「クルマ旅専門家」・稲垣朝則が、10年以上かけてめぐってきた全国の温泉地を、「車中泊旅行者の目線」から再評価。車中泊事情や温泉情緒、さらに観光・グルメにいたる「各温泉地の魅力」を、主観を交えてご紹介します。
「鰻温泉」は、指宿温泉の奥座敷
本題に入る前に、まずは指宿と鰻温泉の位置関係を確認しよう。
砂浜に身を埋める「砂むし」でお馴染みの指宿温泉は、「海沿い」に位置していると思われがちだが、実際は範囲が広く、マップの通り鰻温泉は内陸部にある。
現在の住所が指宿市になっているので、ここではその一部という扱いをしているが、資料によっては、独立した温泉地としているものもあるようだ。
さて。その鰻温泉を西郷どんが訪れたのは、1874(明治7)年の2月から3月にかけてのこと。現地の案内板には以下のように記されている。
ただここでは、歴史の話はこのあたりにして温泉の話を進めよう。
鰻池の畔に湧くこの鄙びた温泉場は、指宿温泉の中で唯一の単純硫黄泉で、江戸時代から噴気を利用した天然の蒸し窯で食材を調理していたことが文献に残っている。その蒸し窯は「スメ」と呼ばれ、今でも地元の人々の暮らし場として活用されている。
こちらが筆者の入湯した「区営鰻温泉」。
1901(明治34)年に開設された公共の日帰り温泉施設で、現在の建物は平成9年に改装されたものだ。
浴室にはタイル張りの湯船がひとつあるだけで、露天風呂はない。
源泉が88.8度と高温なので、加水して掛け流しにしているそうだが、それでも浸かればジーンとくる熱さで、体感では43度近くあるように思える。
長湯はできないものの、湯上りには「さっぱり感」に包まれる、いわゆる昔ながらの共同湯だった。
ちなみに液性はpH6.4の弱酸性硫黄泉。硫黄泉は繊維を弱くするので、ここでは良いタオルやお召し物は使用を避けた方がいいだろう。
「区営鰻温泉」前の駐車場は、短い急斜面を降りたらすぐに切り返しが必要で、空いていたから停められたものの、つまっていたら大変だった。
後で気づいたが、温泉館の奥にはもっと楽に停められる駐車場がある(笑)。
区営鰻温泉
〒891-0516 鹿児島県指宿市山川成川6517
☎0993-35-0814
入浴時間:8時~20時(受付終了19時30分)・毎月第1月曜日
料金:大人200円