車中泊旅行歴25年のクルマ旅専門家がまとめた、「道の駅での車中泊」に関する記述です。
この記事は車中泊とクルマ旅関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、これから車中泊を始めたい人に向けてのアドバイスを記したものです。

「道路利用者の休憩施設」を目的に掲げる道の駅は、日本の車中泊スポットの”1丁目1番地”。できるのが当たり前で、デマに惑わされてはいけない。
道の駅と車中泊【目次】
プロローグ
「道の駅で車中泊はできるの?禁止なの?」と、話がこじれる大元の理由
車中泊の生い立ち
車中泊はトラックによる長距離輸送から生まれた宿泊スタイル
プロローグ
「道の駅で車中泊はできるの?禁止なの?」と、話がこじれる大元の理由
道の駅で車中泊はできるの?禁止なの?
車中泊でクルマ旅をしようとすれば、近頃はややもするとこの問題に出くわすわけだが(笑)、結論から云うと道の駅は、昔も今も車中泊を容認している。
にもかかわらず、禁止だどうだという話が無くならない本当の理由を最初に説明しよう。さすれば今後あなたが、この問題で悩む必要はなくなる。
残念なことに…
日本にはキャンピングカーのディーラーが作る団体はあっても、「車中泊協会」のような業界とユーザーを代表する組織が未だに存在しない。
そのため国も道の駅も旅行者も、意識するしないに関わらず、それぞれが好き勝手に「車中泊」を定義づけている。
それが論争を生む大元の原因になっているわけだが、車中泊の生い立ちを辿ってみれば、何が正しいのかは一目瞭然だ。
車中泊の生い立ち
車中泊はトラックによる長距離輸送から生まれた宿泊スタイル
道の駅がこの世に登場するのは1993年。
だが日本の大動脈である東名高速が開通したのは1968年、名神高速の開通はそれよりもまだ早い1963年のことだ。
そして名神高速道路の開通とほぼ同時期の1964年に、現存する日本最古のドライブインとされる「不二ドライブイン」が開業している。
この高速道路と休憩施設のインフラ整備が、日本の大型トラックによる長距離輸送を可能にしてきた。
長距離輸送時のドライバーには、トイレと食事を兼ねた休憩が必要だ。
しかしそれ以外にも積み出し元と受け入れ先の都合があり、途中にどこかで時間調整をすることが多い。
その際の場所に利用されてきたのが、サービスエリアとドライブインで、もちろん今はそこに道の駅も含まれる。
筆者が云いたいのは、ここからだ。
ドライバーにも「睡眠」は必要だった。
状況からして、当然寝場所は時間の自由が効くクルマだったわけだが、それは「仮眠」程度のものだったのだろうか?
普通「仮眠」は1~2時間程度の睡眠を指し、代表的なのが昼寝だ。
だが客観的に考えれば、「仮眠」で長距離運転するのは危険で、物理的にも難しい。
つまりトラックの運転手が休憩施設でとっている「睡眠」は、昔も今も「仮眠」ではなく「熟睡」だ。
もし国語のテストでそれを「仮眠」と答えたら、間違いなくバツになる。
では彼らのような「クルマの中で熟睡する宿泊スタイル」を、何と呼べばいいのか?
筆者には「車中泊」以外に、ジャストフィットする言葉が思いつかない。
車中泊の定義
生い立ちの歴史に基づく見解
ここまでの話を肯定するなら、車中泊の定義は次のようになる。
車中泊とは…
車内で弁当やパンなどの調理済みの食品を食べ、出発時間になるまで眠るなどして過ごすこと。
繰り返しになるが、それは「車中泊」がブームになる遥か以前から、長距離輸送トラックの運転手達が脈々とやってきたことで、既に市民権も得ている。
加えて彼らは
車外にイス・テーブルを広げて調理や食事を行う「キャンプ」
数日間にわたって、クルマを動かさずに留まる「長期滞在」
のようなことはしない。
つまりこの2 つは「車中泊」の範疇には含まれないといえるわけだ。
そしてそれは、そっくりそのままクルマ旅の旅行者にも当てはまる。
混乱の引き金
国土交通省が使った「仮眠」という言葉
実は「第2次車中泊ブーム」が起こるつい数年まで、「車中泊の定義」はこれでいったん落ち着いていた。
ところが近年になって、奇妙な告示が道の駅に登場し始めた。
その背景には国土交通省の見解がある。
<以下は国土交通省公式サイトの転用>
「道の駅」駐車場での車中泊は可能ですか?
「道の駅」は休憩施設であるため、駐車場など公共空間で宿泊目的の利用はご遠慮いただいています。
もちろん、「道の駅」は、ドライバーなど皆さんが交通事故防止のため24時間無料で利用できる休憩施設であるので、施設で仮眠していただくことはかまいません。
これでは、質問の答えになっていないように思うわけだが(笑)
実は、当初は「宿泊目的」が「車中泊」になっていた。
それを某Youtuberに指摘され、「車中泊」は「宿泊目的」に置き換えられた。
ちなみに「宿泊目的」とは、道の駅を宿として使うこと=道の駅のトイレや軒先で野宿することという意味になり、車中泊は含まれないらしい(笑)。
だが一般的には「宿泊目的」の意味が曖昧過ぎるため、これまた様々な解釈を生む要因になっている。
こんなバカバカしい言葉遊びなど、旅人にはどうでもいいのだが、
要するに、国土交通省は「キャンプ」と「長期滞在」が「宿泊目的(車中泊)」の範疇に入ると判断し、トラックの「車中泊」を「仮眠」に置き換えたわけだ。
トラックの既得権を守りながら、様々な看板を立ててもいっこうに収まらない旅行者の「キャンプ行為」と「長期滞在」を排除したい…
その思いには共感できるが、線の引きどころが間違っている。
前述したように「車中泊」「キャンプ」「長期滞在」の3つで分ければ、今のような混乱は起きていない。
だが国土交通省の役人は、「車中泊の定義」を、その歴史や市民権を顧みもせずに勝手な判断で変えてしまった。
その結果、
マスコミは「仮眠」の意味をよく理解せずに転用しまくり、道の駅の中には「車中泊禁止」の看板まで出すところが続出した。
さらにそれを真に受けたビギナーの車中泊旅行者が、SNSにそれを投稿し、誤ったまま拡散されていった。
これが一連の騒動の真相だ。
正しい応対
道の駅を「旅の宿」として活用する
残念ながら「声の大きさ」の差で、今や本来の車中泊は「仮眠」に置き換えられつつある。
だがブームが沈下すれば、再び定義はもとに戻ると断言する。
なぜなら道の駅が「道路利用者の休憩施設」であり続ける以上、表現がどうであろうと、夜間の大型輸送トラックの利用を排除することはできない。
ということは、同様の使い方をしているクルマ旅の旅行者も排除はできない。
夕方以降に到着し、外食するか車内で弁当などの調理済みの食品を食べて眠り、翌朝道の駅が開店する頃には出発する。
そういう意味で筆者は道の駅のことを「旅の宿」と呼んでいるのだが、この「ビジネスホテル的な使い方」を咎めることができる道の駅はないはずだ。
たとえ、デカデカと「車中泊禁止」の看板があったとして…(笑)。
もしケチをつけられたら、大きな声で「仮眠で~す」と答えてやればいい。
ただし間違っても、真に受けて夜は「仮眠」をしてはいけない。
それは真面目で気弱なドライバーを危険に導きかねない軽率な表現だ。
そう考えると、いかに国土交通省が何も考えずに「仮眠」という言葉を使ってしまったかがよく分かるだろう。
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