この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、現地取材を元に「車中泊ならではの旅」という観点から作成しています。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。
徳澤キャンプ場は、上高地の最深部にある寝心地抜群のテントサイト
まず、徳澤キャンプ場の寝心地の良さには訳がある。
かつてこの地は牧場だった。
明治18年に開拓された上高地牧場には、最盛期には400頭ほどの牛馬がいたというが、時代とともに牧場の維持が難しくなり、場所を移し広さを変えながら、昭和4年にこの徳沢の地に落ち着いた。
しかしその後も経営状況は芳しくなく、昭和9年に牧場は閉鎖。
跡地はキャンプ場に、番人小屋は登山者向けの休憩舎となった。
昭和25年に、休憩舎は「徳澤園」として本格的な山小屋の営業を始める。
そして昭和31年に前穂高岳を舞台にした山岳小説「氷壁」(井上靖)が発表されると、「徳澤園」は「氷壁の宿」として、全国の登山ファンに広くその名を知られる存在となった。
「徳澤園」は現在でも、蝶ヶ岳や穂高、槍ヶ岳を目指す登山者たちの憩いの場として活躍している。
徳澤園(徳澤キャンプ場) 公式サイト
さてここからは、その歴史ある徳沢キャンプを紹介していこう。
上高地バスターミナルから約6キロあるものの、道はほとんどアップダウンがないので、60リットルクラスのリュックを背負っても、寄り道をしなければ90分ほどで到着できる。
サイトは「ハルニレの高原」という表現がピッタリくる景観だ。
地面は草地で柔らかいが、年数が経過しているため、ここが牧場の跡地だというのは聞かなければ気づかない。
水はけもまずまずで、寝心地は評判通り上高地で一番いいと思う。
ただし照明は一切ないため、夜間はヘッドライトか懐中電灯が不可欠だ。
また混んでくると、四方を他人のテントに囲まれて、自分のテントがわからなくなるかもしれない(笑)。
モンベルやアライテントの人は、よく目立つ目印を用意していくほうがいいだろう。
キャンプ料金は大人700円・小人500円。
キャンプの予約は不要で、きれいな水場とトイレが使える。ここまでは小梨平キャンプ場と大差はないが、ゴミは全て持ち帰りで食材の販売もない。
代わりに徳沢園の「みちくさ食堂」で、定食やビールが注文できる。ここまで来ると、一番軽くて役立つキャンピングギアは「マネー」になる(笑)。
なお、お風呂は「徳沢園」ではなく、2016年春にリニューアル・オープンされた近くに建つ市営の「徳沢ロッヂ」を利用する。