「クルマ旅のプロ」がお届けする、リアル車中泊入門ガイド
この記事は車中泊とクルマ旅関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、これから車中泊を始めたい人に向けてのアドバイスを記したものです。
~ここから本編が始まります。~
「道路利用者の休憩施設」を目的に掲げる道の駅は、日本の車中泊スポットの”1丁目1番地”。できるのが当たり前で、デマに惑わされてはいけない。
道の駅と車中泊【目次】
プロローグ
「道の駅で車中泊はできるの?禁止なの?」と、話がこじれる大元の理由。
車中泊の生い立ち
現在の日本の車中泊には、2つの”流儀”がある。
現在の問題と解決策
求められているのは、国土交通省による車中泊の定義付けと発信情報の訂正

プロローグ
「道の駅で車中泊はできるの?禁止なの?」と、話がこじれる大元の理由
「車中泊」でクルマ旅をしようとすれば、近頃はややもするとこの問題に出くわすわけだが(笑)、結論から云うと道の駅は、昔も今も「車中泊」を容認している。
にもかかわらず、
禁止だどうだという話がいっこうになくならない、本当の理由を最初に説明しよう。
さすれば今後あなたが、この問題で悩む必要はなくなる。
残念なことに…
日本にはキャンピングカーのディーラーが作る団体はあっても、「車中泊協会」のような業界とユーザーを代表する組織が未だに存在しない。
そのため国も道の駅も旅行者も、意識するしないに関わらず、それぞれが好き勝手に「車中泊」を定義づけている。
それが論争を生む大元の原因になっているわけだが、「車中泊」の生い立ちを辿ってみれば、何が正しいのかは一目瞭然だ。
車中泊の生い立ち
現在の日本の車中泊には、2つの”流儀”がある。

出典:イギリス・ウェールズの歴史
これは「フットボール」に例えるのが、一番わかり易いと思う。
ウィキペディアの説明によると
フットボール(英: football)は、程度の差はあるが、得点するために指定された相手陣地のゴールにボールを蹴り込む要素を含むチームスポーツの総称である。
つまり、「サッカー」も「ラグビー」もひとことで云うと「フットボール」になるわけだが、それぞれが明確に異なるルールと競技場を持っている。
「車中泊」にも同じことが云える。
釣り・登山・カヌー・サーフィン・スキーといったアウトドアを楽しんでいる人は、昔も今も、そのフィールドに近い場所で寝泊まりするほうが都合がいいため、「車中泊」という手段を使っている。
加えてフィールドには、レストランもコンビニもない場合が多いので、彼らにはそこで調理やお湯を沸かすなどの、”キャンプ行為”を行う必要がある。
この”キャンプ行為”を伴う「車中泊」を、ここではいったん「アウトドア系車中泊」と呼ぶことにする。
もうひとつは、トラックによる長距離輸送から生まれた「車中泊」だ。
「道の駅」がこの世に登場するのは1993年だが、日本の大動脈である東名高速が開通したのは1968年、名神高速の開通はそれよりもまだ早い1963年になる。
そして名神高速道路の開通とほぼ同時期の1964年に、現存する日本最古のドライブインとされる「不二ドライブイン」が開業している。
すなわち、「道の駅」の誕生よりも30年近く前に本格化した、この高速道路と休憩施設のインフラ整備が、日本の大型トラックによる長距離輸送を可能にしてきた。
長距離輸送時のドライバーには、トイレと食事を兼ねた休憩が必要だ。
しかしそれ以外にも、荷物の積み出し元と受け入れ先の都合があり、途中にどこかで時間調整をすることが多い。
その際に睡眠を含めた休憩場所に利用されてきたのが、「サービスエリア」と「ドライブイン」で、もちろん今はそこに「道の駅」が含まれる。
近年では食事以外に、コインランドリーやコインシャワー、さらには無料で漫画まで読める休憩室を設けた施設まで登場し、その利便性と快適性は大幅に向上している。
加えてその間には、大型トラックにも、ドライバーがきちんと眠れるベッドの組み込まれた車両の開発が進んできた。
いっぽう、ご承知の通り…
トラックでなくても、日本中をクルマで旅する中で、日が暮れたら疲れを癒やすために、「サービスエリア」や「道の駅」にクルマを駐め、翌日の朝まで休憩をしている人はたくさんいる。
では、トラックドライバーを含めて、彼らのように「ただクルマの中で眠って、一夜を明かすだけスタイル」を、何と呼べばいいのか?
筆者には「車中泊」以外に、ジャストフィットする言葉が思いつかないのだが、さきほどの「アウトドア系車中泊」と対峙させるため、あえてここでは「トラベル系車中泊」と呼ぶことにしよう。
これでお分かりになられたと思うが、現在の日本には、ひとまとめにして「車中泊」と呼んでいるが、「アウトドア系車中泊」と「トラベル系車中泊」の2つ車中泊の流儀が混在している。
現在の問題と解決策
求められているのは、国土交通省による車中泊の定義付けと、発信情報の訂正
さて。
続きになるが、”キャンプ行為”を伴う「アウトドア系車中泊」は、云ってみれば”手と足”を使う「ラグビー」、逆に”車内完結”の「トラベル系車中泊」は、”足”しか使わない「サッカー」に置き換えることができる。
そう考えれば、「ラグビー」「サッカー」と同じように、それぞれのマナーを含むルールと、利用できる施設を明確化するのは難しくない。
すなわち「アウトドア系車中泊」に使える施設はキャンプ場、「トラベル系車中泊」は道路休憩施設と、誰もが迷うことなく明確に判別できる。
だが今の日本は、
サッカー競技場で、まだラグビーをしようとする人がいる。
その直接の原因が、自分たちの流儀と施設が合っているのかどうかをきちんと認識せずに、「車中泊」をする人が絶えないことにあるのは確かで、後述するが、誤った人たちを排除しようというのは当然だ。
だが問題は、そういう人の存在よりも、「ラグビー」だけが排除されるべきなのに、その対象に「サッカー」を含む「フットボール」自体を指定してしまったことにある。
それは、前述した「車中泊の定義」がこの国にないことにも起因するわけだが、いずれにしても今となっては、”意味の分からない”道の駅での「車中泊」に関する指針を発した国土交通省に責任があり、速やかに是正して正常化を図る必要があるのは、疑いようのない事実だろう。
その混乱を招いた、”道の駅での「車中泊」に関する指針”がこちら。
※以下は国土交通省公式サイトの転用
「道の駅」駐車場での車中泊は可能ですか?
