「クルマ旅専門家」・稲垣朝則が、10年以上かけてめぐってきた全国の温泉地を、「車中泊旅行者の目線」から再評価。車中泊事情や温泉情緒、さらに観光・グルメにいたる「各温泉地の魅力」を、主観を交えてご紹介します。

温泉町・修善寺の話ではなく、修善寺に湧く温泉の具体的な話が知りたい人へ。
修善寺温泉の概要と、共同温泉「筥湯」【目次】
「筥湯(はこゆ)」は修善寺にある、唯一の観光客に開放されている共同温泉
「温泉町・修善寺」と「修善寺の温泉」
「日本百名湯」に名を連ねる修善寺温泉は、伊豆半島でもっとも歴史の古い温泉で、温泉療法医が勧める温泉としても知られており、今でも湯治を目的に全国各地から宿泊客が訪れている。
ただ世の中の一般的な認識は、修善寺と云えば「修善寺温泉」のことを指し、「修善寺温泉」とは「温泉町」のことを意味しているようだ。
そのため、ネットに上がっている紹介サイトは中身がごちゃごちゃで、「独鈷の湯」の伝説と同じ空海つながりの修禅寺、そして宿と食事処が並ぶ温泉町の紹介に終始しているものが目立つ。
たしかに修禅寺と温泉町の紹介は大事だが、本来はそれと同じくらい「修善寺の温泉」に関する具体的な話も重要なはず…
行動範囲の広い車中泊の旅人の中には、マニアックな歴史を誇る「温泉町・修善寺」より、伊豆半島各地にある熱海や伊東、さらには河津・下田などの温泉地と、修善寺の温泉が具体的にどう違うのかを知りたいと思っている人は少なくない。
大したことのないお湯なら、修善寺は観光地として捉えればいいだけだけなのだ。
「独鈷の湯」伝説
修善寺温泉の発祥とされる「独鈷の湯」は、807年に空海が桂川で病の父の身体を清める少年の姿に感じ入り、独鈷杵(とっこしょ)で岩を突いて温泉を噴出させたという伝説の地だ。
1961年に修禅寺の裏山で平安期の密教法具が出土し、その中に長さ24cmほどの金銅独鈷杵が含まれていたことから、それが伝説の独鈷杵と噂され、修禅寺の「瑞宝蔵」に収蔵されている。
それもあって、大半のガイドはここで同じ空海が創建したとされる「修禅寺」に話が行ってしまうのだが、下の記事で書いたように、そもそも「空海」は伊豆には来ていない可能性が高い。
だが実は、「独鈷の湯」はこの先の話が重要で、現地の案内板にもそれが詳しく記されている。
大師はお湯を湧出させた時に、あわせて温泉療法を親子に教え、その後病気の父は湯治で元気を取り戻し、地域にその文化が根付いたという。
その後、北条早雲や豊臣秀吉の古文書にも温泉入浴のことが出てくるようだが、詳細まではわからない。
だが江戸時代中期になると、独鈷の湯、石湯、箱湯、稚児の湯などの共同温泉周囲の農家が、湯治客を相手に部屋貸しを始める。ただその頃はいわゆる木賃宿で、湯治客は自炊をしていた。
湯治客専用の内湯を持つ宿が誕生し、交通機関が整備され、多くの文人墨客が訪れるようになるのは明治になってからの話だ。
ちなみに修善寺温泉の泉質は、アルカリ性単純温泉で、柔らかくクセのない優しい肌あたりが特徴で、神経痛や筋肉痛、関節痛、うちみ、慢性消化器病、冷え性などに効能があると云われている。
現在の「独鈷の湯」は、桂川中州の岩盤上に設置された東屋の内側に湧いており、入浴は禁止だが無料で足湯が楽しめる。
なお温泉町・修善寺の見どころは、別途以下の記事にまとめている。
修禅寺にある、唯一の観光客に開放されている共同温泉が「筥湯」
前述した歴史から、修善寺温泉は無秩序な源泉の汲み上げによって、温泉水位下がって海水が混入したり、主要成分の含有量が少なくなったりしていた。
そこで1981年から源泉を集中管理に切り替えて、各施設に供給を行っている。
また「独鈷の湯」を含めて7ヶ所あった外湯(共同浴場)の利用は、地元住民のみに許されていたが、2002年に観光客も入浴可能な「筥湯」が装い新たに開業した。
旅館の日帰り入浴料金が1000円を超えるのが当たり前の修善寺で、おとな350円でシャワーまで備えた「筥湯」は、旅人がその湯治の湯を体感するにはありがたい。
「筥湯」は鎌倉2代将軍源頼家が入浴した「古代檜造り」の風呂を再現したもので、10人程度が入れる広さを持ち、浴室の天井は高く開放的だ。
お湯は、無色透明のアルカリ性単純泉で42度前後に調節されている。多少熱めとはいえ、pH8.7を誇る美肌の湯は、ツルツル感があって柔らかい。
筥湯(はこゆ)
☎0558-72-2501(伊豆市観光協会)
おとな350円
12時~21時・無休
内風呂のみ
シャンプー・ボディソープなし
アルカリ性単純泉
専用駐車場なし
お勧めの駐車場は、徒歩1分のところにある「月の庭」で、料金は1日400円。隣にも同じ料金の駐車場があるが、「月の庭」はアスファルトで舗装されている。
「筥湯」オンリーで利用すると高い気がするが、ここは修善寺温泉のほぼ中央に位置しているので、修禅寺などの観光をあわせて利用すれば利用価値は高い。
なお300円の割引が受けられるのは、500メートルほど離れた小山駐車場になる。
小山駐車場
最初の3時間まで300円、以降1時間100円、最大24時間500円
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