「クルマ旅のプロ」がお届けする、車中泊旅行者を取り巻く現状
この記事は車中泊とクルマ旅関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、本当の車中泊クルマ旅を正しくご理解いただくために作成しています。
~ここから本編が始まります。~
本当に問うべきは、車中泊を禁止にする施設と行政、及びそれを安易に取り上げたがるマスコミの『良識ある車中泊旅行者に対する「マナー違反」』では?
筆者は20世紀から車中泊をしているので、団塊の世代の定年退職がピークを迎えた時に巻き起こった、2007年の「第一次車中泊ブーム」も、2010年代後半から続くキャンプブームの余波に、コロナ禍が上乗せされて顕在化してきた、現在の「第二次車中泊ブーム」も十二分に熟知している。
そのうえで…
改めて問いたいのが、車中泊を禁止にする施設と行政、及びそれを安易に取り上げたがるマスコミの『良識ある車中泊旅行者に対する「マナー違反」』だ。
正直、我々は迷惑しているし、マナーが守れない輩もさることながら、それを取り締まる気のない施設や行政と、レベルの低い記事を載せるマスコミにも失望している。
これまでも事ある度に似たような話を書いてきたが、それでは埒が明かないと思い、整理してアーカイブとしても使えるよう「特集化」することにした。
なおこの件については、マスコミの取材は一切受け付けない。
ジャーナリストチックに車中泊を語りたいのなら、最低でも1年くらいは自ら普通乗用車とキャンピングカーの両方で車中泊をしながら現地取材を行い、それからペンを持つのが、既存の車中泊旅行者に対する「マナー」というもの。
文章の上手い下手など、その次の話だ。
良識ある車中泊旅行者から見た、「車中泊の規制と禁止」の是非
本来の車中泊は、旅行者と観光地にWinWinをもたらす宿泊手段
コロナウイルス感染防止の緊急事態宣言は、車中泊禁止の反面教師
必要なものが勢揃い! 楽天市場の「車中泊グッズ」大特集
車中泊とは?
驚いたことに、今の日本には「車中泊の定義」というものが「あるようでない」。
「仮眠OK」「車中泊禁止」なんて馬鹿げた話をするお役人がいるようだが、誰が考えてもそんな「不鮮明な線引」が通用しないのは明白だろう。
線を引くなら、寝るか寝ないか。
クルマで寝るのは、トラックもキャンピングカーも軽自動車も全部、「車中泊」と呼ぶのが一番スッキリする。
だがそれは、彼らがもっとも避けたい「車中泊容認」を意味することになる。
それがこの妙な言い回しのカラクリだ。
そもそも労働組合の「連合」じゃないが、車中泊業界に「ナショナルセンター」自体が存在しないのだから、オフィシャルな定義がないのは当たり前。
ただそれゆえに、車中泊の解釈が人それぞれで、いつまでたっても国も地方行政もコンセンサスが取れていないのが実情だ。
言い換えれば、そこから修正しないと「車中泊のトラブル」を根本からなくす方策は見えてこない。
では、それを誰が決めるの?
答えは分かっているが、少なくてもそれが筆者でないことは確かだ(爆)。
本来の車中泊は、旅行者と観光地にWinWinをもたらす宿泊手段
どこでもここでも、人気の観光地はみんな「車中泊禁止」が当たり前…
何を云っているんですか、貴方(笑)。
バブルの崩壊と温泉ブームの終焉で、すっかり客足が遠のいた「黒川温泉」だからこそ、その時の辛さ・厳しさを忘れないでいてくれるのだが、
そもそも宿がなかったり、わずかしかない田舎の観光地に、自らベッドを積んできて、メシ・風呂・そしてガソリンにまでお金を落としてくれる上客を、手放したいと思う商売人がいるだろうか。
いっぽうこれは、東日本大震災後の東北で見たキャンペーンポスター。
クルマで旅をすれば、必然的に飲食店、ガソリンスタンド、入浴施設、スーパーマーケット、観光施設などに広く浅くお金が落ちる。
つまり、図らずとも我々が「東北を旅する」ことが、被災者への支援に通じているのは事実であり、有効だと筆者も思う。
ただ、困った時だけ頼まれても(笑)。
SDGsじゃないが、こういうことはSustainable、すなわち「持続可能」なカタチにしていかないと、”うまいキャンペーン”だけに終わってしまう。
普通に考えれば、車中泊旅行者は観光地にとって、良く云えば「神様・仏様」、悪く云うなら「ネギを背負ってやってくるカモ」そのものだが、それでも、そこに見たいものがあるから人は足を運ぶ。
問題は、そこで住人が予想もしなかったことが起こるからにほかならない。
だから手っ取り早く禁止?
