「クルマ旅専門家」・稲垣朝則が、10年以上かけてめぐってきた全国の温泉地を、「車中泊旅行者の目線」から再評価。車中泊事情や温泉情緒、さらに観光・グルメにいたる「各温泉地の魅力」を、主観を交えてご紹介します。
日本書紀にも登場する、わが国最古級の温泉
道後温泉は日本書紀にも登場するわが国最古級の温泉で、白浜、有馬と並ぶ「日本三古湯」と呼ばれている。
伝承によれば、日本国内でも ひときわ古い3000年もの歴史を持つとされ、神話はもちろん史実上の記録からも、その認識に間違いはなさそうだ。
江戸時代の「伊予国風土記逸文」には、出雲の国の大国主命と少彦名命(すくなびこなのみこと)が伊予の国を旅した時、急病に苦しむ小彦名命を道後温泉の湯に入浴させると、たちまち元気を取り戻し、この石の上で踊りだしたという記述が残る。
ちなみに研究者によると、日本最古の温泉は古文書からすると道後温泉、伝説的要素を除いた「状況証拠」から考察すると、和歌山県の湯の峰温泉になるそうだ。
また、大国主命が登場してくる神様の時代に遡れば、道後温泉・島根県の玉造温泉・兵庫県の有馬温泉の3箇所が日本三古湯に該当し、客観的な事実と見られる根拠から判断すると、道後温泉・有馬温泉・白浜温泉の順に並ぶという。
さて。「これから道後温泉のことを知ろう」という人のために補足すると、正しい道後温泉の定義は、33軒の宿泊施設と3つの外湯を持つ温泉地である。
だが俗に「道後温泉」と呼ばれているのは、外湯のひとつである「道後温泉本館」の場合が圧倒的に多い。
ここでは正しい定義にしたがって、それぞれの魅力を紹介していこう。
道後温泉のお湯は、適温にブレンドされた「単一」の泉質
道後温泉は周りに火山がない「非火山性温泉」の典型例とされている。
ここでは地下1000~1500メートルにあるアルカリ性の深層地下水を、深さの異なる18本の源泉口から汲み出し、20~55度と温度差のあるお湯を、加水・加熱することなく、季節に応じた適温に保つためのブレンドを施している。
温度調整されたお湯は集中管理され、道後温泉本館と椿の湯・道後温泉別館 飛鳥乃湯泉をはじめ、周辺のホテル・旅館へ配湯される。
つまり道後温泉街の施設は、城崎温泉や下呂温泉と同じく「単一」の泉質で、箱根温泉や別府温泉のように、違う泉質を持つお湯場をめぐるような楽しみ方はできない。
そう云われると…
ますます道後温泉の本館に入ってみたくなるのが、「人の子」だ(笑)。
道後温泉本館 入湯パーフェクトガイド
道後温泉本館は、温泉街の中心にある共同浴場で、戦前に建築された歴史ある近代和風建築として、国の重要文化財に指定されている。
重厚感があって、どこかレトロな雰囲気が漂うこの温泉館の前に立つと、一刻も早く中に入りたくなるのは確かだと思う。
だが、ここには「知らなければ損」といえる「見どころ」がたくさんある。
道後温泉・本館改修工事の最新情報 2019年2月
松山市は2019年1月15日から、国重要文化財「道後温泉本館」の大規模な保存修理工事に着手している。工期は約7年の予定で、工事中も全館閉館はせず、一部営業しながら工事を進める。
それもあって、道後温泉は2017年に「椿の湯」の隣に、新たな「道後温泉別館 飛鳥乃湯泉(あすかのゆ)」をオープンしている。
飛鳥乃湯泉は「本館の代替え施設」というよりは、新たなコンセプトで再構築した温泉館というほうが相応しい。
そのオープンを機会に、現在道後温泉では3つの共同浴場をめぐるスタンプラリーを実施している。景品はちょっと魅力に欠ける気もするが(笑)、どうせ3つともまわるというなら、参加してみてはいかがだろう。
道後温泉の見どころと食べどころ
「いで湯と城と文学の町」というのは、松山市の観光PRで用いられているキャッチコピーだが、道後温泉の観光事情は、松山市のそれとほとんど変わらない。
いっぽうグルメに目をやると、「鯛めし」を筆頭に、地ビールや菓子類まで一度は食してみたいソウルフードが目白押しだ。
道後温泉の車中泊事情
道後温泉はこじんまりとした温泉地で、現状通り道後温泉(冠山)駐車場が使えれば特に不自由することはない。
ただし、周辺には道の駅もサービスエリアもなく、公衆トイレを併設する無料の駐車場、あるいは有料でも最大料金設定がある適当な駐車場も見つからない。
つまり、道後温泉(冠山)駐車場への依存度が高い点がネックだ。