この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の中のひとつです。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。

海あり山あり温泉あり。まさにクルマ旅のパラダイス
我々が「武蔵 」とか「常陸」と云われても、さっぱりどこのことか分からないのと同じで、近畿以外の人々にとって「但馬」は、馴染みの薄いところだと思う。
「但馬」とは、飛鳥時代から明治時代初期まで、日本の地理的区分の基本単位として使われていた「令制国」の1つで、現在の兵庫県北部・日本海側に位置する豊岡市・養父(やぶ)市・朝来(あさご)市、香美(かみ)町、新温泉町の3市2町からなるエリアにあたる。
近畿地方とはいえ、鳥取県との県境が近い但馬には雪が積り、神鍋高原やハチ北高原には本格的なゲレンデがある。
また夏は日本海の美しい海を求めて、竹野や浜坂のビーチに多くの若者と家族連れがやってくる。もちろん、30年前は筆者もその中のひとりだった。
そして、秋は有名な「竹田城」が雲海に浮かぶ。
さすがに今はスポーツまではやらないが、それでも年に何度かは但馬に出かける。多種多様なコンテンツに恵まれたこの地域には、年相応の楽しみ方があり、齢を重ねたからといって飽きることはない。
ここでは、そんな但馬の魅力をダイジェストで紹介しよう。
車中泊に適した2つの温泉地
兵庫県は和歌山県と双璧をなす「近畿の温泉県」で、但馬には「城崎温泉」と「湯村温泉」という2つの有名な温泉地がある。
ただし、両者は楽しみ方がちょっと違い、極論すると城崎は若者、湯村は中高年にフィットするといえそうだ。
グルメは、肉も海鮮も一級品
俗に云う「神戸ビーフ」とは、この但馬牛のお肉のこと。
神戸のみならず、霜降りの高級和牛で知られる、松阪牛や近江牛などの「ブランド牛」も、ルーツを辿れば全てが但馬牛に辿りつくという。
但馬では、そのオリジナルが手に入る。もちろんステーキハウスで食べることもできるが、キャンパーなら自ら高級食材を美味しく焼いてみたいものだ。
但馬海岸に限らず、鳥取県から新潟県に至る日本海岸の漁村では、11月になると様々な色のタグを足につけた地元産の松葉ガニが、直売所や観光市場にズラリと並ぶ。
もともとは丹後の間人(たいざ)で始まった「ブランド政策」が、東西の漁港に波及しただけで、その違いはほとんど分からない(笑)。
古い町並みからジオスポットまで、変化に富んだ観光スポット
「但馬の小京都」と呼ばれ、城下町として400年近い歴史を持つ出石(いずし)には、武家の時代の面影を色濃く残す家老屋敷や町家が残り、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。
また有名な「皿そば」の始まりは、信州上田藩を治めていた仙石氏が、国替え時にそば職人を連れてきたことにあるといわれ、現在も市内には約50軒の蕎麦屋が軒を連ねる。
「玄武洞」は約160万年前に、火山活動で流れ出した溶岩が冷えて生まれた、玄武岩の採掘場だったが、美しい景観と地質的な価値を持つことから、その坑道跡が公園整備され、国の「天然記念物」になっているほか、現在は「山陰海岸ジオパーク」の「ジオスポット」にも名を連ねる。
ジオパークとは、「地球・大地(ジオ:Geo)」と「公園(パーク:Park)」を組み合わせた造語で、「山陰海岸ジオパーク」は、世界遺産と同じような査定基準を持つ「ユネスコ世界ジオパーク」に認定されている。
最後は「日本風景街道」に選定された、全長67キロに及ぶ海岸線の絶景ドライブコース「但馬漁火ライン」をご紹介。
但馬漁火ラインきっての展望を誇る御待(おまち)岬。手前には城崎マリンワールド、海上には竜宮城のような後ヶ島が見える。
但馬 車中泊旅行ガイド

