この記事は、既に車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、2019年に還暦を迎えて書き下ろした、自らの経験に基づく話です。
「太くて短い車中泊ライフ」の一番の友は、キャンピングカー
中高年(特にシニア)には、車中泊の旅を楽しむ「時間」はあるが「期間」はない。分かりやすく云えば、長旅はできるが年々それが難しくなっていくわけだ。
本人に天国からお迎えが来るのはまだ少し先だとしても(笑)、その前に健康やクルマの運転に対する不安が生じ、さらには身内の介護といった問題も立ちはだかってくる。
つまり、同じ車中泊を始めるにしても、中高年は子育て世代とは違って最初から「太くて短い車中泊ライフ」にマッチする方法を模索するほうがいい。
そして、そのベストアンサーがキャンピングカーの購入というわけだ。
<目次>
貴方にとって、旅は人生の投資か経費か?
ゴルフ・釣り・カメラ・登山等々、そもそも「趣味」はお金がかかる遊びだ。
にもかかわらず、その中で車中泊の旅だけ「お金がかからない」というのは、「妄想」もしくは「勘違い」だと筆者は思う。
もちろん車中泊旅行者の中には、傍目から見ても「明らかにお金をかけていない」と思える人もいる。
だが、その多くは旅行者というよりは車上生活者に近い。
確かに、車中泊の旅と公共交通機関の個人旅行では「お金の使い道」は違う。
ビジネスホテルの代わりに道の駅を泊まり歩き、外食はぜず自炊で食事を賄うようにすれば、多少は小銭を浮かせることもできるだろう。
しかしそんなものは、高速代やガソリン代の足しにもなるまい。
だから動かない。
だがそうなると、よりいっそう車上生活者らしく見えてくる…
その先にあるのは、周辺住民からの「通報」だけだ(笑)。
世の中には「投資」という言葉がある。
本来の「お金」は積極的に使うことにより、かけた金額以上の「金銭または付加価値」を得るための道具だ。いっぽうには「経費」という言葉もあるが、これも「成果」をあげれば「無駄遣い」にはならない。「経費削減」は期待以上の「成果」が出ない時に使う最終手段である。
そう考えると、いかに車中泊の旅をポジティブに考えられるかが大事であることに気がつく。
同時にそれは、改めて自分が車中泊の旅に期待している「成果」について考える良い機会にもなるはずだ。
お勧めはハイエース・ナローかNV350ベースのバンコン
さて、ひとくちにキャンピングカーと云っても、ベースはマイクロバスから軽自動車まであるわけで、ある程度の事前知識がなければショーに行っても目移りするばかりで話は前に進まない。
ゆえにここでは「結論」から先にお話しよう。
もし貴方が筆者と同じように、ミニバン車中泊の難儀な点が解消できればそれでいい… というスタンスなら、ノアやセレナと同じ車幅・車長で運転しやすい、ナローボディーの「ハイエースまたはNV350ベースのロングバン」を架装したキャンピングカーがお勧めだ。
ただしこのタイプは、テーブルレイアウトにするのに多少手間がかかるのと、大半は大人2人までしか寝られない。
ハイエースのキャンピングカーに、ワイドボディーのスーパーロングをベースにするタイプが多いのは、ベッドとダイネットが同時に展開できるのと、2段ベッドにできるからに他ならないが、ナローボディーに比べると格段に取り回しは悪くなるし、ベース車両が高い分だけ値が張る。今はフル装備された新車の場合、800万円はくだらないだろう。
中古車という選択肢
ハイエースは、商用車としてのハードな使用を想定して作られている。
そのためガソリンエンジンでも20万キロは楽に走れるというが、キャンピングカーは年式の割に走行距離の少ない中古車が多い。なぜならオーナーの多くはセカンドカーを有している。
つまり5年から10年くらい乗れればいいという人には、10万キロ以下の走行距離のクルマであれば、たぶんそれで最後まで使える。
なお、団塊の世代の大半が70代になったことにも着目すべきだ。
資金力のあったアクティブ・シニアが愛用してきたフル装備のキャンピングカーは、そろそろ中古市場に出てくる時期を迎えており、これから狙うならそういうクルマも候補になる。
中高年にキャンピングカーを勧める 最後の理由
キャンピングカーには、快適車中泊のための知恵もモノも要らない。
一番わかりやすい事例は、「車中泊の寒さ対策」だろう。
乗用車とキャンピングカーでは、寒さ対策そのものが違っている。乗用車の場合は、クルマとカラダをどう「防寒」するかが焦点になるが、キャンピングカーの場合はエンジンを切っても「暖房」が効く。つまり、スイッチひとつで解決できてしまうのだ。

貴重な時間は、面倒なことを身をもって体験するより、楽しい旅に充るべきだと筆者は思うが、どうだろう(笑)。