「クルマ旅専門家」・稲垣朝則が、20年以上かけて味わってきた全国のソウルフード&ドリンクを、そのレシピと老舗・行列店を交えてご紹介します。
どこかに懐かしさを感じる桔梗屋の「中華そば」は、関西在住の中高年が馴染めるお味。
まず、総花的に高山ラーメンの特徴を記すと、
醤油ベースの和風スープと、細いちぢれ麺の組み合わせで、麺は100㌘くらいで量的には少なく感じる。
本来高山では、「高山ラーメン」は「中華そば」の名前で親しまれてきた。市内にはかつて約50軒の店があったというが、現在は正統派と呼べる店は10軒ほどに減っているらしい。
老舗が集う「飛騨高山中華そば伝承会」では、その定義を以下のようにまとめている。
◯ かつお節・魚ダシ
◯ 醤油味
◯ 寸胴鍋スープで割らない
◯ 具は基本3種 (ネギ、チャーシュー、メンマ)
◯ 基本レンゲは使わない
◯ 鍋ラーメン (煮込み具合によって味が変化)
◯ 基本は平打ち細麺がスタンダード (オリジナル麺)
◯ チャーシューは基本は煮豚を使用
これ以上ウンチクを並べると、オリジナルの食レポから遠ざかるばかりなので(笑)、代表的なラーメン紹介サイトをリンクしておこう。続きに興味があればどうぞ。
ちなみに若者には、アニメ映画『君の名は。』で主人公が食べていたことから、知名度が広まったそうだ。
さて。筆者が訪ねたのは「飛騨高山中華そば伝承会」に名を連ねる「桔梗屋」。
まさにイメージ通りの「中華そば」は、関西人の舌によくあう甘めのスープで、鶏がらのダシが色の薄い醤油とあいまって、ほどよいコクと旨味を醸し出していた。
麺も申し分なかったが、評判通り少なめ。少食の筆者でも「もう少しは欲しいな」と思う量だった。
だがそれゆえに、飲んだ後の〆には最適だと思う。
場所は写真の路地裏にあるため、観光客が適当に歩いて見つかるような店ではないが、昭和のラーメン屋らしい老舗の佇まいで、見た目の派手さよりも誠実な味へのこだわりが伝わってくる。
まさに表裏一体、中高年を喜ばしてくれる店だった。
なお「有名店」にこだわらないのなら、「道の駅ななもり清見」の向かいにもおいしい高山ラーメンの店がある。
また高倉健主演の映画「あなたへ」のロケが行われた、奥飛騨温泉郷に通じる国道158号沿いの「ドライブイン板倉」でも、同じ醤油系のおいしいラーメンが食べられる。