車中泊旅行歴25年のクルマ旅専門家がまとめた、伊勢神宮の「おはらい町」と「おかげ横丁」の歴史と、その見どころと食べどころをご紹介。
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この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の紹介です。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。
~ここから本編が始まります。~
伊勢神宮参拝の楽しみは、「鳥居前町」のぶらり歩きとソウルフード。
伊勢神宮の筆者の歴訪記録
※記録が残る2008年以降の取材日と訪問回数をご紹介。
2010.01.24
2013.02.03
2014.09.27
2023.10.13
2012.12.10
※「伊勢神宮」での現地調査は2023年12月が最新です。
伊勢神宮の「おはらい町」と「おかげ横丁」
「おはらい町」の歴史と概要
皇大神宮こと、伊勢神宮の「内宮」に通じる鳥居前町一帯は、「おはらい町」と呼ばれているが、その由来は江戸時代に遡る。
俗に云う「おかげ参り」が大流行した江戸時代の「伊勢神宮」は、特に江戸の庶民の憧れの地だった。
「おかげ参り」は、1705年(宝永2年)に362万人、1771年(明和8年)には200万人、そして最大規模となる1830年(文政13年)には、実に427万人の参宮者があったという記録が残されている。
当時の日本の人口は2500~3000万人と云われており、船以外の交通機関のない時代に、日本人の10人に1人が伊勢まで足を運んだことになるのだから、驚くべき数字と云うほかあるまい。
その動員に一役買っていたのが、「御師(おし)」と呼ばれる下級神官だ。
「御師」は今でいう旅行代理店やツアーコンダクターのような存在で、各地を巡って伊勢参拝を勧誘し、参拝者にはその案内に加えて宿を提供し、「御祓い」まで行っていたという。
その「御祓い」をする館が立ち並んでいたことから、鳥居前町はいつしか「おはらい町」と呼ばれるようになった。
五十鈴川に沿って、「内宮宇治橋」から北へ800メートルほど続く「おはらい町通り」には、江戸から明治にかけての伊勢路の代表的な建築物が再現され、昔ながらの風情を残した、約100軒の土産物屋や飲食店が軒を連ねて、往時の「おかげ参り」の雰囲気を演出している。
しかもそれを損なわないよう、銀行や郵便局、コンビニ、さらにスターバックスコーヒーも、木造で意匠統一されている。
「おかげ横丁」は平成生まれ
そんな歴史を持つ「おはらい町」と、その中ほどに入口がある「おかげ横丁」は、実はまったくできた時期が異なることをご存知だろうか?
今では有名なグルメの店が集まっている「おかげ横丁は、1993年(平成5年)の第61回「神宮式年遷宮」の年に開業した、いわば”お伊勢参りのテーマパーク”みたいな存在だが、おそらく旅行者には「おはらい町」との境界が分からず、気づかないうちに足を踏み入れていると思う(笑)。
再生された「おかげ横丁」の建物は、屋根の両端が山形になった「瓦の切妻屋根」と、建物の妻面(端側)に入口を設け、それを正面とする「妻入り」の、伝統的な日本家屋の建築様式が基本になっている。
「伊勢神宮」の正殿は入口が軒先側にある「平入り」で、同じでは恐れ多いとの思いから、「妻入り」が普及したといわれているが、伊勢の代表的な建築様式を間近で見られることも、大人には「おかげ横丁」の着目点のひとつだろう。
なお、同じ建築様式は「おはらい町」でも見られるが、インスタ的見地に立つなら、このように遠近感のある写真が欲しいなら「おはらい町」で、
逆に建築様式にスポットを当てた写真が撮りたければ「おかげ横丁」で狙うといい。
さて。
「おかげ横丁」が作られた背景には、明治以降に「御師」制度が廃止され、観光バスや自動車での参拝客が増えたことによる、「おはらい町」の衰退があるのだが、その難局打開に大いなる貢献を果たしたのが、誰もが知る老舗の和菓子店「赤福」だ。
なお長くなるので、その詳しい内容は後述する「赤福」の別記事に掲載している。
「おはらい町」と「おかげ横丁」のお勧めソウルフード
前述したように、特に初めてここに来た旅行者には「おはらい町」と「おかげ横丁」の区別はつきにくく、実際にはひとつと考えて問題はない。
それより大事なことは、伊勢まで来た以上「伊勢のソウルフードのおいしい店」に足を運ぶことだと思う。
「伊勢にあるスイーツの美味しい店」と「伊勢のスイーツが美味しい店」は、似て非なるもの。ここが整理できていないガイドブックは少なくない。
ということで当サイトでは、ありきたりかもしれないが、後者を改めて紹介したい。
赤福
誰もが知る伊勢の名物「赤福(餅)」の、”作りたて”が食べられる「おはらい町通り」に面した「赤福本店」は、五十鈴川に架かる新橋のたもとにある。
下では「赤福餅」以外の季節限定メニューも紹介しているが、同時に「赤福」が老舗たる所以についても言及している。
伊勢うどん
太くてコシのない柔らかな麺と、出汁の効いた黒いたれ(つゆ)が特徴的な「伊勢うどん」は、伊勢市民のソウルフードで、一般的なうどんとは、”かけ離れた食感”を持っている(笑)。
筆者は「おかげ横丁」の「ふくすけ」でいただいたのだが、ここは席数が多いので待ち時間が少なくて済んだ。
それでもこの行列(笑)。
とはいえ「おはらい町」でも「おかげ横丁」でも、多くの店が用意しているので、食べ損なう心配はないだろう。
ただし、博多のように柔らかいうどんを好む地域の人には、受け入れられやすいと思うが、四国や近畿のように「うどんはコシが大事」と思っている土地柄の旅人には、ちょっと難しいかもしれない。
筆者もその中のひとり。
なので2度目は、わずかでも粘りが加わる「月見」を選んだ(笑)。
手こね寿司
漁師が船の上でとれた魚を捌き、手で混ぜあわせたことから「てこね寿司」と呼ばれるようになった、三重県を代表する郷土料理のひとつで、「農山漁村の郷土料理百選」にも選ばれている。
地元でよく穫れるカツオやマグロなどの赤身の刺身を、醤油などでつくったタレに漬け込み、飯切りにいれた酢飯の上に並べて、しそや海苔などの薬味を上にちらすのが一般的だ。
こちらも「伊勢うどん」と同じく、「おはらい町」でも「おかげ横丁」でも、多くの店が用意している。
筆者は取材で両方セットで定食にしている「おはらい町」の「奥野家」でいただいたが、評判通り「手こね寿司」は美味しかった(笑)。
他にも買い食いをするなら、中高年にはこのくらいでちょうどいいと思う。
豚捨
「豚捨」は伊勢市にある和牛の老舗で、「おかげ横丁」の奥まったところにあるため、ちょっと見つけにくいかもしれない。
比較的値頃に、「牛丼」や「牛鍋」が食べられる食事スペースは2階にある。
ただ手軽で人気なのは、テイクアウトできるコロッケ&ミンチカツだ。
コロッケ120円も和牛のいい香りがするが、筆者の推しは断然ミンチカツ300円。
硬すぎず柔らかすぎず、冷めても十分に美味しく思えた。いずれもソースなしで、そのまま食べられる。
ただし休日は、開店前からこの状況。うそやろ~!ということでリピートは断念。
伊勢神宮 車中泊参拝ガイド
※記事はすべて外部リンクではなく、オリジナルの書き下ろしです。