大坂在住で歴史に精通する、車中泊旅行歴25年の旅行家が、世界文化遺産「古都京都の文化財」をクルマでめぐりたい人に向けてまとめた、個別の歴史と見どころ及び駐車場情報をお届けしています。
「正真正銘のプロ」がお届けする、リアル車中泊旅行ガイド
この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の紹介です。
~ここから本編が始まります。~
世界文化遺産「古都京都の文化財」をまわれば、自分の中に古代から江戸時代にいたる日本の歴史が蘇る。

全部で17件ある「古都京都の文化財」
1994年に日本で5件目の世界遺産としてユネスコに登録された「古都京都の文化財」は、京都府京都市・宇治市、そして一部が滋賀県大津市にまたがる17の寺社仏閣で構成されている。
最初にその一覧と、筆者の取材歴を創建の古い順に紹介しよう。
名称 | 創建年代 | 取材回数 |
上賀茂神社 | 677年(飛鳥時代) | 2 |
下鴨神社 | 不詳 | 2 |
西芳寺(苔寺) | 731年(奈良時代) | 1(0) |
高山寺 | 774年(奈良時代) | 1 |
清水寺 | 778年(奈良時代) | 8 |
延暦寺 | 788年(奈良時代) | 4 |
東寺 | 796年(平安時代) | 3 |
醍醐寺 | 874年(平安時代) | 1 |
仁和寺 | 886年(平安時代) | 2 |
平等院 | 1052年(平安時代) | 2 |
宇治上神社 | 1060年(平安時代) | 1 |
天龍寺 | 1345年(室町時代) | 2 |
金閣寺 | 1397年(室町時代) | 2 |
龍安寺 | 1450年(室町時代) | 2 |
銀閣寺 | 1482年(室町時代) | 2 |
西本願寺 | 1591年(桃山時代) | 1 |
二条城 | 1603年(江戸時代) | 3 |
※リンク先は公式サイトではなく筆者の個別記事で、ベストテンはこの後に登場。
古い順に並べたのは、冒頭で書いたように、京都の「世界遺産」を時代別に追っていくことが、自分の中に日本の歴史を蘇らせることに通じるからだ。
実際にやれば、机上では計り知れない歴史のつながりを、肌で感じることができる。
ただし「西芳寺(苔寺)」だけは、個別記事が用意できていない。
「西芳寺(苔寺)」は、かつては誰でも拝観できる観光寺院だったが、1977年からは往復はがきによる事前申し込み制に変わり、写経などの宗教行事に参加することが条件となっている。
しかも拝観料は1人3,000円。
住職の説法を聞いて、般若心経の唱和・写経を行い、写経に願いごとを書いたものを、祈りを込めて本尊に永久奉納してもらえるとのことだが、筆者はまだそれを欲するレベルには至っていない。
旅人にとっての「古都京都の文化財」
1972年のユネスコ総会で採択され、1975年に発効した「世界遺産」は、世界の文化遺産や自然遺産を人類全体のための遺産として、損傷、破壊等の脅威から保護し保存していくために、国際的な協力及び援助の体制を確立することを目的とした条約だ。
つまりそこには、「観光地」としての価値は反映されていない。
だが筆者は、”「世界遺産」はひとりでも多くの人に、その存在価値を正しく理解してもらうための制度”でもあると思っている。
「世界遺産」が批准される前から、「観光地」として周辺に済む人々の生活と深く関わってきた名勝は数知れない。
しかし彼らが「生活の糧」となる名勝の、”世界遺産としての価値や存在意義”を、正しく世間に伝えてきたかは別問題だ。
その背景には、いかにも後付けしたような”ご利益”とか、今どき流行りの”パワースポット”といった世俗的な話を持ち上げて騒ぐ、マスコミやSNSの影響も大きい。
「世界遺産」に認定される名勝には、もっと客観的でリアルな根拠が存在する。
ゆえに筆者は、「世界遺産」を訪ねる際には、まずその推薦理由を調べる。
そこにはいわゆる観光ガイドに記された内容とは異質の、「本質的な魅力」が含まれていることが多いからだ。
ちなみに「古都京都の文化財」の、17ある構成要素に共通する主な推薦理由は、以下の2点に集約されている。
❶平安時代から江戸時代までの各時代を代表する日本の建築様式、庭園様式、文化的背景を今に伝えている。
