この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、現地取材を元に「車中泊ならではの旅」という観点から作成しています。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。

これだけ知っていれば大丈夫。
初めての上高地 Q&A【目次】
2.無責任で、間違いだらけのガイドブックとウェブサイトにご用心。
1.上高地とは…
「上高地」は槍ヶ岳に源を発する梓川の上流に位置する、標高約1500メートルの平坦地で、中部山岳国立公園の一部として、国の文化財(特別名勝・特別天然記念物)に指定されている。
ただし現在は、通年のマイカー規制が施行されており、アクセスには岐阜県の平湯温泉もしくは、長野県の沢渡(さわんど)地区からシャトルバスかタクシーを利用しなければならない。
にもかかわらず、アルペンルートと双璧をなす国内屈指の山岳ネイチャーフィールドには、4月から11月の開山期間中に、約150万人もの観光客が訪れる。
確かに、目前に迫る穂高の岩稜と透明感に満ちた梓川の流れは、荒々しさとたおやかさが同居する、北アルプスならではの情景だ。
目にした誰もがきっと、頭のテッペンまで癒されてしまうに違いない。
2.無責任で、間違いだらけのガイドブックとウェブサイトにご用心。
さて。そんな上高地には、観光バスのツアー客もやってくる。
おかげで、自然探勝路では「場違い」とも思えるハイヒールにミニスカート姿の娘さんを見かけることも少なくない。
だが河童橋周辺をブラブラするだけなら、それでもまったく支障はない。
それどころか、道幅の狭い自然探勝路でグズグズされるよりは、よほどそのほうがハイカーからも喜ばれる(笑)。
いちばん愚かなのは、誰でも上高地に来たら大正池や明神池を歩かないとウソ… みたいなことを書く、無責任なガイド本やウェブサイトの脅迫的記事に惑わされることだ。

3.上高地を「歩き回らない」という選択肢
筆者が贈る最初のアドバイスは、1.2時間しか滞在できない人は、この魚のようにむやみに上高地を「動き回らないこと」だ。




大正池~河童橋、あるいは河童橋~明神池の往復を目指すなら、最低でも3時間はゆとりを持って出かけよう。
散策とウォーキングは似て非なるものだ。
散策は、そこに美しい景観や珍しい野鳥がいれば足が停まる。
しかし下のマップに記載された「いわゆる標準コースタイム」には、そのような個人差がある「ロスタイム」は加味されていない。

出典:上高地非公式ウェブサイト
4.上高地 日帰り観光Q&A
4-1.上高地はペット同伴OK?
国立公園なので、介助犬を除くペットの同伴はできない。まずシャトルバスやタクシーに乗る時点で制止されるだろう。
4-2.上高地の昼食事情を教えて。
河童橋周辺には何軒か食事処があるが、どこも混雑が激しく値段も高めのようだ。いちばん確実なのは弁当の持参だが、当日の場合は弁当の入手自体が平湯や沢渡では難しい。
そのため、数時間程度の滞在なら軽食で空腹を抑え、下山後にきちんとした食事を摂るほうがいい。なお飲物は売店に行けば簡単に手に入る。
4-3.持参して行くと良い物は?
野鳥などの野生動物に興味があれば、双眼鏡があると面白い。夏は虫刺されの痒み止めと長袖のウェア、また川に入りたいならタオルは用意しよう。
春と秋はウインドブレーカーか、薄手のダウンジャケットを持参すると安心だ。なお梓川での釣りは禁止されている。
4-4.上高地から槍ヶ岳は見えるの?
残念ながら河童橋周辺から槍ヶ岳は見えない。正面に見えている山は、標高3190メートルの奥穂高岳だ。
5.ハイキングをするなら「本気」で。
同じお金をかけて上高地まで行くのなら、見たいものを事前に下調べし、それに体力とスケジュールを照らしあわせてから出かけることをお勧めする。
その際に大事なことは「自分本位」にならないことだ。
ハイシーズンの上高地は、午後1時には帰りのバス待ちの渋滞が始まる。
それに先ほどの昼食事情を加味すれば、夏でも午前7時には上高地に到着し、12時には帰りのバスに乗るのが「理想の日帰り」であることに気がつく。
つまり自由なのはマックス5時間弱…
春や秋はもっと短くなる。この時間をどううまく活用するかが、上高地のハイキングにおける「腕の見せどころ」だ。

