温泉めぐりが目的の車中泊の旅人にとって、ビジターセンターや史跡公園は、あまりお金をかけずに湯冷ましの時間が過ごせる貴重な施設だ。
塩原温泉ビジターセンター
無料の自然情報センターで、塩原の自然の展示と紹介のほかに散策のコーディネートも行っている。
また可動式の地形模型「温泉ジオラマ」と各種のパネルで、塩原温泉の湧出のメカニズムも見ることができる。
館内には休憩コーナーもあり、散策で疲れた体を休めることも可能だ。
塩原温泉ビジターセンター
☎0287-32-3050
9時~16時30分・火曜定休
塩原温泉 天皇の間記念公園
明治・大正・昭和の時代に、多くの皇族が避暑地として利用した「塩原御用邸」の「天皇の間」を、1981年(昭和56年)に現在の場所に移築し、原型のまま保存している栃木県指定の有形文化財。
ちなみに「塩原御用邸」は、戦後の1946年(昭和21年)に皇室財産整理のため廃止され、視力障害者復帰施設として利用するため、厚生省へ移管された。
その後、1948年(昭和23年)に「国立塩原光明寮」が開設され、1964年(昭和39年)に「国立塩原視力障害センター」へ改編し、2013年(平成25年)まで使用されている。
〒329-2921 栃木県那須塩原市塩原1266番地113
☎0287-32-4037
大人200円
9時から17時(12月1日から3月31日は午後16時30分閉館)・水曜定休
温泉情緒が楽しめるのは「古町温泉街」
「塩原温泉郷」で唯一、温泉街らしい風情が残っているのは古町温泉だ。
お勧めなのは、車中泊もできる「塩原温泉交流広場」にクルマを置いて、妙雲寺の先から箒川沿いを歩き、「紅の吊橋」を渡って温泉街に戻るコースで、ゆっくり歩いても1時間ほどだ。
写真は温泉街で一際目立つ、早朝から蒸気で温泉まんじゅうをふかしている松泉堂の本店。
1個からでもばら売りしてくれ、店の外の長椅子でお茶を頂きながら食べさせてもらえる。
塩原温泉郷の郷土料理は「スープ入り焼きそば」
「スープ入り焼きそば」は、塩原温泉郷で提供されているご当地焼きそば。
見た目はラーメンのようだが、ウスター系のソースで炒めた麺に、キャベツなどの野菜を煮込み、鶏がらや醤油などで味付けしたスープをかけるため、料理としては焼きそばに分類される。
塩釡温泉付近の「釡彦食堂」と古町温泉付近の「こばや食堂」の2軒が有名で、写真は「こばや食堂」のもの。
まかない用の裏メニューがルーツとされ、ソースの味が強いことと、焼きそば麺ではなくラーメンの麺を使用しているのが特徴だ。
こばや食堂
☎0287-32-2371
駐車場:10台
営業時間:通常11:00~15:00(スープ売り切れ次第終了)・不定休(主に水曜日)
いっぽう、道の駅などで「土産品」としても販売されている「釜彦」の「スープ入り焼きそば」は、出前で焼きそばとラーメンのスープを運ぶ際に、いっしょにすれば汁がこぼれにくいという発想が、そのルーツになったという。
釜彦
☎0287-32-2560
駐車場:20台
営業時間:通常11:00~15:00(スープ売り切れ次第終了)・不定休