「クルマ旅専門家」・稲垣朝則が、10年以上かけてめぐってきた全国の温泉地を、「車中泊旅行者の目線」から再評価。車中泊事情や温泉情緒、さらに観光・グルメにいたる「各温泉地の魅力」を、主観を交えてご紹介します。
実態は同じ。旅行者に混乱を招いただけの失敗宣伝策
乗鞍高原のお偉いさんは、ネーミングの意味が理解できていないらしい。
「乗鞍高原温泉」「のりくら温泉」さらに「のりくら温泉郷」… 現在、乗鞍高原では温泉地に対して、この3つのワードが混在して使われている。
思うに原因は、「漢字が難しすぎて読めない!」と宣ったどなたかの「鶴の一声」にあるのだろうが、世間知らずにもホドがある(笑)。
観光情報をネットで検索するのが当たり前の時代に、名称統一すらできていないというのは、旅行者にとって「不親切かつ迷惑行為」であることを認識すべきだ。責任者は、もっと職場の若い人の声に耳を傾けたほうがいい。
「のりくら温泉」とは「乗鞍高原温泉」のこと
結論から云うと「のりくら温泉」と「乗鞍高原温泉」はまったく同じ。
ウィキペディアには、『2005年前半頃まで「乗鞍高原温泉」をそのまま宣伝で用いていたが、現在は温泉の宣伝に「のりくら温泉」を用いている。』とあるが、2019年現在でも「湯けむり館」は「乗鞍高原温泉」の表記を使用しており、それは周知徹底されていない。
それはそうだろう。
筆者が「湯けむり館」のスタッフだったら、誰も検索しない「ひらがなの【のりくら温泉】」より、「乗鞍高原 温泉」でも検索エンジンにヒットする「乗鞍高原温泉」をすべての広告媒体に使う。こんなのはSEOの基本の「キ」だ。
白骨温泉の上流部に湧く、白濁の源泉
最初にミソをつけてしまったが、せっかくなので、乗鞍高原温泉のお湯について少しふれよう。
乗鞍高原温泉は、1976年(昭和57年) に湯川の上流で自然湧出のまま渓谷に流れていた温泉を、乗鞍高原に引き湯したのが始まりとされ、「湯川源泉」という名前はそこからきている。
泉質は酸性硫化水素泉で、硫黄分が空気に触れると固形化して白濁するため、湯の花ができる。またpH3.2と酸性が強いため、レジオネラ菌は生息できない。
湯川源泉は白骨温泉の源泉地の上流にあたるため、両者のお湯はよく似ている。ということは、ここでも「3日入れば3年風邪をひかない」かも(笑)。
では、「のりくら温泉郷」ってのは何なんだ?
これがまた、冒頭のパンフレットに書かれてないから呆れてしまう(笑)。
のりくら温泉郷とは…
以下はウィキペディアからの転用。
のりくら温泉郷は、長野県松本市安曇の乗鞍高原一帯にある温泉の総称である。源泉地によって以下の4つの温泉に分類される。
●のりくら温泉(乗鞍高原温泉)
源泉は北西方向にある湯川源泉。泉質は酸性硫化水素泉で、白濁色。
●すずらん温泉
源泉は乗鞍高原内の鈴蘭地区。泉質は単純泉。2001年に湧出。
●安曇乗鞍温泉
休暇村乗鞍高原が引湯しており、源泉は付近の地下約1300m。泉質は炭酸水素塩温泉。2003年に湧出。
●わさび沢温泉
源泉は鈴蘭地区西方のわさび沢。泉質はマグネシウム-カルシウム-炭酸水素冷鉱泉。2004年に引湯。
この解説は素晴らしく明快で、分かりやすい。
少し追記すると「安曇乗鞍温泉」は休暇村の自家源泉、「わさび沢温泉」にいたっては2018年に供給公社が解散し、現在は供給自体がストップしている。
温泉めぐり
ということは、温泉めぐりがしたい場合は、標高の低い順に❶のりくら温泉(乗鞍高原温泉)❷すずらん温泉❸安曇乗鞍温泉(休暇村乗鞍高原)と回れば、それぞれ異なるお湯が味わえる。
残念ながら筆者は、❷すずらん温泉と❸安曇乗鞍温泉(休暇村乗鞍高原)のお湯には入ったことがないので何ともいえないが、いずれも無色透明でほぼ中性のお湯のようだ。
であれば、営業時間が長くて日帰り客が気兼ねなく入れる市営の「湯けむり館」と、休暇村乗鞍高原が管理する日帰り温泉「安曇乗鞍温泉館 天峰の湯」に入れば、とりあえず気が済む。
風情の代わりにマッサージチェアがあるので、ウォーキングで疲れたカラダをほぐすには案外いい選択かもしれない(笑)。
なお「すずらん温泉」に関しては、こちらのサイトに引湯しているペンションなどの詳細が記されているが、日帰り入浴が可能かどうかまではわからない。
それから透けて見えるのは、日帰り客に対する宿泊施設側の「期待度」が、その程度でしかないということ。
正直、これでは温泉めぐりをやる気にならない(笑)。