この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、現地取材を元に「車中泊ならではの旅」という観点から作成しています。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。

目指すは「涸沢」。
上高地というところは、いい意味で「棲み分け」ができている。
観光客の大半は、大正池から明神池を散策したあと上高地を後にし、一部の宿泊客は、庶民にはちょっと手の出ないリゾートホテルに滞在する。
いっぽう登山客は上高地を素通りして、徳沢か横尾にテントを張る。
だが河童橋の周辺が、マスコミが云うように最高に美しい場所だとしたら、彼らはそこを素通りしていくだろうか…
実は横尾の先には、もっと目を見張る世界が待っている。
しかしガイドブックにその景観が載ることはなく、テレビの旅番組も取り上げない。まるで上高地の棲み分けの背景には、「旅行者以外の意志」が働いているかのようだ。
だが、その枠を踏み超えることは難しくない。それが真の「トレッキング」だ。
※トレッキングとは…
ヒマラヤ周辺の山麓周遊ツアーから生まれた言葉で、登頂にこだわらず、大自然が織りなす景観や現象を、起伏とともに楽しみながら進む、云ってみれば「ちょっとハードな山歩き」のこと。
北アルプスの玄関にあたる上高地は、本来の意味に近いかたちでトレッキングを楽しむことができる、国内有数のフィールドだ。
日本離れした景観が見られる「涸沢」
標高約2300メートル地点にある涸沢は、奥穂高岳と前穂高岳のベースキャンプ地で、夏から秋のハイシーズンには、カラフルな山岳テントが数え切れないほど立ち並ぶ。
北アルプスを目指すアルピニストにとって、上高地は単なる通過点に過ぎず、涸沢のようなベースキャンプ地が、本当の登山の出発点になる。
しかしそれ以外の人にとって、涸沢は上高地の「終点」ともいえる憧れの地だ。
特に紅葉は、大雪山・立山連峰・乗鞍と並ぶ雄大な錦秋絵巻として、昔から写真愛好家によって語り継がれてきた。
ただし、上高地バスターミナルから歩くこと約15キロ…
よほどの健脚でなければ、カメラと三脚を担いだ日帰りは困難で、半端な気持ちと装備で出かけるのは危険だ。
そこで、このサイトでは車中泊とキャンプを駆使した、上高地周辺の散策ガイドに加えて、徳沢から横尾を越えて涸沢に至るまでのトレッキング情報を掲載することにした。


