車中泊旅行歴25年のクルマ旅専門家が、世界文化遺産「古都京都の文化財」に名を連ねる寺社仏閣の登録理由と、その個別ガイドをまとめたページです。
「正真正銘のプロ」がお届けする、リアル車中泊旅行ガイド
この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の紹介です。
~ここから本編が始まります。~
世界文化遺産「古都京都の文化財」は、建築と庭園技術の粋を集めた17の傑作集
「古都京都の文化財」は、京都府京都市・宇治市、滋賀県大津市にまたがる17の寺社仏閣で構成され、1994年に日本で5件目の世界遺産としてユネスコに登録された。
世界遺産への登録理由
筆者は世界遺産を訪ねる際には、必ずその推薦理由を調べる。
なぜなら、そこにはいわゆる観光ガイドに記された内容とは、異質の「魅力」が含まれていることが多いからだ。
なにより筆者は、江戸時代の”太平の世”になり、御師たちが参拝客を呼ぶためにいかにも後付けしたような”ご利益”とか、今どき流行りの”パワースポット”といった主観的価値に興味はない。
世界遺産に認定された物件には、もっと客観的でリアルな根拠が存在する。
ちなみに「古都京都の文化財」の、17ある構成要素に共通する主な推薦理由は、以下の2点に集約されている。
❶平安時代から江戸時代までの各時代を代表する日本の建築様式、庭園様式、文化的背景を今に伝えている。
❷その後の日本の建築、造園、都市計画の発展に大きな影響を及ぼしている。
確かに対象となった名勝は、いずれも芸術的価値が高く、建造物のうち38棟が国宝、160棟が重要文化財に指定されている。
また庭園では8件が特別名勝に、4件が名勝に名を連ねている。
惜しむらくは、創建当時の建造物が大火や兵火のため、相当部分を焼失していることだが、歴史の中で繰り返し再建が行われ、現在も日本文化の象徴としてその輝きを放ち続けている。
ただし、それはあくまでも「最大公約数」のようなもので、「個性」ある魅力は個別に見るまで分からない。
少しネットで検索すれば分かることだが…
「京都の世界遺産ガイド」と題打っておきながら、その個別理由に前述した内容を記載しているサイトがたくさんある。
ゆえにその書き手が、本当に現地に足を運んでいるかどうかは、はなはだ疑わしい。
加えて上記以外の内容で、イコモスが何を評価したのかを見極めるには、それなりに幅広い京都と日本の歴史・文化、さらには神様仏様に対する造詣が必要で、20代や30代でその域に達するには、オタクであれ仕事であれ、大学進学を目指す受験生並みに勉強しなければ難しい。
10冊以上の著書を持つ筆者が、このコンテンツを完成できたのは65歳の時。
それも分からないことがあれば、クルマで1時間もあれば調べに行ける場所に住んでいての話だ(笑)。
構成資産と個別ガイド
2024年5月現在、筆者は17件すべてに足を運んでいるが、唯一「西芳寺(苔寺)」のみ、個別レポートを用意していない。
「西芳寺(苔寺)」は、かつては誰でも参観できる観光寺院だったが、1977年からは一般の拝観を中止し、往復はがきによる事前申し込み制となり、拝観に際しては、写経などの宗教行事に参加する事が条件となっている。
しかも拝観料は1人3,000円。
住職の説法を聞いて、般若心経の唱和・写経を行い、写経に願いごとを書いたものを、祈りを込めて本尊に永久奉納してもらえるとのことだが、筆者はまだそれを欲するレベルには至っていない。
宗派が違うとは云え、同じ「延暦寺」発祥の世界遺産に認定された寺院でありながら、拝観料も取らず「他力本願」を唱える「西本願寺」とは、真逆のスタンスなのだから驚かされる。
筆者は世界遺産という制度は、ひとりでも多くの人にその価値を知ってもらうためのものだと思っている。
※宇治上神社・高山寺・西本願寺・下鴨神社・慈照寺(銀閣寺)については、近日中に個別記事を公開予定。