この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の紹介です。

旅を思い出深いものにするには「味付け」が必要。
いくら世界遺産と云っても、寺社仏閣ばかり観ていたのでは飽きてしまう。そこで、日光周辺のお勧めスポットとグルメをご紹介。
日光市内
OLD&NEWな国際観光都市の面影
明治維新の余波を受けた日光は、これまでの参詣地から、開かれた観光地へと劇的な変化を遂げる。
明治5年に女人禁制、7年には外国人の旅行規制が解除され、23年に鉄道が日光まで開通すると、多くの外国人が涼を求めて東京から日光に集まってきた。
その当時の貴重な記録を現在に伝えているのが、1873年(明治6年)6月に開業した、現存する日本最古の西洋式リゾートホテルの「日光金谷ホテル☎028-854-0001」で、館内は宿泊者以外でも無料で見学できる。
宿泊者名簿には、誰もが知る著名人の名前も残る。
日光金谷ホテル オフィシャルサイト
地域性が映り込んだ、ソウルフード
日光名物「湯波」。「湯葉」との違いにご注目。
「ゆば」は加熱した豆乳の表面にできる薄皮のこと。
歴史は古く、約1200年前に天台宗の開祖・最澄が仏教ともに中国から持ち帰ったとされ、修行僧の精進料理として日本の信仰地に広まった。
江戸時代以降の日光では、東照宮参拝者の食事に用いられたことから、特産品として定着し、今日にいたっている。
ちなみに、京都では「湯葉」、日光では「湯波」と書くが、違いはその引き上げ方にある。
京都では「ゆば」を端から折らずに引き上げるが、日光では中央から二つ折りにして引き上げる。その時の形が波のように見えることから「湯波」となった。一般的に京都の湯葉より厚みがあって、大豆の味も濃いといわれる。
たまり漬け
たまり漬とは、味噌を作る時にでる上澄み(たまり)に、野菜を漬けた漬物のこと。一般家庭で作られてきたこの地方独特の漬物を、最初に商品化したのが創業400年を誇るたまり漬の元祖「上澤梅太郎商店☎0288-21-0002」だ。
寒さが厳しい栃木県民の嗜好に則した長期熟成の「たまり漬」は、塩分濃度が極めて高く、それを知らずにガブッと行くと、思わず顔をしかめることに(笑)。
実は、地元ではそれを和らげるため薄く刻み、ごはんのおかずや「お茶うけ」として食している。
写真は、その「上澤梅太郎商店」の人気商品、たまり漬けセット「おうちたまてばこ(税込み1080円)」で、最初から刻んで食べやすくしてある、土産屋らしいアイデア商品だと思う。
上澤梅太郎商店 オフィシャルサイト
鬼怒川温泉
SL大樹の復活で、「通過点」から「立ち寄り場所」へ
かつては滝温泉と呼ばれ、日光詣帰りの諸大名や僧侶から愛された温泉地だったが、大型リゾートホテルと世俗的なレジャー施設頼みの温泉地から、今なお脱却できず、車中泊の旅人には塩原温泉への「通過点」というイメージが強かった。
しかし2017年、51年ぶりに復活した東武鉄道のSL大樹は、その既成概念に風穴をあけるきっかけになりそうだ。
SL大樹
日光市の下今市駅から鬼怒川温泉駅までの12.4キロを約35分で運行。運行は土日が中心で1日3往復。大人片道料金は1,000円。帰りは在来の列車で戻ればいい。
SL大樹 オフィシャルサイト
相田みつを心の美術館
短くてわかりやすい言葉を独特の書体で記す作風を確立し、ミリオンセラーの詩集「にんげんだもの」で知られる、栃木県生まれの詩人、そして書家でもある「相田みつを」の作品を約60点展示している、小さなミュージアム。
「相田みつを心の美術館」は、高級料亭の雰囲気が漂う「花茶寮(はなさりょう)」の中にある。生前「相田みつを」は、鬼怒川温泉の「松や」を定宿としており、その女将との縁が美術館開設のきっかけになったとのこと。
もちろん食事をしなくても、美術館のみの見学が可能だ。
美術館としては、有楽町にある東京国際フォーラムのほうが有名だが、ここでも日めくりになった詩集は買える。
☎028-876-8736 料亭・花茶寮内
10時~17時(受付最終16時30分)・水曜定休
大人400円
龍王峡(りゅうおうきょう)
鬼怒川温泉と川治温泉の中間にある「龍王峡」は、奇岩と鬼怒川と滝の三者が描いた、自然の造形美が約3キロにわたって続く名勝で、中でもこの「むささび橋から眺める光景」が有名だ。
車中泊もできる龍王峡無料駐車場

宇都宮
宇都宮餃子
東北自動車道で東京方面からアクセスすると、日光へは「宇都宮インター」が最寄りになる。そこで行きか帰りに立ち寄りたいのが、「宇都宮餃子の殿堂」とも呼べる「来らっせ」だ。

日本三大美肌の湯「喜連川温泉」
日光と抱き合わせにされる栃木の温泉郷といえば「那須塩原」が常道だが、奥日光を含む旅路となると、さすがに週末だけでは収まりきらない。
むしろ宇都宮を経由するなら、大分県の嬉野温泉・島根県の斐乃上温泉とともに「日本三大美肌の湯」に挙げられている、さくら市の「喜連川温泉」が手軽でお勧めだ。
とりわけこの「早乙女(そうとめ)温泉」のお湯は素晴らしい。
早乙女温泉 オフィシャルサイト

