この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の中のひとつです。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。

「江ノ島」は、中高年も楽しめる湘南のランドマークスポット。
江ノ島の車中泊事情と観光の秘訣【目次】
1.江ノ島の概要

葛飾北斎『富嶽三十六景』 相州江の島
湘南といえば、今でこそサーフィンのメッカというイメージが強いが、江戸時代から著名な浮世絵師たちに描かれてきたその風光明媚な光景は、おおらかでどことなくハイカラな文化を育んできた。
神奈川県指定の史跡・名勝、日本百景に選ばれている「江ノ島」は、その「ランドマーク」的な存在で、島内に芸能上達の神様とされる弁財天の像を祀った「江島神社」があることでも知られている。
その弁財天の加護を受け、彗星のごとく登場したのが、地元茅ヶ崎出身の桑田佳祐率いるサザンオールスターズだ。
1978年に発表されたデビュー曲の「勝手にシンドバッド」の歌詞には、「江ノ島」の名前が刻まれている。
また「江ノ島」の海域は、1964年に開催された東京オリンピックのヨットレースの競技会場に使われ、東京2020オリンピックでも、再びセーリングの競技会場として利用される見込みだ。
ガイドブックやインターネットでは、若者をターゲットにした水族館やスパのPRが目立つだけに、中高年は「どちらかといえば避けて通りたい場所」と勘違いしそうになるが、「江ノ島」は宗教的にもスポーツ的にも、「レガシー」と呼ぶに値する島だと思う。
なお、住民の生活権を確保するため、22時~5時の間「江の島大橋」は閉鎖される。一時は夜間の通行も黙認されていたが、ポケモンGOの発売以降、通行禁止が復活した。
2.江ノ島のお勧め観光スポット
「江ノ島」には島内を一周できる道はなく、「江の島大橋」を渡って幾つかある有料駐車場のどこかにクルマを停め、マップの赤線を歩いて往復するか、先端の稚児ヶ淵から「遊覧船べんてん丸」で海の上を通って戻ることになる。
2-1.江の島シーキャンドル
「江ノ島」のシンボルとも呼べるのが、19世紀のイギリス式庭園「サムエル ・コッキング苑」の敷地に建つ、江の島シーキャンドル(展望灯台)。
敷地内にはカフェテラスがあり、そこからでも湘南海岸が見渡せる。
2-1-1.江の島エスカー
江島神社入口の石段上り口から、江の島の頂上に至る4連の「登り専用エスカレーター」で、徒歩なら20分かかる坂道を、わずか4分で送り届けてくれる。
また3区間に分かれているので、エスカレーターを乗り継ぐ際に、江島神社の辺津宮や中津宮に立ち寄ることができる利点もある。
江の島シーキャンドル
9時~20時 (最終入場 19時30分)
江の島エスカー:360円
江の島シーキャンドル: 500円
江の島サムエル・コッキング苑:200円
江の島シーキャンドルセット券:800円
※江の島サムエル・コッキング苑 + 江の島シーキャンドル + 江の島エスカー
なお、この次に紹介する「岩屋」にも行くつもりなら、「江の島エスカー・江の島サムエル・コッキング苑・江の島シーキャンドル ・江の島岩屋」が、1日に何度でも利用できる「江の島1dayパスポート「eno=pass」大人 1,000円」が一番お得になる。
2-2.「岩屋」
まわりを海蝕崖に囲まれた海蝕洞「岩屋」は、古来より「江の島信仰」発祥の地とされ、修行の場としての「江の島」を特色づけてきた貴重な遺構だ。
入場料500円を支払うと、入口でこのローソク・ランタンが手渡され、仄かな明かりを頼りに奥へと進む。
奥行きの深いこの洞窟の中で、奈良時代には役小角(えんのおずぬ)が、平安時代には空海、円仁が、そして鎌倉時代には日蓮、一遍が修行に励んだと伝えられており、1182年(養和2年)には、源頼朝が奥州藤原秀衡征伐を祈願したともされる。
写真は奥行152メートルで、富士山の氷穴に通じているといわれる第1岩屋だが、「江ノ島」にはもうひとつ、龍神伝説の地といわれる奥行き56メートルの第2岩屋もある。
2-3.稚児ヶ淵
「稚児ヶ淵」は、「岩屋」がある断崖の真下にある潮溜まりで、夕刻に富士山の向こうに沈む夕日の美しさから、「かながわの景勝50選」にも選ばれている。
磯遊びだけでなく、磯釣りの名所としても知られ、休日には多くのファミリーと釣り人で賑わうようだ。
2-3-1.遊覧船べんてん丸
「稚児ヶ淵」の先端から発着しているのが「遊覧船べんてん丸」。江ノ島の駐車場までは5.6分の短い船旅だが、料金は大人400円とリーズナブルなので、帰りはこの船で戻るほうが、楽なうえに風情まで楽しめるとあってお勧めだ。
天候や海況が安定していれば、季節や曜日を問わず10時30分〜16時の間に、およそ15分間隔で運行される。
2-4.江ノ島ヨットハーバー展望デッキ
「江ノ島ヨットハーバー」は、ヨットやウインドサーフィンが浮かぶ湘南海岸の光景を見ながら、釣りが楽しめるアウトドアなスポットで、写真の展望デッキには誰でも無料で上がることができる。
2-5.しらす問屋 とびっちょ
江ノ島に入ってすぐの通りには、数件の食事処が軒を並べているが、その中で他とは一線を画す人気店が「しらす問屋 とびっちょ」の本店だ。
名物は「しらす丼」。「しらす」はイワシの稚魚で、江ノ島や湘南地方では、塩ゆでした「しらす」をご飯の上にどっさり乗せた丼が、元々のソウルフードのようだ。
もちろんメニューは盛りだくさん。「江ノ島」にはこの店を目当てに訪れる人も多いので、行くなら事前に予約をしておこう。
とびっちょ江ノ島本店
☎0466-23-0041
11時~21時 (L.O 20時)・無休
釜揚げしらす丼は1080円
専用の無料駐車場はないのだが、ラストオーダーが20時で、車中泊でも夕食に食べられるのは嬉しいね。
またあまりの混雑ぶりに並ぶ気がしない人には、名物の「釜揚げしらす」をテイクアウトすることもできる。
ご飯を炊ける用意があるなら、自前で「釜揚げしらす丼」を作ることはそれほど難しい話じゃない。
3.江ノ島の車中泊事情と車中泊スポット
江ノ島というより、これは湘南海岸全体に当てはまる話だが、まず一帯には道の駅はない。
茅ヶ崎に新しい道の駅ができる計画があるのだが、当初計画していた2022年のオープンは、コロナ禍の影響で2025年に変更することが確定した。
茅ヶ崎の道の駅の進捗状況は、以下のサイトで確認できる。

