この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、原稿作成のためのメモ代わりに書き残してきた「忘備録」を、後日リライトしたものです。

島根から北上して福井まで。
春分の日の3連休を利用して、日本一周の旅の続きに出た。
ちょうど1年前の7月から取材をスタートして、日本海側では、鳥取県と福井県だけが「積み残し」になっていた。
だが、その前に島根県の雲州平田へ。
平田(出雲市)は島根半島の北西部に位置し、北は日本海、南は斐伊川と宍道湖に囲まれた、出雲平野とも呼ばれる田園地帯で、富山県の砺波平野と同じ「散居村」が残る場所として有名だ。
出雲平野の防風林は「築地松」と呼ばれ、この地方の豪族が斐伊川の洪水時に浸水を防ぐため、屋敷周りに築地を作り、それを固めるために樹木を植えたのが始まりといわれている。
こちらは富山県の砺波に残る「散居村」。
おそらく高台からは似たような風景が撮れると思うのだが、出雲平野にはそういう場所がなく、ここではドローンを飛ばすしか手はなさそうだ。
また、その「日本の原風景」にアクセントをつけているのが、ローカル鉄道の一畑電車。2010年には映画レイルウェイズの1作目に取り上げられ、雲州平田は一躍全国に知られるところとなった。
1時間に1本しか走らない超ローカルな私鉄なので、撮影は諦めていたのだが、その希少な電車が通る時間帯に「運良く」踏切に捕まった(笑)。
しかもやってきたのがレイルウェイズに登場するデハニ50形と同じオレンジの電車だったのはダブルでラッキー。一畑電車は私鉄各社の払い下げ車両をそのまま運行しており、筆者はなぜか黄色の南海電車を見ることが多かった。
さて。出雲からは日本海岸を北上する。
鳥取では最初に境港に立ち寄り、昨年なくなった水木しげる氏の記念館へ足を運んだ。水木しげるロードは今回が4度目だが、ここへの入館は初めてだ。
もっとも、ここは「寄り道」にすぎない。
今回の取材は、車中泊スポットの再調査を主眼にしている。今年はキャンプがブームになりつつあるため、道の駅よりも低料金で利用できるキャンプ場を発掘したいと考えていた。
境港には、公共マリーナキャンプ場という1区画24時間1028円で利用できるャンプサイトがある。
しかし写真の通り、サイトは駐車場から離れており、オートキャンプはできない。格安キャンプ場の中には、こういう形態のキャンプ場も多く、実際の状況は現地を見るまでわからないのが大半だ。
というわけで、この日のキャンプは諦め、10キロほど離れた道の駅あらエッサで車中泊をすることに。ここは、有名な足立美術館に近いこともあって人気がある。深夜になるにつれ駐車場は埋まっていき、日付が変わる頃には満車となった。しかし、ほとんどキャンピングカーはいない。
コレを見れば、車中泊も新規加入の人々が増加しており、いわゆるミニバン車中泊が近未来のトレンドになることがわかる。
しかも外食中心で、道の駅にはただ寝るだけにやってくる。つまりカーネルのような雑誌や、筆者が書いてきた車中泊のハウツー本を見て、車中泊のことをよく学習している人々が今後のマーケットの主流になるわけだ。
よって、今までのようにマナー・マナーと、ことある度に声高に云う必要性はなくなるだろう。それはオートキャンプの歩みを見れば明白だ。
翌日は日本海沿岸部にある道の駅を視察しながら東へ向かった。
道の駅では必ずゴミ箱の有無を確認しているが、新しい道の駅では、ほとんどの施設に「一般ゴミ」あるいは「燃えるゴミ」と書かれたゴミ箱が用意されているようだ。
筆者の見立てでは、都道府県別に格差はあるものの、おそらく既に過半数の道の駅にゴミ箱は置かれているようにも感じる。
こちらは鳥取砂丘の真ん前にある柳茶屋キャンプ場。ここは駐車場とキャンプサイトが連続しており、5.6台ほどのスペースではあるが、このようにハッチバック下にテーブルとイスを出すことができる。
これなら、バックドアキッチンスタイルのリアル・オートキャンプは可能だ。しかもこのキャンプ場は無料。そのうえゴミの回収までしてもらえる。
クルマはさらに北上し、兵庫県との県境を超えた。
写真は但馬の漁火ラインから見える城崎マリンランド。この日は城崎温泉街から5キロほどのところにある、気比の浜ふれあいキャンプ場でキャンプシーンのロケをして泊まる予定だ。
ここは夏休みに海水浴客の有料駐車場として使われている場所だが、それ以外の時期は無料開放されている。本当のキャンプサイトは少し離れた場所にあり、夏場は1スペース4000円になる。
もっとも筆者は秋から初夏にしか来ないので、お金を払って利用したことはない(笑)。ただしゴミは持ち帰りだ。
この日は海を背景にロースタイル・キャンプのシーンを撮影したかったが、風が強くサイドオーニングも出せる状況ではなかった。そこで、夕方凪になった頃合いを見計らって焚き火シーンを撮ることに。
薪がないだろうと予測し、柳茶屋キャンプ場でスーパーの袋いっぱいの松ぼっくりを拾ってきたが、ここは流木がふんだんにあって困ることはなかった。
翌朝は日の出とともに出発。ようやく早朝から動ける季節がやってきた。
この日は既に取材が終わっている丹後半島をショートカットし、舞鶴経由で福井県の若狭湾へ。小浜は京都に続く「鯖街道」の出発点だ。
先日、世間を騒がせた関電の大飯原子力発電所の近くにできた道の駅・うみんぴあ大飯。広大な敷地と不必要にも思える交流施設の数々…
「原発マネー」という言葉が頭に浮かんだ。
最後は小浜からは鯖街道で滋賀県の朽木村に出て、勝手知ったる「桑野橋河川敷公園」で河原のロースタイル・キャンプシーンを撮影した。
この日のランチは、アヒージョ・パスタ。
今回は撮影でロースタイルのキャンプをやってきたが、スマートな若者はこれでリラックスできるかもしれないが、お腹の出っ張った中高年親父にこのスタイルはちょっとキツイ(笑)。
なお、桑野橋河川敷公園は4月から1日500円に値上げされる。詳細は高校生以上が500円で、中学生以下は無料になるそうだ。
ファミリーの場合はさほど変わらないが、我々は1泊夫婦1200円だったのが2000円になる。その代わりといってはなんだが、水場が立って利用できるよう改善されていた。