「クルマ旅専門家」・稲垣朝則が、10年以上かけてめぐってきた全国の温泉地を、「車中泊旅行者の目線」から再評価。車中泊事情や温泉情緒、さらに観光・グルメにいたる「各温泉地の魅力」を、主観を交えてご紹介します。
湯崎七湯の砿湯(まぶゆ)と行幸湯(みゆきゆ)の2つの源泉を引湯している名湯
「牟婁の湯」は「崎の湯」とともに、「湯崎七湯」の名残を残す共同浴場で、ナトリウム-塩化物泉の「砿湯(まぶゆ)=茶色」と、ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉の「行幸湯(みゆきゆ)=透明」を引き湯し、2つの浴槽に注いでいる。
ただ、ともにかけ流しだが、高温のため加水はしている。
それでも一度で二つの源泉が楽しめることから、リピーターの中には「崎の湯」ではなく、こちらに通う人は少なくない。
シャワーも完備していることから、「崎の湯とのはしご」をする人もある。
文献によると、湯崎温泉は飛鳥・奈良時代には「牟婁の温湯」あるいは「紀の温湯」と呼ばれ、湯崎七湯に数えられる「崎の湯」と「砿湯(まぶゆ)」は、その中で最も歴史が古いといわれている。
だが観光資料を見ると、湯崎七湯の外湯で現在利用できるのは「崎の湯」と、「弁婁の湯」になっており、砿湯の文字は見当たらない。
また逆に、湯崎七湯の中に「弁婁の湯」も見当たらない。
これって、どうこと?
調べてみると、「牟婁の湯」は、砿湯(まぶゆ)の源泉からお湯を引いている後世に作られた「日帰り温泉施設」であることが分かった。
つまり、きちんと説明すると
●牟婁の温湯=奈良時代の湯崎温泉全体の総称
●砿湯=湯崎七湯の1つだが、現在は源泉しかなく入浴はできない
●牟婁の湯=砿湯のお湯を引いた、代わりの日帰り温泉施設
これを調べて理解するのにすいぶん時間を費やしてしまった…
実にややこしい話で、旅人を惑わすネーミングだぜ(笑)。
さて。
海岸に自然湧出していた湯崎温泉は、江戸時代に湯治場として発展する。
当時は陸路が整備されておらず、現在の田辺市から舟で来る人が多かった。
そのためこの源泉場所に浴槽を掘り、下に石を敷き詰めただけの原始的な共同浴場だったそうだが、明治20年に紀州航路が開設され、大阪から直接白浜へのアクセスが容易になったことで、湯崎温泉は広くその名を知られるようになる。
こちらが「牟婁の湯」の外観。
建物の前は一方通行なので、入口にある無料駐車場に停めるには、崎の湯方向からアクセスしなければならない。しかも駐車場は5台ほどで満車になる。
満車時は、有料だがすぐ近くにあるフィッシャマンズワーフの駐車場へクルマを置いて歩くとラク。
なお海水浴シーズンでなければ、ちょっと遠いが無料の白良浜駐車場にクルマを置いて歩くのが利口かも。
【施設概要】
●所在温泉地 :白浜温泉
●業態 :共同温泉
●泉質 :ナトリウム-塩化物泉、ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉
●お湯:源泉かけ流し
●お風呂:内湯男女各1
●休憩スペース :なし
●飲食施設:なし
●駐車場 :あり(約5台・無料)
●シャンプー・石鹸等:なし
●ドライヤー:なし
【利用データ】
1. 営業期間:通年
2. 営業時間:7時~21時30分(閉館22時)
3. 定休日:火曜
4. 入浴料:大人420円・小学生140円・幼児(0歳~)70円
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