確かにそれで迷惑を受けている人は救われるかもしれないが、残りのWinWinを享受している圧倒的多数は、逆に迷惑を被ることになる。
シンプルに迷惑をかけている輩だけを排除すれば、丸く収まるのに… だ。
日本が「法治国家」であることは誰だって知っている。
たとえ法整備の問題があるにしても、今のような「十把一絡げ」の荒っぽいやり方を、これ以上続けられるのは合点がいかないし、もう我慢がならない。
できないのではなく、本気でそのことに取り組んでいないと謗られて当然。というか、もはや「罪」じゃないのかとさえ思えてくる。
車中泊のマナー違反の裏返しは「CS(顧客満足度)」
CS( customer satisfaction)は「顧客満足度」と訳されるマーケティング用語で、1980年代から使われ始めた概念だが、要は昔に「ニーズ」とか「ウォンツ」と呼ばれた利用者の希望に、応えられているか、また今後どう応えていくかといったことを指している。
「車中泊のマナー違反」に該当する行為はひとつではないが、かつては発電機を回すキャンピングカーを見かけることも少なくはなかった。
道の駅のような公共施設では、お上の一声で「禁止」になるが、まともな民間企業では、さきほどのCSに当てはめ、それだけ希望者がいる行為なら、車中泊で電気を使えるようにすれば喜ばれるはずと考える。
事実、それで契約件数を爆発的に伸ばしているのがRVパークであり、商品ではポータブルバッテリーの技術開発が進んで大量生産が可能になり、ずいぶん買いやすくなってきた。
筆者もマナー違反をする車中泊旅行者を擁護するつもりはないが、CSを追求することで、それを撲滅するだけでなく、売上に還元することが可能なことは、既にこのように実証されている。
とすると、道の駅はできないのではなく、本気でそのことに取り組んでいないとしか思えない。
いっぽう新東名高速道路のすべてのサービスエリアには、既にコインシャワーとランドリーが使える店が入店している。
NEXCOはなんだかんだいいつつ、したたかで儲かることには熱心だ。
コロナウイルス感染防止の「緊急事態宣言」は、車中泊禁止の反面教師
ニュースを見る限り、東京や大阪で2020年から断続的に続く「緊急事態宣言」下で、酒類の提供禁止と夜の営業時間短縮に、真っ向から反対している居酒屋は少ないように見える。
つまり多くの店は、それをやむなしと理解肯定し、要請に応じているわけだ。
ただし彼らは、要請に応じない一部の店、というより「補助金の給付を含めて、それを強く制御できない行政」に強い憤りを感じ、「要請に応じても、応じなくても同じじゃないか」というムードが拡散することを危惧している。
これを車中泊に置き換えると、道の駅やサービスエリアでのアイドリングが、面白いほど当てはまる。
禁止するなら騒音も排ガスの量も質も、普通車を圧倒的に凌駕しているトラックを、まず先に抑え込まなければ話にならないことに反論できる者はいまい。
エンジンをかけたまま平気でいるトラックにも腹が立つが、「夜間アイドリング禁止」の看板だけ立てて、注意に回ることもしない施設には、もはや開いた口が塞がらない。
立ち上がらなくてもいいから、怒りましょう!
これまで書いてきた話を、本当に抜本的に叩き直そうと思うのなら、衆議院選挙に向けて、道の駅のあり方に対する修正案をマニュフェストに盛り込むよう、耳を貸してくれる政党に迫るくらいの努力が必要だ。
もちろんそのためには、「何万票」いやもしかしたら「何十万票」にもなる車中泊旅行者の票田をバーターする必要はあるだろうが、仮に24時間使えるゴミ箱の設置が義務付けられるだけでも、やるだけの意味はあると思う。
SNSを立ち上げている「車中泊系のクラブ」が団結し、本腰入れて立ち上がれば、それは不可能なことではないかもしれないが、遊びに政治を持ち込まれて、「いい気」がする車中泊旅行者は皆無に等しいわけで、現実的にはまず不可能だろう。
であれば、せめて怒ろう!(笑)
ただし矛先は、ガキみたいな輩ではなく、業務怠慢な施設や行政に対してだ。
事実、我々は見に覚えのない話で利用に制限を受けたり、「差別」されているのだから怒って当然。その権利は十分にある。
ほんの「一握りのマナーが守れない人」に、スポットを当てるからそうなるのだが、逆に圧倒的多数の「マナーを守っている車中泊旅行者」の側から見れば、まったく景色は違ってくる。
車中泊のマナー違反は、コンビニの「万引き」と同じで、世の中がどう変わろうと、一定数の「悪」は排除できない。
だが某高校の生徒が、あるコンビニ店で万引きをしたからといって、その高校の制服を着ている生徒全員を「露骨に危険視」したら、そりゃ本人たちだけでなく、学校もPTAも黙ってはいない(笑)。
では、「善良なる車中泊の旅人」にとっての、学校とPTAはどこの誰なんだ?
真面目にやってる車中泊旅行者が全員、今の道の駅や行政の対応に対して怒っているとなれば、特に日和見的なマスコミの態度は変わるんじゃないかな。
マスコミは国民を見ているのではなく、販売部数と視聴率が大事。つまり世論に逆らう勇気など持ってはいない。