このコーナーには、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、原稿作成のためのメモ代わりに書き残してきた「忘備録」と、旅先で頭に浮かんだ「エッセイ」を収録しています。
道の駅を辿り辿って、磐越道へ。
2021年・東北桜前線追っかけ旅(2)【目次】
1.筆者にとって、道の駅とは…
当サイトに幾度か足を運んでいただいている人なら、もう既にご存知だと思うが、筆者は自らの旅に「ディスカヴァー・ジャパン」というテーマを掲げて「日本クルマ旅100選」を選定し、深田久弥氏のように「読み物」としてまとめあげたい野望を抱いている。
それゆえ、道の駅はそのための「旅の宿」として位置づけており、「観光地」として評価することはほとんどなかった。
云ってみれば「山小屋」と同じ感覚だ。
それは今でも大きくは変わらない。
だが「日本クルマ旅100選」と同時に、もうここまで来たら、ついでに車中泊クルマ旅版の「るるぶ」に相当するもの、すなわち地域ごとの観光情報に、ホテル・旅館・民宿などの「宿泊施設」のかわりに、道の駅・オートキャンプ場・RVパークといった「車中泊スポット」がリンクするものを編纂したいと思うようになった。
云うなれば「ひとり・るるぶ」。
今や世の中には、「食べログ」に代表される不特定多数の投稿型情報サイトが、あらゆるジャンルに存在する。
だがそれは、評価の基準が素性の知れない個人に委ねられているため、シニアとなった自分にとっては「的ハズレ」も多く(笑)、それほど信頼できる情報源ではない。
筆者が求めたいのは、年齢や居住地、さらには伴侶や子供の有無、そして指向性まで分かる、取材のキャリアを積んだプロの価値観に委ねられた評価だ。
しかもそれは、同世代であるほどいい。
もし今の仕事をするにあたり、そういう「ぶれない情報」が存在していたなら、それを参考に自らの旅を組み立てたかったが、あるわけはなく、ここまでそのすべてをコツコツと手探りで構築してきた。
ゆえにライフワークでその偉業に挑戦しているのだが、全ては情報更新が容易で、広告費が得られる、インターネットから配信すると決めている。
インターネットが素晴らしいのは、価値ある情報に業界企業が宣伝費を負担し、ユーザーがそれを無料で閲覧できることだ。
マーケットが拡大すれば企業は潤い、ユーザーは充実するインフラやサービス、あるいはニーズを反映した新商品を通じて恩恵に授かれる。RVパークや大容量のポータブル電源がいい例だ。
しかも情報発信者は、純粋にそれで収入を得ることができる。
仕組みそのものは民放テレビと変わらないが、Youtubeと同じく中間に制作局や編集部が絡まず、ダイレクトに伝えたいことを発信できる点が大きく異なる。
いずれは動画にも参入したいという想いはあるが、まずはホームページを固めてから。
車中泊クルマ旅の情報は「図書館にある本」と同じで、鮮度よりも正確性と妥当性が重要で、必要な時に必要な人が閲覧できることが前提だ。すなわち「一度見たらおしまい」のエンタメとは本質的に違う。
それもあって、2019年以降は圧倒的なスピードで、全国の主だった道の駅を取材し直してきた。
しかし、観光地取材と本気の道の駅の取材を両立するのは、極めて難しい。
なぜなら、営業時間の短い道の駅をきちんと取材するには、撮影のタイミングが重要になる、観光地の取材を犠牲にしなければならないからだ。
言い換えれば、だから若者たちは「道の駅のことしか書けない」。いや金と手間暇がかかるコンテンツは、最初から捨てているのかもしれない。
だが「要領」だけで世間を渡っていくことはできまい。
どの世界でも「愚直」と呼ばれるような努力を、いつかどこかで重ねなければ、実を結ぶことはないと筆者は確信している。
さて。この旅では滑川から国道8号を通り、新潟中央から磐越道に乗り換えて会津を目指すのだが、明日の午後には会津に入りたいので、その間にある道の駅の数と持ち時間にはギャップがある。
そこで、2020年9月に新規オープンした「道の駅 ながおか花火館」までの道中にある、道の駅をターゲットにすることにした。
