車中泊旅行歴25年のクルマ旅専門家がまとめた、2023年10月現在の伊勢志摩・車中泊旅行における、鳥羽の見どころと活かし方に関する情報です。
「正真正銘のプロ」がお届けする、リアル車中泊旅行ガイド
この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の紹介です。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。
~ここから本編が始まります。~
「鳥羽」は賢く利用すれば、伊勢志摩・車中泊旅行時の”ジョーカー”になる町。
鳥羽の筆者の歴訪記録
※記録が残る2008年以降の取材日と訪問回数をご紹介。
2010.06.11
2013.02.03
2021.03.13
2023.10.13
※「鳥羽」での現地調査は2023年10月が最新です。
鳥羽の見どころとクルマ旅での活かし方
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「鳥羽」のロケーションと歴史
♪波の谷間に 命の花が~♪
ちゃうちゃう、それは同じ鳥羽でも「鳥羽一郎」やがな(笑)。
確かにご当地出身で、父は漁師・母は海女という漁業一家に生まれ、本人もデビュー前には遠洋漁船の乗組員だったというだけに、県外からの旅行者が、「兄弟船」を鳥羽市内のカラオケスナックで唄えば、大いに盛り上がるかもしれない(笑)。
ただここでは「鳥羽」が、違う意味の”ジョーカー”になる話をしたい。
『ラッコやジュゴンといった、”絶滅危惧種の海洋動物”がいる水族館』で知られる「鳥羽」の町は、「伊勢神宮」と「二見浦」から近く、1泊2日で”お伊勢参り”をしたい人には、ちょうどいい”抱き合わせ”先になる。
「伊勢神宮」をどのくらい深く参拝するかで話は変わってくるが、「外宮先祭」のような、明らかに後付けされた慣習にとらわれず、まずは「内宮」近くの市営駐車場にクルマを駐めて、「おはらい町」の「赤福本店」でいっぷくした後、「正宮」で手を合わせたら、「二見浦」までクルマで移動し、「夫婦岩」を眺める…
そんな「ジュゴン」の如く、マイペースなスケジュールなら(笑)、午後から「鳥羽水族館」と周辺を見て周ることは可能だし、熱心な皇室ファンでもなければ、それで十分だとも思う。
観光旅行である以上、時間を有効活用して、現地で楽しめる様々なコンテンツに身を委ねるのは当然で、古い”しきたり”めいたものに、疑問を持つことなく振り舞わされるほうが、本来はどうかしている。
伊勢神宮にある”しきたり”の多くは、江戸時代に現代の”旅行代理店”にあたる「御師」たちが、伊勢神宮への集客を計って”でっちあげた”もので、「天照大神」への信仰との関連性は疑わしい。
また「式年遷宮」でさえ、伊勢神宮創建から約300年近く経たと推測される「持統天皇」の時代に編み出された、”天皇家世襲のための演出”である説が、近年では有力だ。
そういいつつ…
ここまで書く以上、その裏付けにもなる詳しい「伊勢神宮」の記事も用意してはあるので、興味がある人は後ほどどうぞ(笑)。
さて。
昭和の中頃まで、このあたりは「伊勢志摩」ではなく「伊勢鳥羽」だった。
「志摩」が「鳥羽」に取って代わった最大の理由は、近鉄が志摩半島を開発し、「賢島」まで延伸したことにある。
それまで”未開の地”だった「志摩半島」は、「合歓の郷」や「志摩スペイン村」に代表されるリゾートとして大々的にPRされ、今ではそれがすっかり定着している。
実のところ… 日本人は、未だに「慰安旅行」から脱却できないままでいる。
確かに、昔のような会社や学校といった「組織単位」ではなくなっているものの、現役世代の旅の動機が、「癒やし」や「ご褒美」であることに変わりはなく、家族や友人とであっても、「上げ膳据え膳」の”手ぶらでおまかせ”でなければ、結局のところ満足には至らない。
風光明媚で、海鮮にも恵まれた「志摩半島」は、まさにそのニーズに合う”新天地”だったと思うし、今でもそうなのだろう。
しかしさすがに「年金受給者」になれば、それに飽きるし、価値観も変わってくる。
ここで再び「鳥羽」に目を向けると…
「鳥羽」は昔から、”海の男”の町だった。
そうだ、やっぱり「鳥羽一郎」だ!
なるほど、ここで伏線回収か。まるでVIVANTみたいやな!(爆)
「鳥羽」は、鮑(あわび)や海藻などの魚介類を、神宮や都に納める「御食国(みけつくに)」として、奈良・平安時代から海と親しんできた歴史を持つ。
そんな海とともに生活する”海民(かいみん)”としての実力を、世に広く知らしめた男が、戦国時代に強力な水軍を率いて武功を挙げた「九鬼嘉隆」だ。
「九鬼嘉隆」は、鉄板で装甲した軍船を建造し、毛利水軍を「第二次木津川口の戦い」で破り、「織田信長」の水軍として近畿の制海権を手に入れる。
さらに戦国時代の末には、海を見渡す高台に「鳥羽城」を築城し、「鳥羽」は大坂から江戸、また桑名・熱田から江戸へと向かう交易船が、風待ちのために立ち寄る港町として大いに栄えた。
そして現在、その港の前に建っているのが「鳥羽水族館」になる。
「鳥羽」といえば、
やっぱり「水族館」でしょ!
