「クルマ旅専門家」・稲垣朝則が、10年以上かけてめぐってきた全国の温泉地を、「車中泊旅行者の目線」から再評価。車中泊事情や温泉情緒、さらに観光・グルメにいたる「各温泉地の魅力」を、主観を交えてご紹介します。
自由奔放な車中泊の旅人は、紅葉狩りと温泉旅を同時に楽しもうとは思わない。
「関西有数の紅葉の名所」と評される瑞宝寺公園は、秋には約2500本ものカエデが色づき、秀吉が「1日中見ていても飽きない美しさ」と称したことから、「日暮らしの庭」とも呼ばれている。
たしかにそれは、すぐに行ける「神戸っ子」にはいい情報だろう。
だが筆者が見たかぎり、「この程度の紅葉」なら、わざわざ有馬温泉まで来なくても、誰もがもっと身近な場所で見られると思う。
有馬温泉を紹介する大半のブロガーやライター、さらに加えて役場や観光協会などの職員は、「有馬温泉のこと」しかアタマにない。
ゆえに往々にして「大袈裟」とも思える紹介が行われるのだが、経験豊かな中高年の旅人の目と口は、明らかに彼らよりも肥えている。
文章はうまく書けなくても、「蕎麦」や「紅葉」のようなポピュラーなものに対する「ものさし」は鋭く、過去に適当な案内に載せられて何度も残念な思いをしているに違いない(笑)。
そうなると、紅葉以外のシーズンの瑞宝寺公園の魅力は何か? ということに興味が移る。
それがここにはないわけじゃない。
写真の山門は、秀吉が隠居後の住まいと定めていた京都の伏見桃山城から移築されたもので、神戸市によって現在も保存修復されている。
また園内には、秀吉が愛用したと伝わる石の碁盤も残されている。
だがそれは歴女・歴男が喜ぶマニアックな遺構で、歴史にさほど興味のない一般の観光客にはどうだろう。
筆者が瑞宝寺公園を「車中泊の旅人」に勧めない理由は、もうひとつある。
それは場所だ。瑞宝寺公園は共同浴場「金の湯」から約1キロ離れた高台にあり、中高年はクルマでアクセスしたくなる。
しかし駐車料金のことを考えれば、クルマを出すのは得策とは思えない。
ちなみに歩いて行けば、休憩無しで約15分。普通はここで時間と体力を必要以上に消費することになると思う。
なお、筆者は念の為、グリーンシーズンにも瑞宝寺公園を訪ねている。
それでも結論は、たまたま訪れた時に紅葉していれば「行ってもいい」だ。それ以外の季節は、別の「見どころ」に足を運ばれることをお勧めする。
車中泊ならではといえる、有馬の愉しみ方をご紹介。