2.道の駅 越後市振の関
この道の駅は、マップを見ても線路と国道に挟まれていることが分かるだけに、車中泊に適していないことは予測していた。
ゆえに普通なら寄らずにパスするのだが、「市振の関」は松尾芭蕉が「奥の細道」の旅で宿をとった場所で、「一家(ひとつや)に遊女もねたり萩と月」の句を残している。
それに関連するような表示や資料があればと立ち寄ってみたのだが、残念ながら見つけられず… 無駄足となった。
特筆すべき内容もなく、この道の駅が記事になることはないだろう。
3.道の駅 親不知ピアパーク
親不知と書いて「おやしらず」と読む。
この道の駅を酷評しているサイトがあったので、どうなのかなと思っていたが、筆者の評価は及第点だ。
確かに目の前が海で、国道8号の高架下に駐車場と駅舎が設けられているため、静寂性は期待できず、車中泊の観点からは褒めるのは難しいが、「休憩地」としてはお勧めだ。
駐車場は「ヒスイ」が拾えるビーチに直接出られるため、退屈しやすい子供連れの旅人には、いい気分転換をさせられる格好のロケーションにある。
ちなみにヒスイは「勾玉(まがたま)」によく用いられる半透明の宝石で、昔は金以上に価値があったらしい。
ゆえに「宝くじの一等に当たるよりは、まだ見つかる可能性のほうが高い」と思って探せば、ガッカリすることもあるまい(笑)。
そんなことより、ここはメシが安い!
特に道の駅にグルメを求めない旅人には、こんなメニューが嬉しいはずだ。世の中の道の駅の紹介サイトには、こういう肝心な情報が欠落している。
4.道の駅 能生(マリンドーム能生)
能生と書いて「のう」と読む。
間違いなくここは、カナ表示にしたほうがいい。なぜならロケーションもグルメも、前述した「道の駅 親不知ピアパーク」より圧倒的に一般受けするからだ。
にもかかわらず、これだとネットで音声検索する際に「のうむ」?「のせい」?と迷い、よくわからないから「もういいや」となる人がなくならない。
この道の駅の「顔」はここ。
多くの客が店頭で茹でた紅ズワイガニを買って、屋外の席でそれを貪り食っていたが、車中泊ならそれにビールが加えられる(笑)。
そのうえ駐車場は広く平坦で、開放感に満ち溢れている。
公園と海が隣接していて、長時間駐車を気にする必要もなさそうだ。おまけに野外トイレはウォシュレット付き(笑)。
1日くらい、ここでのんびりして行くか…
中高年に、それは十分ありな話だろう。
2022年10月 詳細記事を作成
5.道の駅 うみてらす名立
さすがに西から来ると、3連発目の海沿いに建つ大型の道の駅になるので、観光で立ち寄るのは辛くなると思う。
だがここは温泉を併設しており、昔から車中泊旅行者にはよく知られた存在だ。それもあって、既にレポートは書いている。
それに今回新たに気づいたことを追記しているので、ぜひあわせてご覧いただきたい。
6.道の駅 よしかわ杜氏の郷
こちらも温泉が隣接しているので、立ち寄って見たのだが、あまりの覇気のなさに取材する気が失せてしまった(笑)。
筆者が訪ねたのは午後3時過ぎ。閉店間際に棚がガラガラになるのは分かるが、食堂も準備中。まさに「開店休業」(笑)、これはさすがに早すぎでは…
加えて疲れてきたのと、次に本命の「ながおか花火館」が控えているので、「杜氏の郷」の見学はパスすることにした。もっとも元気でも、この有様では中に足を運ぶ気にはなれなかったと思う。
こちらは道路を挟んだ向いに建つ「長峰温泉 ゆったりの郷」で、レストランも隣にある。ただこの駐車場にはトイレはないので、車中泊には道の駅を利用するほうがいいだろう。
なお上信越自動車道から日本海に出て、東北方面を目指す人には、ここが最寄りの車中泊スポットになる。車中泊だけなら、ここでも差し障りはなさそうだ。
さて、ここで時計を見ると、もう直接長岡を目指さないと、16時15分からシアターで上映される花火大会の映像に間に合わなくなることが判明。そこで残りの道の駅は諦め、高速で一気に「道の駅 ながおか花火館」へと向かった。
7.道の駅 ながおか花館
さすがは花火大会期間中に100万人を動員するだけあって、なんたる駐車場のデカさなんだ!