さて。だからといって
江戸時代の「鳥羽」がそうであったように、「鳥羽水族館」も全国各地から多くの人に立ち寄ってもらえる場所にしたい!
と思って建てたかどうかまでは分からないが(笑)、結果として「鳥羽水族館」がそうなっているのは、単なる偶然というわけでもない気はする。
冒頭でも触れたが、「鳥羽水族館」は『”絶滅危惧種の海洋動物”がいる水族館』として、今ではオンリーワンの地位を築いているが、ここまでの軌跡にあるのは、自らの”武器”を研ぎ澄ますことで、戦国の世を生き抜いていくという、ブレることのない信念だ。
ゆえに筆者はそこに、先人「九鬼嘉隆」の影を感じる。
ちなみに「鳥羽水族館」での所要時間は、少なくても2時間は見ておくほうがいい。
なお、「鳥羽水族館」の近くには他にも見どころがある。
「鳥羽水族館」では、入場料とは別に駐車料金800円を徴収されるが、時間制ではなく1日1回につきなので、そのまま周辺の観光施設を歩いて周るほうが有効だ。
真珠のテーマパーク「ミキモト真珠島」
「鳥羽水族館」から約400メートル、徒歩5分ほどのところにある、「株式会社御木本真珠島」が経営する企業ミュージアム。
当時は相島(おじま)と呼ばれていた小島を、昭和の初期に欧米を視察し、民間外交の道を志した御木本幸吉が、「真珠ケ島」と名付けて1951年(昭和26年)に整備し、エリザベス女王をはじめ、数々の賓客や観光客を迎えてきた。
島内には、真珠の歴史と文化を紹介している「真珠博物館」、「真珠王」と呼ばれた御木本幸吉の生涯がわかる「御木本幸吉記念館」、そしてショップとレストランを備えた「パールプラザ」などの施設に加え、海女の実演が見学できる場所もある。
ミキモト真珠島 公式サイト
〒517-8511
三重県鳥羽市鳥羽1-7-1
☎0599-25-2028
おとな1,650円
9時~17時30分(季節によって変動)
毎年12月第2火曜日より3日間休業
なおこちらのサイトからは、300円の割引クーポンが得られる。
真珠に関しては、誤解を招きやすいので、少し解説を加えておこう。
まず「ミキモト真珠島」は、「英虞湾」内にある「神明浦」と並ぶ「養殖真珠」の発祥地で、”世界で初めて真珠の養殖に成功した島”と紹介されることが多いが、実際の養殖場があるのは、ずっと南の「英虞湾」で、この島は”研究施設”のような位置づけだったと思われる。
「ミキモト真珠」の創業者である「御木本幸吉」が成功したのは、アコヤ貝を使った真珠の養殖で、自然界で生まれた真珠ではないが、人工物でもない。
真珠は、貝が体内に入った異物を自身の貝殻成分で覆う特性から生まれるが、貝殻内面に美しい真珠層を持つアコヤ貝からは、装飾品用に適した真珠ができる。
それを意図的にさせるのが真珠の養殖で、ある意味では「人工孵化」に近いものと云えるかもしれない。
実は日本は、古くから天然真珠の産地として有名で、北海道や岩手県にある縄文時代の遺跡からは、糸を通したとみられる穴が空いた淡水真珠が出土しており、「魏志倭人伝」にも「邪馬台国」の「台与」が「曹魏」に、白珠(真珠)5000を送ったことが記されている。
また「記紀」や「万葉集」にも、天然真珠の記述が見られ、「万葉集」には真珠を詠み込んだ歌が56首も含まれているという。
お土産買うなら「鳥羽マルシェ」
「鳥羽水族館」から約750メートル・徒歩10分ほどの「鳥羽駅」前にある、農水産物直売所と郷土料理を提供するレストランを併設している商業施設。
最近の道の駅のような感じで、特産品ながら垢抜けた商品も多く、最後に土産物を買うなら、ここがいいかもしれない。
また隣接する「佐田浜第1駐車場」は、1時間まで無料(1時間を超えると2時間まで500円)なので、ここを最後にするならクルマで移動するほうが楽。
そのあたりは、「鳥羽水族館」のショーの時間と兼ね合わせて考えるといい。
前には無料の足湯もある。
鳥羽マルシェ 公式サイト
〒517-0011
三重県鳥羽市鳥羽1丁目2383-42
☎0599-21-1080
10時~18時
水曜定休
年末年始(12/31~1/3)は休館
「パールロード」って、行く価値あり?
