「クルマ旅専門家」・稲垣朝則が、10年以上かけてめぐってきた全国の温泉地を、「車中泊旅行者の目線」から再評価。車中泊事情や温泉情緒、さらに観光・グルメにいたる「各温泉地の魅力」を、主観を交えてご紹介します。
ベストは「とれとれ市場」の切り身を買ってセルフ鍋
白浜の人気グルメといえば、やはりクエを筆頭に挙げたいと思う。
淡白ながら脂の乗ったその味わいは、「クエを食ったら、他の魚は食えん」といわれるほどだが、漁獲量が少なく長い間“幻の高級魚”とされてきた。
現在は白浜にあるクロマグロの完全養殖に成功した近畿大学水産研究所(白浜町)が、20年がかりで養殖技術を確立し、南紀白浜温泉でいつでも新鮮なクエが楽しめるようになった。
とはいえ… 満足がいくまでクエを食べようとすれば、ひとり1万5000円はかかるというのが今の相場だ。
そこまで出すなら、いっそ民宿に泊まって食べるほうがコスパはいい。
クエが食べられる専門店
養殖に成功したにもかかわらず、ネットで探しても「クエ料理」をランチで食べさせてくれる店は見つからなかった。
そこで、まずは2012年に筆者がお邪魔した本クエ料理専門店の風車を紹介しておこう。ここは老舗だけあって、間違いのないものを食べさせてくれる。
これが当時にいただいた、3000円(税別)の「クエ鍋定食」。
その時はランチ営業もしていたのだが、現在はやっていない。8年前とはいえ、当時はずいぶん「いい思い」ができたものだ。
なおネットでクエ料理を検索すると、「しららはまゆう公園」の隣にあった「浜屋台マルキヨ」がよくヒットしてくる。
しかしこの店は2018年に移転しており、店名も「海ごはん山ごはんマルキヨ」に変わっている。
まだ行けてはいないが、ホームページでメニューを見る限り、単品とはいえ様々なクエ料理がリーズナブルに食べさせてもらえるようだ。
とれとれ市場の切り身
とれとれ市場に行けば、クエの切り身が2人前3000円弱で手に入る。
日によっては天然と養殖が同時に並ぶこともあるようで、天然は養殖よりも1割ほど高かった。
だが、油がのって美味しかったのは「養殖のクエ」(笑)。
野菜やポン酢も売っているが、夫婦だけだと量が多すぎるかもしれない。その場合は、クルマで2.3分のところにスーパー・オオクワがある。
さて、その場合の問題は「どこで食べるか」だ。
もっともお勧めなのは、お土産に買って帰り、自宅で食べること(笑)。
これなら誰にでもできるし、カニやフグを買ったと思えばいい。
ただ、それでは旅行気分は味わえない。
南紀白浜にはキャンプ場で食べるという選択肢がある。
寒くて嫌なら、グランパス白浜リゾートのトレーラーハウスを借りる手もある。
これはミニバンのように本格的な車中泊装備がないクルマに乗るベテランたちの「常套手段」で、忘年会のように仲間とともに楽しみたい時にも適している。
ちなみに南紀白浜には、キャンプ場以外で車外にテーブル・ベンチが出せる場所はなく、まして鍋を囲めば、間違いなく通報されるに違いない(笑)。
最後はクルマの中で食べるという方法だ。
ただし、これは屋根に換気扇を搭載したキャンピングカーでなければ「できない」と言い切ったほうがいいだろう。
お湯を沸かす程度なら大きな問題は生じないと思うが、換気せずに鍋のように長時間車内で火器を使うということは、それだけ酸素が消費され、二酸化炭素が増えることになる。
二酸化炭素が増えすぎると、めまいや吐き気をもよおすなどの中毒症状を発症する危険がある。
また車内には匂いが残り、当面はそれが消えないはずだ。
たいそうに思えるかもしれないが、合法的なキッチン機能を有する8ナンバーのキャンピングカーは、そういうことを前提に作られている。
ゆえに一度手に入れてしまえば、フグでもカニでも自由にクルマの中で食べられるというわけだ。
温泉旅でおいしいものを安く食べたい!というのは、筆者がキャンピングカーに乗る大きな理由のひとつ。
もしキャンピングカーに興味があれば、こちらのページも参考に(笑)。
なおキャンピングカーでなくても、調理の要らない刺し身であれば食べられる。
とれとれ市場なら、最低でも鯛やマグロにはありつけるはずだ。
白浜温泉 車中泊旅行ガイド
車中泊ならではといえる、南紀白浜温泉の愉しみ方をご紹介。