車中泊旅行歴25年のクルマ旅専門家がまとめた、2023年11月現在の京都・舞鶴の見どころと車中泊事情に関する解説です。
「正真正銘のプロ」がお届けする、リアル車中泊旅行ガイド
この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の紹介です。
~ここから本編が始まります。~
日本の”鎮守府”と呼ばれた「舞鶴」は、戦争の功罪を再認識できる町。
舞鶴の筆者の歴訪記録
※記録が残る2008年以降の取材日と訪問回数をご紹介。
2010.02.20
2011.06.30
2013.05.06
2016.03.22
2023.11.03
※「舞鶴」での現地調査は2023年11月が最新です。
舞鶴 車中泊旅行ガイド

「舞鶴」のロケーション
「舞鶴」の町は、京都府と福井県の県境がある大浦半島西側の、深く入り組んだ湾に面したところにある。
西は日本三景「天橋立」を擁する「丹後半島」、東は「鯖街道」で知られる「若狭湾」に挟まれた舞鶴は、日本海の絶景や幸を欲する京阪神在住の旅人にとっては、正直なところ、さほど魅力を感じる場所ではないと思う。
しかし、筆者が独自にセレクトしている「日本クルマ旅先100選」のテーマ「ディスカバー・ジャパン~ 日本を発見し、自分を再発見する」という視点で見ると、「舞鶴」の町には欠かすことのできないコンテンツがある。
“鎮守府”とは

出典:舞鶴市
近代国家として、西欧列強と渡り合うための海防力を備えることが急務であった明治政府は、1901年(明治34年)、舞鶴に”鎮守府”を開庁した。
”鎮守府”は軍港に置かれた海軍拠点のこと。
政府は国家プロジェクトにより、天然の良港を持つ、「横須賀」「呉」「佐世保」「舞鶴」に軍港を築いて”鎮守府”を設置し、各海軍区の防備を図るとともに、人と先端技術を集積して、艦艇の建造・修理、兵器の製造などにあたらせた。
また併せて、水道、鉄道、さらには病院などのインフラも整備したため、それから100年が過ぎた現在でも、現役で稼働している施設は多く、現在の舞鶴には海上自衛隊の基地と総監部が置かれている。
なおその詳細は、2015年に文化庁が認定を開始した「日本遺産」に、以下の内容でまとめられている。
鎮守府 横須賀・呉・佐世保・舞鶴
~日本近代化の躍動を体感できるまち~

