この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、原稿作成のためのメモ代わりに書き残してきた「忘備録」を、後日リライトしたものです。
天草縦断
筆者がこのブログを書いている間に、家内は横で年賀状を完成させ、なんとか年内に投函を終えてくれた。それにしても… うちのWizは、とことん「働かせてくれるクルマ」だ(笑)。
昨夜は平山温泉に近い「道の駅・菊水」で泊まるつもりだったが、今日のスケジュールにゆとりを持たせるため、最後にひと頑張りして、天草に近くて温泉施設がある「道の駅・不知火(しらぬひ)」まで南下してきた。
八代海に面したこの道の駅なら、天気の様子もよくわかる。
さて。天草に渡るのは今回が2度目。前回は天草四郎のメモリアルホールや大江教会、崎津教会などの有名なキリシタン・スポットを中心にまわったのだが、今回は丸1日かけて、より多面的な天草の魅力を探りにやって来た。
最初の取材地は天草五橋の入口「天門橋」の直前にある三角(みすみ)西港。
この石積みの埠頭は、明治20年に近代国家の威信を懸けて建設された明治三大築港のひとつとされ、700メートル以上に及ぶ波止場は、当時の姿をそのまま残す日本唯一の埠頭ともいわれている。
ちなみに、NHKのスペシャルドラマ「坂の上の雲」では、ある時は横浜港、またある時は佐世保港として登場している(笑)。
さて。写真で見かける天草らしい島と橋の景観は、いったいどこから撮っているのか… その謎解きも今回の旅の目的のひとつだった。
そして見つけた展望台がここ、高舞登山(たかぶとやま)展望台だ。
たしかに、天草で唯一の五橋すべてが見渡せるスポットだが、予想通り展望台までの道は細く、筆者のハイエースでも何度か屋根を小枝で擦って登った(笑)。
いっぽう景観は劣るものの、キャンピングカーでも容易に行ける展望スポットが松島展望台だ。
以前は「ジパング天草」という展望温泉があったところだが、現在は「天空の船」という真新しいリゾートホテルに建て替わっている。
さて。こちらのエキゾチックな景観は、「道の駅有明」から見られる。
パームツリーが絡む海の景色は、宮崎の日南海岸に似ているようにも感じるが、湾内の穏やかな雰囲気は、むしろ瀬戸内海に浮かぶ、山口県の周防大島を思い起こさせる。
道の駅には温泉が併設しており、前回はここで車中泊をしている。
ただ、今回は島を周回ぜずに牛深まで走り切るコース取りのため、休憩のみで先を急いだ。
先を急いだワケはこれ(笑)。
昼食は「いけす料理のやまもと」で、鮮度の高いお刺身をいただくことに決めていた。
並びたくないので11時過ぎに入店したが、昼前にはきっちり満席。やはりここでも「食べログ」の威力は絶大だった(笑)。
こちらは「下田温泉」にある市営の白鷺館。ここは泉質もさることながら、ジェットバスの勢いと吹き出し口が筆者の背中にジャストフィット!(爆)。
ここまでの運転疲れが一気にほぐれた。
この日の天草は暖かく、真冬にもかかわらず妙見浦では釣人の姿も。
もう一月早ければ、筆者もサオを出したいところだ。天草は磯釣り客が多いようで、何件もの釣具屋を見かけた。
天草といえばキリシタンのイメージが強いが、白亜の大江天主堂も、この崎津教会も、ともに昭和の建造物だ。
つまり、今もなお、この地には多くのキリスト教徒が暮らしている。
日本の場合、教会というのはどことなく厳かで、近寄りがたい気がするものだが、漁師町の近くに建つ崎津教会は、暮らしの中に溶け混んでいるように見え、微笑ましく感じた。本当の天草らしい光景とはこういうものかもしれない。
PS
そう思っていたら、2018年7月に「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」として世界遺産に登録された(笑)。
そして天草の最終目的地、牛深に到着。
ここから30分ほどフェリーに乗って、鹿児島県の長島へと渡るのだが、その目的はまもなく分かる。
この日の車中泊地に選んだのは、鹿児島県の「道の駅 黒之瀬戸だんだん市場」。
長島には、港の近くに「道の駅 長島」があるのだが、駐車場が全体的にひどく傾斜しており、車中泊には適さない。
この道の駅も写真の前のスペースは傾斜しているが、少し離れたバス停横にフラットな駐車場がある。
明けて翌朝… 夜明けとともに向かった先は出水(いずみ)。
マナヅルとナベヅルが渡来するこの地は、鹿児島県北西部の水田地帯にあり、 毎年10月中旬頃から翌3月頃にかけて、約1万羽のツルが越冬することで知られている。
ただ、筆者がここを訪ねるのは2度目で、上の景観はもう見飽きていた(笑)。
毎日大量の餌を撒くのだから、こうなるのは当たり前。写真的境地に立てば、ちっともおもしろくはない。
ゆえに今回は、先ほどの教会同様、人々の暮らしに馴染むツルの様子を狙いたいと思って来た。
ツルとマイカーが共存する構図。小さな九州で、北海道に共通するおおらかさを見た。
すべての取材が終了したのは、大晦日の午前10時。
その後は、再び電源が無料で使える道の駅阿蘇まで戻り、打ち上げを兼ねた「忘年会」を夫婦水いらずで楽しんだ。