「道の駅」は休憩施設であるため、駐車場など公共空間で宿泊目的の利用はご遠慮いただいています。
もちろん、「道の駅」は、ドライバーなど皆さんが交通事故防止のため24時間無料で利用できる休憩施設であるので、施設で仮眠していただくことはかまいません。
多くの人が指摘している通り、この指針には2つの大きな問題がある。
まず車中泊の旅人が引っかかっているのは「宿泊目的」という表現で、ここに「車中泊」が含まれるのかどうかが分からず、世間は揺れている。
実は、当初は「宿泊目的」が「車中泊」になっていた。
しかしそれを某Youtuberに指摘され、「車中泊」が「宿泊目的」に置き換えられた経緯がある。
そのYoutuberが云うには、「宿泊目的」とは”道の駅を宿として使うこと=道の駅のトイレや軒先で野宿すること”という意味で、車中泊は含まれないらしい(笑)。
確かにそういう人を見かけなくはない。
しかしそれはレアケースであって、こんな屁理屈染みた言葉遊びではなく、もっと誰にも「車中泊」は含まれないと分かる表現に、修正する必要があるのは確かだろう。
もうひとつは「仮眠」だ。
これは多分にトラックドライバーを意識した表現と思うが、普通「仮眠」は1~2時間程度の睡眠を指し、代表的なのが昼寝だ。
だが客観的に考えれば、特に深夜は「仮眠」で長距離運転するのは危険で、物理的にも難しい。
夜間にトラックの運転手が休憩施設でとっている「睡眠」は、昔も今も「仮眠」ではなく「熟睡」で、なんと「熟睡」は「仮眠」の反対語になる。
一流大学卒の高学歴を持つエリートに、それが分からないはずがないだろうに、
なぜ、こんな馬鹿げた表現になったのか…
「鍵」となるのは、「アウトドア系車中泊」を「道の駅」でする人たちの存在だ。
施設の関係者でなくても、こういう人たちはノーサンキューだが、問題は国土交通省がこの行為を、「車中泊」と解釈していることにある。
本当は、『トラックと同じ”車内完結”の「トラベル系車中泊」は受け入れるが、”キャンプ行為”を伴う「アウトドア系車中泊」は禁止』と、云いたかったのだろうが、「車中泊」の範疇に両方を含めているため、そうは云えず、こんなトンチンカンな表現になっただけのこと。
しかしその軽率な言い回しが、いま全国各地の「道の駅」で、利用者のみならず、そこで働くスタッフを含めた多くの人に迷惑をかけていることを、いったいこのお役人さんはどう思ってるのか聞きたい。
しいてはマスコミも、この2つの言葉が引っかかって、「サービスエリア」や「道の駅」における”正しい「車中泊」”を取り上げられずにいる。
いっぽうベテランの車中泊旅行者といえば、それを相手にせず、「私達、今仮眠してまーす」で片付けている(笑)。
この”ダブル・スタンダード”を正常化するには、前述した国土交通省の指針を訂正する以外に方法はない。
見栄も誇りも捨てて、素直に謝れよ。
今なら、まだ間に合う。
そして同時に、ここで云う「トラベル系車中泊」を「車中泊」と公に認めることだ。
そうすると、「車中泊の定義」は以下のようになるはずだ。
「車中泊」とは…
車内で弁当やパンなどの調理済みの食品を食べ、出発時間になるまで眠るなどして過ごすこと。
これは「車中泊」がブームになる遥か以前から、長距離輸送トラックの運転手達が脈々とやってきたことで、既に市民権も得ている。
もちろん彼らは、数日間にわたって、クルマを動かさずに留まる「長期滞在」はしない。つまりそれも「アウトドア系車中泊」の範疇に含まれる行為なのだ。
最後に。
そうなってくれるのが理想の展開ではあるものの、現実には岸田総理が災害に遭って「車中泊」でもしない限り、そんな簡単に話は進まないだろう(笑)。
しかし「サービスエリア」も「道の駅」も、施設としての役割上、深夜に真っ当な大型輸送トラックの利用を排除することはできない。
ということは、同様の使い方をしているクルマ旅の旅行者も排除はできない。
もししようとすれば、それは「区別」ではなく「差別」として、別の人権問題に発展する可能性がある。
ともに交通事故防止のために夜を挟んで「車中泊」をしている、トラックとキャンピングカーを含む乗用車は、いったい何が違うのか?
クルマが違うだけで応対を変えるとなると、それは”肌の色が違うから”と云っているのと変わらない。
ジャニーズどころじゃない、国際問題になるで(大笑)。
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