この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、現地取材を元に「車中泊旅行における宿泊場所としての好適性」という観点から作成しています。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。

正直云って、評判倒れ
「日本三大美人の湯」とは、川中温泉(群馬)・龍神温泉(和歌山)・湯の川温泉(島根)を指して云うのだが、その確たる由来は分からない。
ただ、1920年に鉄道院によって編纂された「温泉案内」の中に、「肌を白くする」という効能一覧に、この3つの温泉が含まれているだけだ。
これから紹介する湯の川温泉は、島根半島の松江と出雲のちょうど中ほどに位置する小さな温泉郷で、温泉街はないが、すぐ近くに道の駅がある。

さて。その道の駅の一画には、八上姫の艶めかしい石像がある(笑)。
八上姫は「古事記」に残る神話「因幡のシロウサギ」で、心優しいオオクニヌシと恋に落ちて結ばれる有名な女神様。
湯の川温泉には八上姫が鳥取から出雲までオオクニヌシに逢いに来る旅の途中で、山の谷あいから湯がわき出ているのを見つけ、その温泉で疲れた体を癒して、より一層美しくなったという伝説が残る。
その際に「火の山のふもとの湯こそ恋しけれ」と歌を詠んだところから、「美人の湯」といわれるようになったらしい。
現在その八上姫は、ゆるキャラに姿を変え、道の駅で頑張っている(大笑)。
ただ神話では、八上姫は待ち受けていた気性が激しく嫉妬深い正妻の須世理姫(すせりひめ)と折りが合わず、子供を残して因幡へ帰ってしまう。
帰りには、恋の傷を癒やしに湯の川温泉に寄らなかったのだろうか。むしろその話をデフォルメしたほうが、話題性があって面白いように思うのだが(爆)。
さて、本題の温泉施設の話に移ろう。
現在の湯の川温泉には、道の駅の足湯を除いて、日帰り利用できる温泉が5軒あるが、車中泊の旅人が行きやすいのは、日帰り専門の温泉施設「出雲いりすの丘公園/ひかわ美人の湯」だろう。
確かに露天風呂もあって、開放感は優れている。
だが、肝心のお湯は塩素の匂いが鼻につき、「温泉」という気がしなかった。「美人の湯」にもかかわらず、「完全かけ流し」ではないというのも気になるところだ。
ということで、日を変えて別の施設を訪ねてみた。
「元湯 湯の川」は、露天風呂こそないが、天然温泉「100%掛流し」を掲げる温泉宿で、旅の疲れを癒やすには申し分なく、地元の評判もまずまず高い。
ただし、日帰り利用できるのは、11時~15時50分(最終受付15時)で、1回50分の制限がある。
温泉目当てなら筆者もこちらをお勧めするが、残念ながら「なるほど~、さすがは美人の湯だ!」というほどの感銘はない。
日本には無名でも、もっといい美人の湯を持つ温泉がたくさんある。
「日本三大美人の湯」という聞こえはいいが、湯の川温泉は「可もなく不可もなく」、あえて「日本三大美人の湯」を湯覇するために、わざわざ行くほどの温泉地でもないというのが、これまでのところの感想だ。







