この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の紹介です。

雪の大谷は、冬の寒さが厳しい年ほど感動も高くなる!
車中泊で行く「雪の大谷」徹底ガイド【目次】
「雪の大谷」とは
標高2450メートルの立山室堂平は世界有数の豪雪地帯で、積雪は平均で約7メートルに及ぶ。
室堂駅から徒歩約5分のところにある「雪の大谷」は吹きだまりにあたるため、とりわけ積雪が多く、その深さが20メートルを超える年もあるという。
その「雪の大谷」を通る立山有料道路の雪を除雪する際にできるのが、写真の雪の壁だ。約500メートルに渡って続く雪の壁の片側は、「立山・雪の大谷ウォーク」として毎年歩行者に開放されており、今ではアルペンルートの春の風物詩として、多くの観光客から親しまれている。
「雪の大谷ウォーク」は、例年4月の中旬から6月中旬の日程で開催される。
「雪の大谷」には、立山から室堂往復が◎
本来のアルペンルートは、富山県の立山から長野県の扇沢まで、7つの区間を6つの乗り物を利用して横断する大規模な山岳観光ルートだ。
道中には室堂平の他に、黒部ダムなどの見どころも多いのだが、この時期はどこもまだ雪や氷に閉ざされたまま… クロヨンもダム湖が凍てつき、名物の放水どころじゃない(笑)。
従って、「雪の大谷」へは立山駅からのアクセスをお勧めする。
ケーブルカーで弥陀ヶ原まで上がり、そこから高原バスで室堂に行くのが通常のアクセス方法で、所要時間は空いていれば片道1時間ほど。
だが、ゴールデンウィークは団体ツアーと重なるため、まず待ち時間が発生する。ゆえに朝早い便がお勧めだ。
ただし、チケット購入前には必ずチェックすべきことがある。
「雪の大谷」は、晴れでなければつまらない。
チケット購入前に、必ずチェックすべきなのは「現地の天候」だ。
立山駅の構内には、雪の大谷がある室堂平の様子を映し出したモニターがある。それとこれからの時間帯の天気予報をあわせ見て、晴天が期待できると判断できたらチケットを買うというわけだ。
ゴールデンウィーク頃の立山駅周辺は既に桜が散り、すっかり春の様相を見せているのだが、冨士山5合目とほぼ同じ標高にある室堂平は、まだ真冬のまま。
陽射しがなければ凍えるし、もし吹雪くようなことがあれば、駅からはまず一歩たりとも出られない。
そんな日に行くのは「団体ツアー様」にまかせよう(笑)。
「雪の大谷」の路面は、濡れているか凍っている。
前述の通り、晴れても風は冷たく、ダウンジャケットに耳あて、帽子、手袋、ネックウォーマーなどの持参は当たり前。さらに紫外線が強いので、女性は日焼けに対する備えも忘れずに用意しよう。
ただ、見ていると個人旅行者は「足元」まで気が回っていない人が多いようだ。
「雪の大谷」は晴れれば雪解け水が溜まり、冷えればそれが凍結してスケートリンクのようになる。
つまり、足元にはスノトレのような防寒された防水シューズが不可欠だ。
室堂の雪原を散策。
「雪の大谷」は、天気が良ければ30分ほどで満足に至る、というか所詮は舗装された一本道を行き来するだけなので「飽きる」というほうが近い(笑)。
むしろこの季節の室堂平の面白さは、駅の反対側に広がる雪原の中にある。
広大な雪原にポツンと建っているのは「みくりが池温泉」。
アルペンルートの再開と同時に営業を開始し、日帰り入浴も受け付けているので、温泉が好きならタオルの持参がお勧めだ。
硫黄の香りが漂う白濁のお湯は、無加水・無加温の完全なる源泉かけ流しで、スキーヤーや登山客の疲れた足腰を癒している。
また室堂平のハイマツ林には、国指定の特別天然記念物・ライチョウが棲んでいる。
この時期は繁殖のためにその姿を人目に晒すことが多く、運が良ければ写真のような純白の個体との遭遇にも恵まれる。
写真はみくりが池の近くで撮影したが、ライチョウの見つけ方は実に簡単。バードウォッチングの経験がなくても大丈夫だ。
ライチョウではなく、ライチョウを撮影している人間を探せばいい(笑)。
ほとんどは、三脚で大きな望遠レンズと高そうな一眼レフを構えており、ひと目でそれとわかる出で立ちだ。もしシャッターを切っていれば、そのレンズの先には100%ライチョウがいる。
ただし、撮影の邪魔にならないよう、静かに撮影者の後から観察しよう。
教えてもらったのだから、それくらいの配慮はあってもいい(笑)。
立山は車中泊旅行者に有利な場所
グリーンシーズンの立山には、観光客だけでなく雄山(おやま)や剱岳(つるぎだけ)を目指す、本気の登山客が数多くやってくる。
立山連峰の登山は日帰りではできないため、立山駅には数日間停めておけるだけのキャパを持つ、広い無料駐車場が数ヶ所用意されているのだが、それでも「雪の大谷」のピークにあたるゴールデンウィークは、観光客とスキー・スノーボード客が重なり、立山駅は朝8時には混雑が始まり、10時には駐車場が満車になる。
であれば、前夜のうちに到着して、無料の駐車場で寝るに限る。
アルペンルートや上高地の駐車場は、そんな車中泊客に慣れており、よほど悪いことをしない限り咎められることはない。
そのうえでベストなのは、冒頭で記したように、現地入り後に天候を確かめ、室堂まで行くかやめるかの意思決定をすることだ。数日間の余裕を持って出かければ、車中泊なら難しいことではない。
雪の大谷行きを取りやめた日は、街に出れば退屈しのぎは幾らでもできる。富山の春は蜃気楼やチューリップ祭りなど、楽しいコンテンツがいっぱいだ。
立山黒部アルペンルート 車中泊旅行ガイド
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