普通車259台は間違いなく最大級といえるキャパだろう。
高速を使ったおかげで、今日1番の目的を無事に果たせて大満足。映像は迫力満点で600円の価値は十分にあるものだった。
筆者は長岡花火は生では見れていないが、大曲の花火大会を現地で見ているので、その臨場感がよく伝わった。
こちらは無料で見られる展示。
土産物も花火一色(笑)。
ちなみにここは、1キロもいかない場所にスーパー銭湯があるので、車中泊にも適している。
なおこの道の駅は、後日詳しいレポートを作成するのでお楽しみに。
2022年10月 詳細記事を作成
8.道の駅 燕三条地場産センター
さて。一夜明けてクルマはさらに北に向かい、次の目的地「道の駅 燕三条地場センター」に到着した。
実は前夜に行ってみようと思っていたのは、今月1日にリニューアルオープンしたばかりという、同じ新潟県三条市にある「道の駅 庭園の郷 保内」。
だが、まさか同じ市内に2つも道の駅があるとは思わず、三条市の道の駅しかアタマにないまま、まったく違う道の駅に来てしまった(笑)。
とはいえ、三条には行ってみようかなという想いがないではなかった。
キャンパーなら、三条と聞いてSnowPeak社を思い起こす人は多いと思う。株式上場を果たした現在は、名実ともに日本を代表するアウトドアブランドに成長し、世界でもその名を知られる存在だ。
会長の山井太氏とは、いろんな意味で運命的なご縁がある。
この写真はカーネルVol,3で北海道特集を組むにあたり、そのロケ前に昔の新潟本社を訪ねた時のもの。
初めて車中泊のロケを大々的に北海道でやるにあたり、とことんデティールにまでこだわってやろうと思い、新潟で足りないアイテムを借りてオールスノーピーク製品で臨んだ。
当時のカーネルはこの世界では「新参者」で、オートキャンパーに負けてなるかという気持ちが強かった。
2008年に美瑛で撮影したその時の写真。
クルマが変わったくらいで、現在とほとんどスタイルは変わらないのだが、モデルは今やふたりの孫のおばあちゃんだ(笑)。
ちなみに青いガビングスタンドは、その後キタキツネに食い破られて、「帰らぬもの」となってしまった。
そんなこともあって、SnowPeak社が地元に錦を飾っている姿を、ひと目見ようと物産館を訪ねたのだが、なんとそこにはユニフレームの製品はあったが、スノーピーク製品は一品たりとも置かれてなかった。
理由はわからないが、スタッフにそのことを聞くとバツが悪そうな表情を見せたことから察するに、「大人の事情」と呼べるものがあったのかも知れない。
まあ、ここでは商品が売れすぎて、物産館に置くどころじゃないってことにしておきましょう(笑)。
9.道の駅 新潟ふるさと村
最後は「道の駅 新潟ふるさと村」だが、ここは以前に一度車中泊をしたことがあった。
筆者はこれまで新潟フェリーターミナルから2度、北海道に渡っている。一度目は前述の時で、2度目は佐渡ヶ島を合わせて取材した時だ。
その時の印象が良かったので、再取材して詳しい記事を書くつもりで足を運んだ。
この道の駅の物販飲食スペースは、すごいを通り越して「すざましい」。いったいどれだけの在庫を置いているのか、聞いてみたくなるほどだ(笑)。
極めつけはこちら。さすがは「あぶさん」を輩出した酒どころだけのことはあるわけだが、驚いたのはその隣のブース。
こりゃ、車中泊をしないわけにはいかんだろう!(笑)。
しかし先を急ぐ今回の旅では、それは次回のお楽しみにして、もうひとつの新潟名物「こしひかりのおむすび」と、おかずに鰆の炙りを買って、車内で昼飯。
味噌汁と薬味のネギは大阪から持参してきたが、こういうものが恋しくなるのが、関東方面への長旅だ。
食事を急ぎで済ませ、新潟中央から磐越道で会津へと向かった。
2022年10月 詳細記事を作成
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