車中泊旅行歴25年のクルマ旅専門家がまとめた、2023年10月現在の伊勢志摩にある的矢かきの佐藤養殖場直営店「的矢かきテラス」の食レポです。
シニア世代で大阪在住の「クルマ旅のプロ」がお届けする、車中泊グルメガイド
アウトドアを愛する「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、25年以上かけて味わってきた、全国各地のソウルフードの、素材・レシピ・老舗・行列店等を紹介しています。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。
~ここから本編が始まります。~
「的矢かきテラス」は、三重県の特産品「的矢かき」を生んだ養殖場が、現地でおもてなしする直営レストラン
的矢かきテラスの筆者の歴訪記録
※記録が残る2008年以降の取材日と訪問回数をご紹介。
2016.11.05
2023.10.14
※「的矢かきテラス(佐藤養殖場)」での現地調査は2023年10月が最新です。
的矢かきテラス(佐藤養殖場)
「的矢湾」のロケーション
「的矢湾(まとやわん)」は、志摩半島東岸にある東西10キロほどの細長い入江で、志摩市と鳥羽市に属している。
”溺れ谷”と呼ばれる「的矢湾」の入り組んだリアス式海岸は、陸上にあった谷がその地形を保ったまま水面下に没してできた地形で、波の穏やかな沿岸部では、昔からカキや真珠貝の養殖が盛んに行われてきた。
そんな「的矢湾」内陸部を跨ぐように架かる赤い橋が、「パールロード(三重県道128号鳥羽阿児線)」の「的矢湾大橋」。
「伊雑ノ浦(いぞうのうら)」と呼ばれるこの一帯は観光地になっており、「志摩スペイン村」をはじめとする、リゾートホテルやゴルフ場が多く建つ。
「的矢湾」は、天然に恵まれた”牡蠣の楽園”
「的矢湾」で、本格的な牡蠣養殖が始まったのは1928年(昭和3年)頃のこと。
ただ、もともとここには牡蠣の生育に適した環境が揃っていた。
まず「的矢湾」は、神宮林・鳥羽・五ヶ所から三本の川が流れ込むことで、山の養分が随時海中へと運び込まれるため、牡蠣が食べる植物プランクトンに恵まれている。
さらに温暖であることに加え、東向きという立地が功を奏して、海水が冷たくなりすぎず、牡蠣が冬眠をしなくてもいい絶妙な水温が保たれる。
日本には2年・3年がかりで牡蠣を育てる養殖地がある中で、「的矢湾」が”牡蠣養殖に最適な場所”であることを発見し、1年半という短期間で美味しい牡蠣を育てあげる「垂下式カキ養殖法」を編み出したのは、当時のプランクトンの研究者で真珠の研究のために的矢を訪れた、後の「佐藤養殖場」の創設者・佐藤忠勇氏だった。
短期間で大きく育った若い牡蠣は2〜3年かけて成長したものより、断然身が柔らかく、ふっくらしていて艶があるという。
だが、コトは簡単には進まなかった…
佐藤が「的矢湾」で牡蠣の養殖を始めた頃は、ちょうど欧米の文化を取り入れたホテルが、日本の各地に作られ始めた時期と符合する。
海外では既に牡蠣を生で食べていたため、そういうホテルのレストランからは、生牡蠣の提供が求められたが、当時の日本の牡蠣は食中毒のリスクが高く、提供は容易ではなかった。
理由は牡蠣の生態にある。
牡蠣は1時間に20リットル弱の海水を吸い込みながら、餌を取り入れて排泄するため、分かりやすく云えば”海水の濾過装置”の役割を果たしているが、海水にはさまざまな細菌が存在しており、常に牡蠣の体内にも細菌が居続ける。
しかも牡蠣は栄養価が高いために、体内で菌が増殖しやすく、食中毒のリスクを回避することができなかったのだ。
この難題解決の道を切り開いたのも、また佐藤忠勇だった。
