この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の中のひとつです。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。
松江歴史館と松江城を見てから、乗船する。
名城のお堀と云えども、現代はその大半が埋めたてられ、断続的な「池」の状態で残されている。
だが松江城の堀の一部は、1611年の築城と同時に造営され、現在もほぼ当時の姿を残していると云われている。
つまり城を囲む「お堀」が、つながったまま現存するだけでも特筆に値するというわけだ。
加えて松江は、「お堀」と「水郷」と「町割り」が、ほとんど江戸時代の城下町のまま保たれている。
城下町研究家にとって、貴重な都市といわれる所以はそこにある。
それに関する詳しい説明が、以下のオフィシャルサイトに記されているので、最低でもここには先に目を通しておくほうがいいと思う。
それもあって、筆者は「堀川めぐり」は松江観光の最後にすることを勧めている。
まずは「松江歴史館」、それから城下町の「塩見縄手」を経て「松江城」に登城し、「松江全体の基礎知識」を仕込んでからクルーズに臨むと、天守や武家屋敷の前から見た場所が、一味違って見えてくる。
そもそもお堀は、鯉を飼うためでもボートを浮かべるためでもなく、城の「防御」のために築かれたもの。
すなわち、見ても面白いはずがない(笑)。
ゆえに「予習」がないと、何を見たとて口から出るのは「でかっ!」「うそ~!」と今どきの若者が得意な形容詞だけになる。
白髪の混じったいい大人が、それではさすがに恥ずかしい。
さて、ここからは具体的なコースガイドになる。
まずこちらが「大手町広場乗船場」。ここから出る舟には定時便があり、各乗船場にも立ち寄ってくれる。
基本の遊覧コースは所要時間約50分、一日乗船券(その日であれば何回でも乗り降り可能。ただし夜間運航は除く)は1500円。
時間がなければ「ふれあい広場乗船場」を発着するぶらっとコース(30分・要予約)で、メインの塩見縄手周辺だけを水上から眺めるという手もあるが、さすがにコースが短すぎるのと割高なので個人旅行には勧めない。
急ぐ時は、それとは別に乗船時間を短縮できる方法がある。
「堀川遊覧船」はその日であれば、途中何回でも乗降が可能なので、筆者たちはカラコロ広場で下船して、旧日本銀行をリノベーションした「カラコロ工房」でティーブレイクを楽しみ、再び舟に乗って大手前まで戻ってきた。
ただクルージングの後半は、お堀を離れ、町中を流れる京橋川と米子川の狭い水路を進むため、前半ほどの風情は感じない。
ゆえに「カラコロ広場乗船場」で下船し、そこから駐車場に歩いて戻っても「損」ではないと思う。
1500円の価値は、乗船時間の長さではなく満足度にあるはずだ。