この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の中のひとつです。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。
蹴上インクラインは、「水路と京都近代化の先駆け」で、都市景観100 選に選ばれた岡崎地区のランドマーク・スポット
蹴上インクライン【目次】
蹴上インクラインの概要と歴史
インクラインというのは、水運で使われた舟を、斜面に軌道を作って昇降運搬する装置のことだが、
京都に水運・給水・灌漑(かんがい)・発電などの目的で、琵琶湖の水を人工的に引き込んだ水路(琵琶湖疏水)があることをご存知だろうか。
幕末の攘夷派と佐幕派の争いで荒廃した京都は、明治30年代になってもまだ上水道や満足な下水道がなかったため、飲料水が汚染され、伝染病が流行するなど、まちづくりの課題が急務だった。
そこで大規模な治水事業として、琵琶湖疏水が作られることになる。
琵琶湖疎水上を運行してきた舟は、落差の大きい蹴上に入ると、インクラインで水から引き上げられ、南禅寺舟場まで運搬されていた。
昭和23年に務めを終えた、全長582メートルに及ぶ世界最長のインクラインは、線路のみが残され、両脇には90本のソメイヨシノが植えられている。
ちなみにその計画に携わったのは、西郷隆盛の長男で2代目京都市長を務めた西郷菊次郎。
西郷どんが奄美大島に流された時に結ばれた、愛加那との間にできた息子だ。
周辺の見どころ
雑誌やポスターで時々見かけるこの光景は、インクラインから疎水沿いに続く仁王門通りから見える京都市動物園の桜。
「水路と京都近代化の先駆け」を基軸に掲げ、都市景観100 選に選ばれている岡崎地区は、古都京都のイメージとは異質の大きな建物が目立つ、広々とした空間で、クルマも走りやすい。
その景観を理解するうえで重要なのが平安神宮だ。
桓武天皇が唐の首都長安を参考に築いた当時の都の姿が、実はこの地に再現されている。
平安京大内裏の正庁を模した応天門など、朱塗りの建築が映える平安神宮は、平安遷都1100年祭(1895年・明治28)時に建立され、桓武、孝明の両天皇を祀っている。
毎年10月22日に催される華やかな時代祭は、この平安神宮の行事だ。
境内は桜の木が少ないが、東、中、西、南の4苑に別れた池泉回遊式庭園の神苑(有料)には、池に映り込む美しい枝垂れ桜があり、毎年ライトアップとともに「平安神宮紅しだれコンサート」が開催される。
駐車場&車中泊事情
公共交通機関を利用する「蹴上インクライン」へのアクセスは、京都市営地下鉄東西線の「蹴上駅」から徒歩3分。
筆者が京都市内観光のベスト車中泊スポットに挙げている、キョウテク京阪三条駅パーキングにクルマを置き、そこから地下鉄に乗れば2駅目だが、ここへはクルマで行くほうが、その後の行動を考えるといいかもしれない。
というわけで、最寄りの駐車場&車中泊情報を記そう。
まずは市営の岡崎公園駐車場だが、駐車料金は最初の1時間まで510円。以降30分ごとに210円。インクラインしか見ないのなら1時間もかからない。
ただし残念ながら地下なので、車高2.3メートル以上の車両は入庫できない。
ハイルーフ車にお勧めなのは、平安神宮の神通道と仁王門通りの交差点近くにある、平面の「今昔・平安神宮前パーキング」になる。
トイレはないが、すぐそばに24時間営業のセブンイレブンがあり、ライトアップ後、車中泊することも可能だ。
料金は全日30分200円・平日日中最大料金1100円、夜間(20時~翌日8時)までは曜日にかかわらず600円と良心的。
すぐ近くの「タイムズ平安神宮前」は30分で330円取られる。