「牡蠣が菌を持つのは海水に菌があるから。それなら、海水から菌を無くしてしまえばいい」という発想から、1953年(昭和28年)、佐藤は紫外線殺菌した海水で、20時間以上牡蠣を飼育して滅菌するという、画期的な浄化技術を世界で初めて完成させ、1955年(昭和30年)に特許を取得する (特許浄化法:特許1006834号)。
この独自の技術過程を経た「的矢湾」生まれの牡蠣は、「清浄的矢かき」と名付けられ、美味しいだけでなく、生で食べても安心できる牡蠣として、瞬く間にその名を全国に馳せていった。
しかも佐藤は、その浄化技術を企業秘密にせず、「的矢湾」で同じように牡蠣養殖をする人たちにも、快く教え歩いたという。
ちなみに佐藤忠勇は、あの漫画「美味しんぼ<5>青竹の香り」にも登場する。
かくして「的矢かき」は、2001年(平成13年)に真珠・松阪牛・伊勢えび・あわびという錚々たるメンバーとともに、三重ブランド第1号の認定を受けるに至った。
実は筆者は、その洗浄技術の特別番組をテレビで見たことがあり、2016年の11月に「山田養殖場」まで、牡蠣を買いに足を運んだことがある。
もちろん当時はまだ、「的矢かきテラス」がなかった時代だ。
的矢かきテラス
「的矢かきテラス」は、これまで「清浄的矢かき」の卸と小売りのみを行ってきた「佐藤養殖場」が、2022年1月に敷地の中にオープンした直営レストランで、2016年に撮影しているひとつ上の写真と比べると、違いがよく分かる。
もちろん最大のセールスポイントは、「佐藤養殖場」が自信をもって提供する「清浄的矢かき」の生をはじめ、的矢湾育ちの牡蠣が1年を通じて食べられることにある。
ただ筆者が訪ねたのは10月中旬だっため、まだ「清浄的矢かき」には時期が早く、代わりに「季節の生がき」という、卵を持たないよう特殊な技術で養殖された、「シングルシード・オイスター」を含む3種の料理をオーダーした。
「シングルシード」というのは、前述した「垂下式カキ養殖」の代表的な養殖法とは違い、牡蠣をカゴに入れて1個ずつバラバラに養殖する方法で、プランクトンがむらなく牡蠣に回るため、牡蠣の生育が安定し、肉厚な身に育つという。
お値段は3つ入りで990円。
そのままでもいいし、レモン汁かポン酢をつけて味わうのだが、牡蠣はまったく臭みがなくて瑞々しく、それでいてうま味がしっかり感じられる上品な仕上がりで、筆者はポン酢のほうが合うように感じた。
こちらは「蒸し牡蠣の2種の冷製ソース仕立て」で800円。
ひとつはフレッシュトマトと玉ねぎのマリネソースで、もうひとつにはクリームチーズと黒コショウがトッピングされている。
蒸すことで牡蠣にうま味を封じ込め、ソースとのコラボがしっかり楽しめる逸品で、クリームチーズと黒コショウが載ったボリューム満点の牡蠣は、意外性のある組み合わせでなかなか良かった。
最後は「牡蠣の燻製オリーブオイル漬け」で550円。
これは筆者も自宅でよく作るメニューだが、自分でやるとスモークの味わいが強くなりがちだが、さすがは加減が絶妙で「ほのか」という言い回しが当てはまる。これはちょっと真似のできない仕事だった。
なお、店の入口の手前には広い無料駐車場がある。
「的矢かきテラス」専用ではないと思うが、ここに駐めても問題はなさそうだ。
志摩市磯部町的矢889
☎0599-57-2612(受付は9時~17時)
10時~15時(LO/14時30分)
火曜定休
「的矢かきテラス」のアクセスマップ
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伊勢志摩 車中泊旅行ガイド
※記事はすべて外部リンクではなく、オリジナルの書き下ろしです。