❷その後の日本の建築、造園、都市計画の発展に大きな影響を及ぼしている。
確かに対象となった名勝は、いずれも芸術的価値が高く、建造物のうち38棟が国宝、160棟が重要文化財に指定されている。
また庭園では8件が特別名勝に、4件が名勝に名を連ねている。
惜しむらくは、創建当時の建造物が大火や兵火のため、相当部分を焼失していることだが、歴史の中で繰り返し再建が行われ、現在も日本文化の象徴としてその輝きを放ち続けている。
「古都京都の文化財」ベストテン
筆者は生業上、これまで17件すべての「古都京都の文化財」に足を運んできたが、研究者でもそれが仕事でもない旅人が、全部を周る必要はないと思う。
ゆえに以下には、”京都が好きならここへは行ってみたら”という軽めのノリで、お勧め順に並べている。
それぞれの個別記事には、歴史と由緒、見どころに加えて、駐車場に関する詳細情報も記しているので、ぜひ参考にしてみていただきたい。
京都の世界遺産 お勧めランキング
Ps
少しネットで検索すれば分かることだが…
「京都の世界遺産ガイド」と題打っておきながら、その個別理由に前述した内容だけを記載しているサイトがたくさんある。
ゆえにその書き手が、本当に現地に足を運んでいるかどうかは疑わしい。
上記以外の内容で、政府やユネスコが何を評価したのかを見極めるには、それなりに幅広い京都と日本の歴史・文化、さらには神様仏様に対する知識が必要で、20代や30代でその域に達するには、オタクであれ仕事であれ、大学進学を目指す受験生並みに勉強しなければ難しい。
10冊以上の著書を持つ筆者が、このコンテンツを完成できたのは65歳の時。
それも分からないことがあれば、クルマで1時間もあれば調べに行ける場所に住んでいての話だ(笑)。
クルマでめぐりたい理由
修学旅行をきっかけに、”効率”を最優先する旅行スタイルに慣れ親しんできだ日本人の多くは、京都であれば「東山」とか「北山」あるいは「洛南」のように、立ち寄り先を「エリア」で選ぶのが”当たり前”だと思っている。
そのため大半の旅行ガイドも、そのニーズに合わせて編集されているわけだが、「世界遺産」の選考には、そんなことはいっさい考慮されていない。

出典:旅Pocket
ゆえに上のマップのように、「世界遺産」は京都市内のあちこちに点在しており、これを公共交通機関で訪ねて周ろうと思えば、時間もかかるし骨も折れる。
京都の世界遺産の中で、万民に一番人気が高いのは、たぶん「清水寺」だと思う。
理由は、唯一「町歩き」に組み込める「世界遺産」だからだ。
祇園からスタートして「八坂神社」を抜け、「高台寺」を観て「二年坂」「産寧坂」を歩けば、両脇にびっしり土産屋が並んだ登坂の先に「清水寺」が待っている。
しかし、その他の「世界遺産」はそうはいかない。
特に「高山寺」に至っては、市バスに揺られて曲がりくねった「周山街道」を進み、さらに写真の何もない裏参道をひたすら登って行くことになる(笑)。
だが逆に、その近くには広くて車中泊も可能な、無料の駐車場が用意されている。
これは「車中泊で旅する京都」の記事にも書いた話だが、京都をマイカーで旅することは悪いことではない。
うちにも「障害者手帳」を持つ家族がいるが、クルマがなければ京都観光に行くことはもちろん、夢見ることすら許されない。
そのうえ今は、増え続けるインバウンドと人手不足のおかげで、ビジネスホテルでさえ1泊1~2万円が相場となっており、もはや庶民には”日本人が慣れ親しんだ京都の旅”が、高嶺の花になりつつある。
であれば、”クルマが使えないインバウンドとは、違う京都の旅”を選べばいい。
「古都京都の文化財」をめぐるのは、そのひとつの分かりやすい選択肢だし、筆者がよくやる「大河ドラマゆかりの地めぐり」も同じコンテンツになる。
もしそういうコンテンツが主流になれば、今度は「京都へは電車で」ではなく、「京都へはクルマで」、いやもっと云うと「京都へは泊まれるクルマで」という日が来るかもしれない(笑)。
それはいずれ、奈良・高山・金沢・鎌倉といった町にも起こり得る話だろう。
だったら、これでいいんじゃない(笑)。
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