「パールロード」は、鳥羽と志摩を結ぶ全長23.8キロの観光道路で、2006年までは有料だったが、現在は無料で通行することができる。
ただその詳細ついては、以下の記事に掲載しているので、ここでは結論だけを記しておこう。
無料とはいえ、パールロードを走るなら、この絶景が見られる「ともやま公園」まで足を伸ばさないと”もったいない”。
ただ「ともやま公園」は「パールロード」を降りた先にあり、そこまでの道中は車窓からほとんど海は見えず、ドライブコースとしては「いまひとつ」だ。
途中にはいくつか展望所もあるが、いずれも景色は平凡で、見どころと呼べるのは「的矢湾大橋」あたりだけになる。
ということで、
「パールロード」を走るのなら、中途半端にドライブするより、本腰を入れて志摩半島をめぐるほうがよく、その時は日帰りではなく、志摩半島で1泊して、翌日はマップに水色で示した国道167号を通るのがお勧めだ。
鳥羽の車中泊事情
残念ながら鳥羽の市街地近くには、お勧めできるような無料の車中泊スポットは見当たらない。
ただ有料でよければ、「鳥羽水族館」から約3キロ・10分ほど離れた「鳥羽シーサイドホテル」の敷地内に、RVパークが2022年10月にオープンしている。
ここは電源が使えるので、エアコンや電子レンジを搭載しているキャンピングカーにはいいと思うが、普通車の車中泊旅行者には設備が良すぎるかもしれない。
そこでお勧めしたいのが、鳥羽市街地から約10キロ・クルマで15分ほど離れた「二見浦」にある2つの無料駐車場だ。
ちなみに「鳥羽水族館」の見学後に車中泊をする場合は、鳥羽駅前にある「戸田家」が日帰り入浴を受け付けており、以下のサイトにあるクーポンを提示すれば、1500円が1000円に割引される。
また近くに「イオン鳥羽店」もあるので、買物にも不自由はない。
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関東在住者にとって、「伊勢湾フェリー」は伊勢志摩観光時の”ジョーカー”になり得るか?
最後は愛知県の「渥美半島」から伊勢湾を横断する、海上アクセスルートをご紹介。
「伊勢湾フェリー」は、「鳥羽港」から「伊良湖港」間の23.2キロを、約55分で結ぶローカルフェリーで、通常期は1日8往復、繁忙期には13往復が運航されている。
このフェリーをうまく利用すれば、伊勢志摩・車中泊クルマ旅の”幅が広がる”ことは確かだが、時間とコストに囚われると、それが見えなくなる。
静岡県の浜松以東から伊勢志摩を目指す人は、このマップだけ見れば、「乗らなきゃ損!」と思うかもしれない。
だが陸走する場合と時間・コストを細かく比較してみると、あながちそうではないことが見えてくる。
まず「鳥羽港フェリーターミナル」から、東名高速道路の「浜松西インター」までは約228キロ、途中休憩を挟めば3時間は必要だろう。
その間の高速料金は5770円で、ガソリン代を仮に165円/1リットルで、リッターあたりの燃費を10キロとすると3762円。合わせて9532円の交通費になる。
いっぽうフェリー料金は、普通車(6メートル未満)が、運転手の乗船代を含めて7600円、同乗者の運賃が1800円なので、合わせると9400円になり、カップルならほぼ同じ額になる。
それで3時間と55分なら、そりゃ「乗らなきゃ損!」になるわけだが、ここには「伊良湖フェリーターミナル」から「東名高速道路」の「浜松西インター」までの移動時間と交通費が含まれていない。
その間の移動には、国道で約80キロ・2時間近くかかり、ガソリン代は先ほどの条件で試算すると1320円、さらに有料道路代の270円を加算すると、実際には1600円ほど高くなる。
ただし、「伊勢湾フェリー」では「鳥羽水族館」等と連携した「割引キャンペーン」を実施しており、それを利用すれば差額をほとんどチャラにできる。
詳細とその他のキャンペーンについては、以下の記事で確認を。
そんなわけで、最後に「伊勢湾フェリー」を利用する際のメリットを整理しよう。
1.約150キロの運転負担がなくなる。
これはシニア世代にとっては大きなメリットだ。特に車高の高いキャンピングカーは、風の強い日の「伊勢湾岸道路」の走行は本当に辛い(笑)。
2.渥美半島の観光ができる。
関西の人間はもとより、関東在住の旅人でも、東名高速道路から遠く離れた「渥美半島」は、現在はクルマで「知多半島」に渡ることもできないため、ご覧の通りの「袋小路」になっており、なかなか出かける決心がつかない場所だと思う。
ただこのフェリーを使う前提に立てば、静岡県の「御前崎」から遠州灘沿いを走って伊良湖まで行き、伊勢湾を渡って鳥羽から伊勢志摩をめぐる、新たな車中泊クルマ旅のルートが開ける。
筆者は2度、伊良湖から鳥羽に渡っているが、たとえ1時間でも”船旅”が加わるだけで、旅は「あつみ」を増すものだ(笑)。
と”オチ”がついたところで、長い鳥羽の話もこれにて終了。
♪名も知らぬ 遠き島より 流れよる 椰子の実ひとつ♪
この誰もが口ずさんだことのある、島崎藤村作詞の「椰子の実」に描かれた「恋路ヶ浜」は、「伊勢神宮」とあわせて、日本人なら一度は旅してもいいルートだと思う。
伊勢神宮 車中泊参拝ガイド
※記事はすべて外部リンクではなく、オリジナルの書き下ろしです。