さて。
筆者はこれまでに「横須賀」「呉」「佐世保」にも足を運んでおり、4つの鎮守府を隈なく見てきたが、「舞鶴」は他の3つにはない観点を有している。
それは「終戦」…
太平洋戦争の終焉後、全国で10の港が引揚者の受け入れに指定されたが、舞鶴港は、終戦から13年もの長きにわたり、旧ソ連のシベリアや満州から約66万人もの帰国者を迎えた「引揚港」として、大きな役割を果たしてきた。
♪母は来ました、今日も来た♪
で、始まるこの名曲を覚えている人も多いだろう。
1988年(昭和63年)に開館した「舞鶴引揚記念館」には、当時の史実を次世代に伝えるための貴重な記録と資料が保管されており、2015年(平成27年)には「ユネスコ世界記憶遺産」にも登録されている。
とはいえ…
舞鶴に来て、かくも勇ましい軍用艦を見れば、再び世界で戦火が広がりつつある現在は、思いもよらない侵略から日本を守るために、その存在価値を認識せざるを得ないのが現実だ。
しかし反面、「引揚記念館」に展示されたリアルで悲惨なシベリア抑留の実態を見れば、戦争が国民にもたらす苦しみと悲しみについても深く考えざるを得ない。
その意味から云うと、”舞鶴は今だからこそ行ってみるべきべき旅先”とも思える。
「舞鶴」の見どころ
海に面している舞鶴には、ご覧の「竜宮浜」ような美しい海水浴場もあるのだが、ここではあえて、”鎮守府”に関連性のあるところをセレクトした。
なぜなら日本海の美しいビーチは、両隣に広がる丹後と小浜の海のほうが、たっぷりと楽しむことができる。
五老スカイタワー
筆者が舞鶴のお勧めスポットの筆頭に挙げるのは、この「五郎スカイタワー」だ。
舞鶴のほぼ中心に位置し、標高301メートルの五老岳の頂上にそびえる高さ50メートルの展望塔で、最上階から舞鶴湾をパノラマで一望することができる。
その景観は「近畿百景第1位」に選ばれているが、明治政府がこの天然の要害を見て惚れ込み、舞鶴を”鎮守府”にすると決断したのも頷ける。
五郎スカイタワー
☎ 0773-66-2582
大人300円
4月〜11月 平日 9時〜19時/土日祝 9時〜21時(12月〜3月は全日17時閉館)
※入館は閉館の30分前まで
年中無休
無料駐車場あり
軍港めぐりクルーズ
今は4つの”鎮守府”があった町では、どこも船による「軍港めぐり」を行っている。
だが、そのロケーションを高台から眺望した後、今度は海上で軍用艦やドッグを間近に見られるのは、舞鶴だけの趣向になる。
ゆえに、できればこの順番での体験をお勧めするが、ハイシーズンのいい時間帯は団体ツアーに抑えられてしまう可能性があるので、事前のネット予約が有効だ。
なお写真が撮りたい人は、室内の座席ではなく、後部の屋外デッキでの立見がいい。
所要時間は約35分で、料金はおとな1500円(税込)。運行は1日3~5便で、曜日と季節によって異なる。
乗船券販売所は、赤れんがパーク2号棟内。クルマは無料の赤れんがパーク駐車場が利用できる。
運行時間・予約等については、以下の公式サイトで確認を。
舞鶴赤れんがパーク
ややこしいのだが、「舞鶴赤れんがパーク」と「舞鶴赤れんが博物館」は、同じような赤煉瓦の建造物が立ち並ぶ、同一敷地内にある。
つまり「軍港めぐり」をする人も、「赤れんが博物館」に行きたい人も、お土産を買いたい人もみんな、とりあえずクルマでは「舞鶴赤れんがパーク」を目指せば間違いない(笑)。
この東舞鶴地区に残る赤れんが建築物は、もともと海軍の軍用品保管庫で、現在残る12棟のうち8棟が重要文化財に指定され、カフェやショップ、博物館、イベント会場などに利用されている。
それにしても海軍の食事といえば、どこへいってもカレーが鉄板(笑)。
このボードに書かれた通り、長い艦上生活で曜日感覚を失わないよう、週末にカレーライスを食べた話も有名だが、海軍がカレーを食べるようになったのは、明治時代に死にも至る脚気(かっけ)の病に悩まされる兵士が多く、その対策として英国を参考に食事改革に導入されたのが始まりとされている。
そんなわけで、「舞鶴赤れんがパーク」のお土産売り場には、実に多くの種類のレトルトカレーが並んでいた(笑)。
ついでに東郷さんにも触れておこう。
歴史ファンならよくご存知だと思うが、日露戦争の日本海海戦で、「戦艦三笠」の艦長としてバルチック艦隊に勝利した「東郷平八郎」は、舞鶴鎮守府の初代司令官で、この町で暮らしていた時期がある。

出典:NHK
司馬遼太郎原作で、2009年から2011年まで足掛け3年にわたって年末に放送された、NHKのスペシャルドラマ「坂の上の雲」では「渡哲也」が好演していたが、実にカッコよかった(笑)。
なお「赤れんが博物館」では、メソポタミアをはじめとする古代文明の遺跡や万里の長城など世界の有名建築物の煉瓦のほか、日本の煉瓦建築物なども紹介している。
いずれも見学は無料(内部は9時~17時)。
舞鶴引揚記念館
そして最後が、前述した「舞鶴引揚記念館」になる。
記念館に収蔵されている約16,000点の資料のうち、第二次世界大戦後の引き揚げや、シベリアから家族に送った手紙や抑留中に記した日誌など、当時の史実を如実に伝える570点が、『舞鶴への生還 1945~1956 シベリア抑留等日本人の本国への引き揚げの記録』として、2015年にユネスコ記憶遺産に登録されている。
なお「舞鶴引揚記念館」は、開館30周年を迎えた2018年(平成30年)4月に、グランドオープンを果たしている。
入館料はおとな400円だが、600円の「赤れんが博物館」との共通券もあり、筆者はそちらを利用した。
開館時間は9時から17時で、受付は16時30分が最終になる。
休館は第3木曜日(8月と祝日を除く)と年末年始(12/29~1/1)。
さらなる詳細は、以下の公式サイトで。
こちらの写真は、「舞鶴引揚公園」から約2.5キロ離れたところにある、通称「引揚桟橋」こと平桟橋(たいらさんばし)。
終戦当時に引揚船が着岸した桟橋で、その歴史を残すために平成6年に復元され、記念碑も立てられている。
ちょっと分かりにくいので、ここはマップを添付しておこう。
「舞鶴」の車中泊事情
舞鶴の観光は1日あれば足りるので、車中泊は道の駅を利用した「前泊」か「後泊」がいいと思う。
幸いにも「舞鶴赤れんがパーク」から約8.5キロの町中に、「道の駅 舞鶴港とれとれセンター」がある。
場内には魚介類が豊富に揃う観光市場があるので、そちらがお目当ての人は少し早めに到着しよう。
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舞鶴&丹後半島 車中泊旅行ガイド
※以下の記事は広告・外部リンクではなく、すべてオリジナルの書き下ろしです。
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