この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の紹介です。
白川郷「合掌ミュージアム」は、道の駅白川郷に併設された、おすすめの無料見学施設。
「合掌ミュージアム」は、道の駅・白川郷の敷地内に設けられた、無料の合掌造りの見学施設だ。
旧手塚家の合掌造り民家を屋内に移築し、大胆に解剖展示している。合掌造りの仕組みを詳細に解説している施設はここだけなので、合掌集落に行く前にぜひ立ち寄って見られることをお勧めしたい。
館内は吹き抜けで、2階建ての合掌づくりを取り巻くように通路が設けられ、リアルな人形が作業風景を演出している。
外から見るよりもかなりスケールが大きく、本格的であることに驚くはずだ。
一階は床まで抜いた半スケルトン状態での展示。
合掌造りに使用されている材料や道具類もきちんと展示されており、建築工程のよくわかる映像もあって、小学生の社会見学にも十分使えるレベルだと思う。
問題は入口部分。これではミュージアムなのか、売店なのかわからない…
そこで少し「合掌ミュージアム」の生い立ちを掘り下げてみた。
「合掌ミュージアム」が作られたのは1996年3月。県営中山間地域総合整備事業で事業費は約2億円余りだというが、白川郷が世界遺産に登録されたのが1995年12月なので、今で云う「世界遺産センター」的な役割を担う施設の建設が、その目的であったことは容易に察しがつく。
ただ意外だったのは、道の駅白川郷と同時オープンではなく、道の駅のほうが1年近く前に開業していたこと。
つまり「合掌ミュージアム」は後付けされたことになる。
改めて道の駅をよく見てみると、確かに両者には統一感がなく、むしろ違和感のほうが強い。
20年以上も前の話なので、当時と今では「道の駅に求められるもの」が違うのは致し方ない話だが、現時点で「合掌ミュージアム」が、休憩や土産物を買うために道の駅を訪れる大半の利用者の「ニーズに合致しない」のは明らかだろう。
そのうえ、白川郷には合掌造りの展示施設が重複して存在するため、荻町集落から離れたところにある「合掌ミュージアム」まで、わざわざ足を運んでくれる観光客が少ないことも理解できる。
車中泊旅行者にすれば、いつでも空いていて都合のいい話とはいえ(笑)、このままでは「宝の持ち腐れ」化は進むばかりで、合掌造りの家屋を提供した手塚家にも気の毒な話だ。
展示が素晴らしいだけに、それを移転するか、道の駅をリニューアルして売店を別に作るかなど、活性化に向けた取り組みに期待をしたい。