「クルマ旅専門家」・稲垣朝則が、10年以上かけてめぐってきた全国の温泉地を、「車中泊旅行者の目線」から再評価。車中泊事情や温泉情緒、さらに観光・グルメにいたる「各温泉地の魅力」を、主観を交えてご紹介します。
「鐘釣温泉」は「黒薙温泉」と双璧をなす、黒部峡谷の人気の秘湯。
鐘釣温泉【目次】
鐘釣温泉までのアクセス
「鐘釣温泉」は、混浴露天風呂がある「黒薙温泉」から黒部峡谷鉄道の駅間で約30分、出発駅の「宇奈月温泉駅」からだと約50分のところにある秘湯で、温泉ファンから双璧とも呼べる人気を博している。
「鐘釣温泉」駅から、河原露天風呂と岩風呂が湧く黒部川の河原までは、歩いておよそ15分。ただ「黒薙温泉」と違って、途中にこれといった見どころがあるわけではないので、道中の説明は割愛する。
目的地に近づくと、写真の河原に通じる石段が現れる。
黒部峡谷最古の温泉とされる「鐘釣温泉」の開湯は1819年(文政2年)。河原で猿が湯浴みをしている姿を見かけた村人が、最初に発見したと伝えられている。
現在の「鐘釣温泉」には、鐘釣温泉旅館と鐘釣美山荘の2軒の旅館があるが、「河原露天風呂」の温泉権を持っているのは鐘釣温泉旅館で、宿泊客以外には朝8時から夕方16時までの入場が許されている。
なお「河原露天風呂」は上から見るとこのようになっており、「岩風呂」もほとんど同じ場所にあるのが分かる。
鐘釣温泉の河原露天風呂
河原露天風呂は、浅くて温めの「湯溜まり」で、砂を掘ると細かい泡とともに、無色透明で匂いもほとんど感じない温泉が自然湧出してくる。
筆者が訪ねた日は、少し前に川が荒れたようで、ここの他には「湯溜まり」を見つけることができなかった。
野生のニホンザルやカモシカが見られる日もあると聞くが、休日の昼間は見物客も多く、特に女性は水着が欠かせないだろう。
鐘釣温泉の洞窟岩風呂
筆者が気に入ったのは、こちらの「岩風呂」。43℃と書かれていたが、温度はそこまではなく40~41℃のジャスト適温。
間口は狭いが、洞窟の中は奥行きがあって大人が3人でも入れる広さがある。
右端には目隠しのため、人工的に壁が立てられているようだ。
屈めば肩まで浸かれる程度の深さもあり、湯量も多く気持ちが良かった。
なお青みがかってよく澄んだお湯は、弱アルカリ性らしく、ツルっとした肌触りが感じられた。
入口にはちゃんと更衣室もある。
ただ鐘釣温泉旅館には他に浴場はないようなので、ここでは髪や身体を洗うのは難しい。そのため、見るだけに留める人も多いようだ。
野趣あふれる温泉でゆっくりと寛ぎたい人には、「黒薙温泉」をお勧めする。
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