ということで、当面は従来どおり「江ノ島」の中の有料駐車場が、湘南海岸で好適な車中泊スポットになる。
3-1.江ノ島の車中泊事情
「江ノ島」の中には、「江の島なぎさ駐車場」「藤沢市観光協会江の島駐車場」そして「湘南港臨港道路附属駐車場」の3つの駐車場がある。
個々の良し悪しはこの後詳しく記載するが、問題はお風呂だろう。
島内には「江の島アイランドスパ」があるのだが、ここはリゾート施設なので、旅の疲れを癒やす温泉とは段違いの価格設定になっている。
ただし、2021年4月現在は「富士山の見える江の島天然温泉プラン」を実施しており、90分間1250円で利用することができる。
江の島アイランドスパ オフィシャルサイト
最近はスーパー銭湯でも、ほとんど1000円近い入浴料を取られることを考えれば、多少割高程度の1250円なら「あり」とも思えるが、人数が多ければ温泉代はバカにならない。ゆえに、「江ノ島大橋」を渡る前に入浴を済ませてくるほうがいいかもしれない。
ちなみに「江ノ島」から最寄りの「稲村ヶ崎温泉」は1500円だが、約7キロ・クルマで20分ほどのところにある「湯乃市 藤沢柄沢店」なら、平日は730円(土日祝は830円)で利用できる。
湯乃市 藤沢柄沢店 オフィシャルサイト
3-2.江ノ島の車中泊スポット

出典:江島神社
このマップの①から③が、江ノ島の中にある駐車場になる。
3-2-1.江の島なぎさ駐車場
江ノ島最大の駐車台数327台を誇る①の「江の島なぎさ駐車場」は、「江島神社」の参道や仲見世通りに一番近い駐車場だが、2階建てになっているため、高さ2.1メートルまでの車両しか入庫できない。
料金は1日最大料金2,000円だが、車中泊をする場合は追加で1,000円が徴収され、都合3,000円になる。
城内にトイレはないが、近くに公衆トイレがある。
3-2-2.藤沢市観光協会江の島駐車場
②の「藤沢市観光協会江の島駐車場」は、1時間400円からで最大料金の設定がない。大型車が入庫できるとはいえ、普通車でも8時間で3000円オーバーは、他の2つに対してコスパが悪く、車中泊にお勧めとは云い難い。
3-2-3.湘南港臨港道路附属駐車場
江ノ島で一番奥の海寄りのある③「湘南港臨港道路附属駐車場」は、1日最大料金1,500円だが、日付を跨ぐと追加料金が発生するため、やはり合計で3,000円にはなる。
ただし、ここは料金精算機の屋根が出っ張っていないのでハイルーフ車も入庫でき、駐車場内にトイレもあって、江ノ島の3つの駐車場の中ではもっとも車中泊に適している。
